01 Sep 2020
ギンザ淑女のニッポン歳時記 台風がやってくる季節をあらわす「二百十日」

知っておきたい日本の言葉、季節のあれこれ。
今月の言葉
二百十日
日本は昔から台風の襲来に悩まされてきました。立春から数えて二百十日目にあたる頃(9月1日頃)は、台風がやってくる季節として農家から警戒されました。ちょうど稲の花が咲く時期と重なるので、収穫を台無しにしかねない厄日として恐れられたのです。同じ意味で「二百二十日」と言う場合もあります。天気図もアメダスもない時代には、人々は暦や毎年の経験で備えるしか方法がなかったのですよね。とはいえ現代でも、世界的な気候変動で予測のつかない気象災害におびえている私たちです。
今月の神様
月読
古事記によるとイザナギが禊をしている時に、右目からツクヨミが、左目からアマテラスが、鼻からスサノオが生まれました。ツクヨミは月を、アマテラスは太陽を、スサノオは海を司ります。日本書紀にこんな逸話があります。アマテラスに命じられてウケモチという食物の神の様子を見に来たツクヨミ。ウケモチが口から食べ物を出してもてなそうとしたのを見て「汚らわしい!」と言って斬り殺してしまいました。アマテラスはこの行いに激怒し、離れて暮らすことに。これが昼と夜の起源だそうです。
今月の文様小物
日月紋 丸皿
太陽と月を正円で表した、これ以上ないほどミニマルな伝統紋様の日月紋。「日光・月光菩薩」や「日月山水図屏風」など、太陽と月は美術工芸のモチーフとして頻繁に登場しました。大正・昭和のマルチな美術家であった北大路魯山人は日紋を金箔で、月紋を銀箔で大胆に配した漆椀「日月椀」を考案し、やがてスタンダードになりました。白漆に金銀で日月を表した皿はモダンアートのようでもあり、伝統紋様が普遍的であることを物語っています。
丸皿 日月 白漆 ¥3,500*夏季限定販売。売り切れ次第終了(山田平安堂)
今月の和菓子
懐中善哉
温かいぜんざい(おしるこ)は冬の風物?いえ、京都では暑い夏こそ、熱いぜんざいを食べてひと汗かくのが健康によいとされてきました。クーラーで身体が冷える現代ならなおのこと。もち米でできた煎餅の中に乾燥した餡を封じ込めた懐中善哉は、椀の中で割ってお湯を注いでいただきます。お月見の頃に、波うさぎや満月に露草を焼印で表した限定品をどうぞ。
懐中善哉〈十五夜〉5個入り ¥3,240*税込み*8月17日〜9月末まで販売(末富)
Photo: Yuji Ono (kaichyu zenzai), Hiromi Kurokawa (maruzara) Illustration: Hisae Maeda Text&Edit: Mari Matsubara
GINZA2019年9月号掲載