24 Jan 2022
『ミステリと言う勿れ』2話。だから伊藤沙莉なのだ!風呂光が物語を大きく変えていく

『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ 月9)は、田村由美の同名人気マンガのドラマ化。女性警官・風呂光に伊藤沙莉がキャスティングされた理由が強く伝わってきた第2回を、ドラマを愛するライター・釣木文恵が振り返ります。第1回はこちら。
女優じゃなくて、天才女優
昨年の『M-1グランプリ』で準優勝を果たした漫才師・オズワルドの伊藤俊介は、妹について話すとき「女優じゃなくて、天才女優」と言う。それを聞くたび私は笑うより先に「そうだよね」と納得してしまう。伊藤沙莉という女優は、出演するポジションやジャンルに関わらず、常に強い印象を残す。
『ミステリと言う勿れ』の風呂光という女性警察官は、原作ではさほど目立つ存在ではない。1話で放送されたエピソードでこそスポットが当たるものの、その後は警察の中で奮闘している姿がチラチラと描かれるくらいだ。だから、ドラマのキャスティングが発表されたときは意外に思った。伊藤沙莉が風呂光だなんて、ずいぶんぜいたくだなと感じた。このキャスティングの理由が2話で腑に落ちた。
整の観察と風呂光の成長、2つの軸が交わる
整(菅田将暉)は、美術館に行こうとして、バスジャックに遭ってしまう。乗客に名前を聞くバスジャック犯に、整は逆に「あなたの名前と、バスジャックの目的を教えてください」と聞き返す。その後も整は犯人・犬童オトヤ(阿部亮平)に「ここで発生する全ての問題はあなたのせいで起こることです」「責任転嫁しないでください」と言い放つ。さらには「なんで人を殺しちゃいけないんだ、教えてくれよ」というオトヤに「人を殺しちゃいけないわけではないんです」「(オトヤの振る舞いは)劣等感の裏返しでしかない」と言い、逆上したオトヤに刺されかけてしまう。整を助けた熊田翔(永山瑛太)は、整が犯人をわざと挑発したのではないかと指摘する。
いっぽう、連続殺人事件の捜査に加わらせてもらえない風呂光は青砥(筒井道隆)に「なんで自分が現場に連れて行ってもらえないかわかるか」と言われ、独自で捜査をはじめる。地道な聞き込みの結果、被害者たちが同じ路線バスを使っていたという共通点と不審なバスの存在を発見。整がバスジャックを知らせるために残したメッセージの切れ端を見つける。
2話には、整がバスジャック犯とそして乗客たちそれぞれが抱える問題をあぶり出し、新たな視点を与えるという軸に加えてもうひとつ、風呂光という女性警官が自ら動くことで自分の居場所と存在意義を獲得するという軸があった。その2つが重なりあって、ラストの警察による犬童家突入へとつながる。自分の居場所を求め、そのために何をすればいいかを考え、自分が動くことで解決の糸口を掴む、ひとりの女性警官の成長は伊藤だったからこそ演じきれたのだろう。
整の語りをもっとじっくり堪能したい!
誰に対しても臆することなく自分の考えを述べることで相手に気づきを与える整。今回はかつていじめられていたという乗客・淡路(森永悠希)に「どうしていじめられてるほうが逃げなきゃいけないんでしょう」と語り、欧米ではいじめる側をカウンセリングするという話をする。また元カレに「バカみたいに毎日コツコツやって」と笑われた、と小さな工場の事務員であることに劣等感をもつリラ(ヒコロヒー)には、飛行機も食事も何もかも、コツコツやっている人が動かしていると伝える。
悩む人々に対して、彼らが思いもしなかった、希望や解決につながることをつらつらと語る整には、視聴者もつい納得させられてしまう。唯一惜しむらくは、整の長台詞に頻繁にBGMが重なってくること。せっかくの整の口調や表情をもっと堪能するために、無音でもいいシーンもたくさんある気がする。
警察は到着したが、犯人の真の目的である連続殺人犯のあぶり出しはまだできていない。整に興味をもっている様子の熊田がここにどう関わってくるのか、3話では整のどんな理論が展開されるのか。
脚本: 相沢友子
演出: 松山博昭、品田俊介、相沢秀幸
出演: 菅田将暉、伊藤沙莉、尾上松也、白石麻衣、鈴木浩介、筒井道隆 他
原作:『ミステリと言う勿れ』田村由美/小学館(『月刊フラワーズ』連載中)
主題歌: King Gnu『カメレオン』
Edit: Yukiko Arai