六本木 蔦屋書店内にあるギャラリースペース「BOOK GALLERY」では、8月29日(日)まで、佐藤雅晴 作品展「Hands—もうひとつの視点から」が開催されている。佐藤は、映像作品が国内外で高い評価を受けるなか、2019年3月9日に45歳の若さで亡くなったアーティストだ。
本展は、佐藤が生前に残した数ある作品の中から、「人が世界と関係を結ぶために用いる様々な『手』の行為を撮影しトレースしてアーカイブした」 《Hands》(2017年)を中心に構成されている。この映像作品は、猫をなでる手、入れ歯を洗う手、恋人にふれる手、ページをめくる手、おもちゃで遊ぶ子供の手など、33もの「手」のシーンを描いたものだ。実写の背景に重ねられるアニメーションの手は、触るしぐさのやさしさや、つながれた手の温かみといった、感情、触感、温度をむしろ浮き立たせる。
佐藤は、パソコンソフトのペンツールを用いて実写をトレースしたアニメーション作品に長年取り組んできた。《Hands》もまた、自らの「手」を駆使した膨大な枚数の作画をこなして作られた。佐藤曰く、トレースとは、対象を「自分の中に取り込む」行為だという。そこには、デジタルツールで描かれてもなお、手描きが持つエネルギーが漂っている。