そのMIHO MUSEUMは、1997年に滋賀県甲賀市に開館した私設美術館。京都からJR石山駅に行き、そこからバスで50分と時間のかかる場所にあるため、知る人ぞ知る存在だ。ダイナミックな建築を設計したのは、ルーヴル美術館の中庭にあるガラスピラミッドでも知られる世界的建築家のI.M.ペイ。ガラスやスチールを使い、幾何学を見せるデザインに長けた建築家だ。
スチールの構造が印象的な美術館棟エントランス。奥に見える大きな松とのコントラストが素敵。 提供:MIHO MUSEUM
ショウにも使われたアプローチを通って美術館に入ると、幾何学模様のスカイライトや天井があちこちにあり、モダンな印象。ペイ建築の醍醐味を味わうことができる。実はこの美術館、広大な建物の80%が地下に埋められていて、外から見えるのは山の斜面から少し顔をのぞかせるガラス屋根のみ。まさに自然と同化した美術館となっているのだ。神秘的な森の奥深くへ、坂道やトンネルを通ってたどり着く経験は、まるで現世を忘れるよう。ペイがこの建築に、桃源郷への思いを込めたというのも頷ける。
美術館の約80%が地中に埋まっているというから驚き。 提供:MIHO MUSEUM
「和ガラスの美を求めて ― 瓶泥舎(びんでいしゃ)コレクション ―」展
型吹き色替草花文三段重 江戸時代(1711~81) 瓶泥舎びいどろ・ぎやまんガラス美術館蔵
現在開催中の展覧会は、江戸時代に始まる和ガラスに注目した「和ガラスの美を求めて ― 瓶泥舎(びんでいしゃ)コレクション ―」 。江戸時代の硝子細工である、びいどろ約180点が一同に会する貴重な機会だ。黄色や青、緑に赤。色とりどりの硝子は、どこか和のカラーリング。たゆたうように揺れるガラスの肌も、見ているだけで涼しい気分にさせてくれる。職人が息を吹き込んで作る丸みをおびたフォルムや、やすりで一本一本丁寧に削り出した切子の模様など、今のガラス製品にはない手作りのぬくもりや可愛らしさが感じられる。
この展覧会は6月18日まで。約1か月の休館を経て、8月からは雪村の展覧会が開催される。国内で、遠路はるばる旅をするのもまた一興。初夏や夏のお出かけに、いかが?
MIHO MUSEUM
住所:〒529-1814 滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
開館時間:10:00-17:00(入館は16:00まで)
休館日:月曜 *展示替休館や混雑状況などはウェブサイトをチェック
入館料:一般1,100円、高・大生800円、小・中生300円
アクセス:京都駅からJR琵琶湖線で石山駅へ。そこからMIHO MUSEUM行バスで50分。
ウェブサイト:http://miho.jp/japanese/