25 May 2022
ミュウミュウが注目するクリエイター「メリエム・ベナーニ」 オリジナルの視点で現実と非現実をモンタージュ

モード界をリードするブランドが、いま注目するクリエイターとは?コレクションを発表する場や文化のサポート事業を通じてタッグを組む、覚えておきたい最先端の才能を紹介する。
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Meriem Bennani
アーティスト
オリジナルの視点で
現実と非現実をモンタージュ
ミュウミュウのミウッチャ・プラダがその才能を認めたのがブルックリンに拠点を置くモロッコ人アーティスト、メリエム・ベナーニだ。「現実への反応と反映」をテーマにした春夏コレクションでは、リアルとバーチャルが絶妙に交錯する演出を監督。ユニークな映像作品が話題を呼んだ。
「いわゆるランウェイショーの形式を、オンラインとオフの両方で遊んでみたいと考えたんです。制作からポストプロダクションまでチームで取り組むのは初めてで、刺激を受けましたし、みんなで作る楽しさを知りました」とベナーニ。
パリのイエナ宮を舞台にした会場には、中央を蛇行するランウェイを縦断するように双眼鏡型のスクリーンが数カ所設置された。映し出されたのはベナーニが制作した映画を思わせるビデオシリーズ。彼女の母が登場するオープニングや、写真家のイリエス・グリエブ、スタイリストのクレオパトラといったモロッコ人アーティストたちがランウェイを見つめる姿が、実際のショーの様子と同時にリアルタイムで組み込まれていく。バーチャルと現実の境界を曖昧にする実験的でユーモラスな映像が、最新コレクションとともにライヴストリーミングでも配信された。
「エモーショナルな反応に光を当てて、いろんな問題に対する理解を複雑化させるか、単純に面白いものにしてみせる。そうやって物語を語る方法論を広げていきたいです」
自身のスタイルについてそう話すように、ベナーニは独特の摩訶不思議なリアリズムで現代社会へ問いを投げ、時にはタブー視されるような題材に切り込んでいく。スマートフォンで撮影した映像やアニメーション、テレビのリアリティ番組の言葉など、日常を取り入れながら映像や没入型のインスタレーション作品に仕上げている。ステイホーム初期に作ったアニメーションシリーズ[2 Lizards]はインスタグラムで大ヒットとなり、その名は一般にまで広まった。
「メディアやフォーマットは変わらず自由であり続けたいです。対外的なプレッシャーに左右されることなく、純粋に仕事に没頭できたらいいなと思います」と夢を語るベナーニ。今後もユニークな作品を続々と発表してくれそうだ。
Profile

Meriem Bennani アンナ・パパラッチ
メリエム・ベナーニ>> 1988年モロッコ生まれ。ニューヨーク在住。MoMA PS1、上海ビエンナーレなどで作品を展示。
Instagram→ @meriembennani
Photo: Sunny Shokrae
Text&Edit: Aiko Ishii
GINZA2022年4月号掲載