17 Nov 2019
何かを感じる「ブラック」なアート。全てが帰着する色を堪能できる作品3選

黒に注目しているのはファッションの世界だけではありません!私たちの周りにあふれるカルチャーの中の“小さな黒”をご紹介。
〝すべてを包み込む色〟
に魅せられて
「あらゆる色を混ぜると黒になる。すべてでもあり無でもあるその色に、多くの芸術家は魅せられてきました。魅力の一つは素材ごとに異なる表情を見せること。油彩に水彩、彫刻なら素材ごとに質感の差が楽しめる。また、黒には古来からさまざまな意味が込められてきました。死や悪魔などネガティブなものも。滅びを連想させるからこそ、私たちは黒のアートに抗いがたい何かを感じるのかもしれません」
アニッシュ・カプーア
[L’Origine du monde]2004
金沢21世紀美術館蔵 写真提供: 金沢21世紀美術館
インドの彫刻家アニッシュ・カプーアの金沢21世紀美術館常設展示作品。どこまでも続くブラックホールのようで、タイトルは大きく足を開いた裸の女性を描いたギュスターヴ・クールベの絵からとったもの。まさに“世界の起源”を表現している。
五木田智央
[Thelonious]2019
Acrylic gouache on canvas 194×162cm
©Tomoo Gokita / Courtesy of Taka Ishii Gallery
モノトーンのドローイングで注目を集めた五木田智央。何を描いていいか悩んでいたときに白と黒の絵の具で遊んでいたら偶然美しいグラデーションができたのがきっかけ。作品は顔が塗りつぶされていることも。その人物が誰なのか、想像をかきたてる。
塩田千春
[静けさのなかで]2002/2019
制作協力: Alcantara S.p.A. Courtesy: Kenji Taki Gallery, Nagoya / Tokyo
展示風景: 『塩田千春展: 魂がふるえる』森美術館(東京) 2019年
撮影: Sunhi Mang 画像提供: 森美術館
焦げたピアノと黒い椅子、それらを結ぶ黒い糸。塩田が子どもの頃、隣家が火事になり、焼け焦げた音の出ないピアノが焼ける前より美しく見えたのだという。作品名は本当に伝えたい気持ちには音がないのではないか、そんな気持ちからつけられた。黒は沈黙の色でもある、とも思わせる。
青野尚子
ライター。アート・建築関係の執筆を行う。展覧会と建築を見に旅をしている。10月はルーヴル美術館にダ・ヴィンチ展を見に行く予定。
Text: Ayana Takeuchi, Naoko Aono, Tomoko Ogawa, Naoko Sasaki, Mako Matsuoka, Momoka Oba, Emi suzuki
GINZA2019年11月号掲載