休刊後も熱く語られる機会の多い『オリーブ』。何に惹きつけられたのでしょう?みんなが好きだった『オリーブ』って?時代とともに変化した雑誌のスピリットを懐かしいページとともに振り返ってみましょう。
🎨CULTURE
映画監督/井口奈己が考える『オリーブ』精神 「自分の感覚に合った小さな情報を見つける幸せ。」
自分の感覚に合った
小さな情報を見つける幸せ。
井口奈己
映画監督
アメリカの商業映画が主流だった80年代前半から、ヨーロッパのミニシアター系映画を観に行くのがオシャレという時代になってきた頃、『緑の光線』が紹介されていた記事で、初めてエリック・ロメールを知ったんです。『オリーブ』によく出ていた『ミツバチのささやき』も、女友達と主演アナ・トレントを真似して、ピアスをあけたりしました(笑)。マンディアルグ、サガン、デュラスといった女性作家を知ったのも『オリーブ』。小さい記事まで読むところがいっぱいあって、ワクワクしたのを憶えています。『オリーブ』に載っているというだけで信頼感があったし、ちょっとだけ変わった人たちが純粋に好きなものを紹介している感じで、熱量が伝わって記憶に残っているというか。自分の感覚にフィットした、ある意味趣味が偏っている小さな映画の存在を知ることができたのは、『オリーブ』のおかげです。
86年12月18日号。映画の場面を再現する企画。「友達と真似しました」
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井口奈己
監督・脚本家。1967年東京生まれ。監督作品に2本の『犬猫』、『人のセックスを笑うな』、『ニシノユキヒコの恋と冒険』がある。
Photo: Jun Kato Text&Edit: Tomoko Ogawa