04 Feb 2020
ギンザ淑女のニッポン歳時記 2月は「猫の恋」に耳をすまして

知っておきたい日本の言葉、季節のあれこれ。
今月の言葉
猫の恋
冬の寒さが少し和らいでくる頃、さかりのついたノラ猫たちの、いつもとは違う狂おしいような鳴き声が近所に響きわたります。実は猫の交尾期は年に4回もあるそうですが、早春がもっとも盛んだとか。発情した猫たちのラブアフェアが始まる季節を表す言葉「猫の恋」、これはれっきとした俳句の季語なのです。
今月の神様
稲荷神
ある男が丸い餅を矢で射ると、餅が白鳥となり、飛んで行った先に稲穂が実っていました。ここに社を建て、稲=穀物の神を祀ったのが「伏見稲荷大社」で、全国の稲荷神の起源です。平安時代以降、その近隣にある真言宗の総本山・東寺の守り神だとも見なされ、その後全国に真言宗が布教される際に稲荷神も一緒に広まり、全国3万社とも言われるほどなじみ深い神様になりました。狐の尾が稲穂を思わせるからか、狐は稲荷神の使いと考えられ、好物の油揚げをお供えすると、願いごとを言づけてくれます。
今月の縁起物
鷽鳥
菅原道真は無実の罪を着せられて太宰府へ左遷され、学問の神、天神様として太宰府天満宮に祀られました。生まれた日と没した日が25日なので毎年1月25日を初天神といい、各地の天満宮や天神社で「鷽替え神事」が行われます。その日には「鷽」という実在の鳥の木彫りやお札が授与されます。亀戸天神社では前の年に求めた鷽鳥を納め、新しい鷽鳥に替えることで、前年の悪事や嘘をまことに替えてしまうという祭りです。「鷽」という字が「学」の旧字「學」と似ているので、道真と結びついたという説があります。木彫りの鷽鳥は開運のお守りとして人気で、それを目当てに参拝客が早朝から列をなします。
左 神職の手で彫られた鷽鳥 2号 H6.4cm ¥800*サイズは最大10号まであり
*1月24〜25日のみ授与(亀戸天神社)。デザインは各社・宮によって異なる
今月の和菓子
福ハ内
節分といえば豆まき。豆を入れた枡の形は昔から福の神への供物として神聖視され、枡が「増す・益す」に通じるので商売繁盛祈願にもつながっています。枡の対角線状に入った桟は計量器としての名残で、すりきりを計る目的と枡の角の補強効果がありました。ふっくらとしたお多福豆をかたどった桃山製の菓子を枡を模した杉箱に盛って、節分らしさ満載です。
福ハ内 8個入り ¥2,160*税込み
*2月3日まで販売(鶴屋𠮷信)
Photo: Chihiro Oshima Illustration: Hisae Maeda Text&Edit: Mari Matsubara
GINZA2019年2月号掲載