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『非常にはっきりとわからない』展の図録/『PARTNERS』 Magazine isn ’t dead Vol.13

『非常にはっきりとわからない』展の図録/『PARTNERS』 Magazine isn ’t dead Vol.13

独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア「Magazine isn’t dead. 」を主宰する高山かおりさん。世界中で見つけた雑誌やZINEから、毎月お気に入りの1冊をピックアップする連載の番外編として、今回は、高山さんの心に響いた『非常にはっきりとわからない』展の図録と雑誌『PARTNERS』を紹介。前回紹介したのは『金沢民景


突然ですが、美術館が好きです。

一歩踏み出すだけで広がる未知の世界。それはどんなときにでも、そして誰にだって等しくひらかれている。アートと聞くと、少し敷居が高いと感じる方もいるかもしれない。ちなみに、私もアートには詳しくない。でも、わからないからこそ愉しめることが本当にたくさんあると思う。

1年以上が経った今でも、そのとき受けた衝撃を鮮明に思い出せるほど心が揺れ動いた展示がある。2019年11月、千葉市美術館にて行われた、現代アートチーム・目[mé]による『非常にはっきりとわからない』展だ。話題になっていたので、観に行った方も多いだろう。

私は会場で目を疑った。というか、目の前の光景に呆然と立ち尽くしてしまったのだ。7階と8階の展示室がまったく同じようにつくり込まれていたからである。8階から展示を見て、案内に従いエレベーターで7階へ。そこに広がるのは、今さっき観たばかりの光景だった。これは現実なのか、フィクションなのか?確かに私たちは違う階に降り立ったはずだ。エレベーターは故障していたのか?もう訳がわからなかった。

何度か7階と8階を往復した。これは間違い探しなのか?真剣にこの目で観たつもりだったが、違う階にたどり着いた瞬間に自信が持てなくなる。私は一体何を観ていたのだろう。私の目には何が映っていて、それをどう捉えていたのか。観るとはどういうことなのか。目[mé]は私たちにそう問いかけているように思った。

私が目[mé]を知ったのは、2019年に発売された雑誌『PARTNERS』の2号目でのインタビューだ。記事の冒頭には、編集長の川島拓人さんが書いたこんな言葉があった。

「バラバラのものがひとつにまとまったのではない。ひとつのものがバラバラになっている。取材を終えた後、そんな不思議なことを思った。」(『PARTNERS』#2 本文より一部抜粋)

中心メンバー5名がそれぞれ、“メンタルミーティング”と呼ばれるチーム内のコミュニケーション法についてインタビューに答える。本文中で語られるチームで動くことの醍醐味は、チームビルディングに悩む社会人にこそ読んでほしいと思うほど。ここでは作品自体に深く言及していなかったため、私は彼らの活動に興味を持った。

それからしばらく経ったある日、川島さんから、目[mé]が初めて美術館で個展を開催することと、その展示図録の編集に携わることを聞いた。

 

目[mé]の名前の由来について「大切すぎて、当たり前すぎて、気づかないものというお題を出され、直感的に出てきたのが『目』だった」(『ART NEWS TOKYO』2019/12-2020/3 4pより一部抜粋)と中心メンバーの荒神明香さんは話す。図録には、「非常にはっきりとわからない」展だけでなく彼らの今までの活動の記録が収められ、そのすべてがこの由来に紐づいていることを私は知った。

彼らは相反する事象に私たちの目を向けさせる。たとえば、現実と虚像、内側と外側、個人と社会、進行と過去…といった具合に。「非常にはっきりと同じ状況をつくりあげることで逆に不確かさが増し、わからなくなるのだ。」(図録58p、大崎晴地による「原化石を見る目」より一部抜粋)と述べられるように、観れば観るほど不思議な“謎”を解きたい衝動に駆られる。ではその“謎”とは何なのか。私は、自分と対峙することで見えてくるものではないだろうかと感じた。もちろん、100人いれば100通りの解答があると思う。

そんな気づきをこの図録をひらく度に思い出す。一般的に、美術館での展示は常設展を除き数カ月しか会期がなく、終了すればその空間に身を置くことは二度とできない。でも、本という記録媒体は物体として傍に存在することで、当時の記憶や感情を思い出させる手助けをしてくれる。だからこそ私は、お守りのように本や雑誌を手元に残して何度でも見返していきたいと強く思うのである。

 

商品リンク
『PARTNERS』#2 http://magazineisntdead.com/?pid=143665876
「非常にはっきりとわからない」展図録 https://partners-magazine.com/store/713

 

この連載では、ginzamag.com読者の手作りZINEを募集しています。決まりがなく、自分を自由に表現できるのがZINEの魅力。オンラインストア「Magazine isn’t dead. 」の高山かおりさんに、自分のZINEを見てほしい!という読者のみなさま。ぜひGINZA編集部まで送ってくださいね。

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高山かおり Kaori Takayama

独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア、Magazine isn’t dead. 主宰。ライター、編集者としても活動している。生まれも育ちも北海道。セレクトショップ「aquagirl」で5年間販売員として勤務後都内書店へ転職し、6年間雑誌担当を務め独立。4歳からの雑誌好きで、国内外の雑誌やZINEなどのあらゆる紙ものをディグるのがライフワーク。「私も大好きな十和田市現代美術館で現在開催中(2021年8月2日まで)の『インター・プレイ』展に目[mé]の作品が出展されています。この状況が落ち着いたら足を運びたい!状況が徐々に好転するよう祈る日々です」

Text: Kaori Takayama

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