04 Feb 2023
懐かしくて新しい音と遊ぶ人 Ogawa&Tokoroさん「僕らのアナログ感覚」

気づけばカセットやレコードに自然と親しんでいた、平成生まれの2人。アナログメディアや古い音楽機材に惹かれる理由とは?
Ogawa & Tokoro | 僕らのアナログ感覚
私的な音の心地よさ
2020年、カクバリズム期待のニューカマーとして7インチシングル「Shinmaiko」を発表したデュオユニット、Ogawa & Tokoro。まだ20代前半の彼らが作る浮遊感あるダンスミュージックには、ヴィンテージな香りと新たなグルーヴが同居している。
「ヴィンテージ、大好きなんで」と公言するTokoroさん。彼らはデジタルネイティブ世代でありながら、結成当初に自主カセットレーベルOriental Tapesも立ち上げるなど、以前からアナログメディアに関心を寄せてきた。
「僕はCDはもう要らない。本当はレコードがベストだけど、買うのも作るのにもお金がかかる。でもカセットなら、自分たちに無理のない予算で面白いものができそうだなって」(Tokoro)
「最初のうちは、僕らのいたサークルのみんながCDで作品を出すというので、じゃあカセットのほうが違った雰囲気になるかな?くらいの軽い思いつきでした。でも録った音の“ガサつき”や、“プライベートな感じ”の音質がわかってきて、次第に好きになっていったんです」(Ogawa)
年代物の機材を発掘
作品をリリースするメディアだけでなく、彼らは音源制作にも80年代のシンセサイザーなどのヴィンテージ機材を使用する。パソコン上のプラグイン(音楽制作ソフト)でいくらでも音が加工できる時代に、彼らが持っているこだわりとはなんだろう。
「僕がかっこいいと思うミュージシャンはみんなヴィンテージ機材を使っていたから。音楽ソフトの『Ableton』とかを使えば今は何でもできるけど、それだけじゃ面白くない。アナログ機材だと本来つなぐべきじゃない場所にケーブルを入れたりとか、楽器を作った人が考えないような使い方ができる。決まった方法に縛られずに、いろんなアプローチができるんです」(Tokoro)
「以前、おもちゃのキーボードを集めてみんなで音楽を作っていたことがあって。僕の場合はそこも入り口になりました」(Ogawa)
「最近は、新しいプラグインで昔の音源のシミュレーションをしていたりもする。それってレコードで言えば、“リイシュー”みたいな感覚ですよね」(Tokoro)
アナログな音が見つかる場所

mouでDJした日。
旧譜から新譜まで、レコードやカセットを買い集めているという2人。ヴィンテージな音楽を、いったいどんなスポットで探し出しているのか。
「お酒が飲めるところでお店の人やDJと話しながら、『この音源がやばいよ』と直接教えてもらうのが好きですね。東京にいる時は、下北沢にあるバーmouによく遊びに行って、店主のMoriuraさんにいろいろ教えてもらっています。お店ではカセットでDJもできるし、レコードもたくさんある。アナログが好きな人がいっぱい集まってきている場所のような気がします」(Tokoro)
「中古機材を探しに県外のハードオフに行くこともありますが、僕にとっては、愛知県周辺のチェーン店、バナナレコードが一番大きいです。そのなかでも、僕らの師匠的な存在なのが、名駅店の店長さんや岐阜店の店長さん。昔のヘンテコな曲や、いつの時代かわからない音楽を、たくさん僕らに教えてくれるんです。やっぱり人から教えてもらったものは、自分の記憶への残り方が違うので、すごく大事な場所ですね」(Ogawa)
Ogawa & Tokoro オガワ・アンド・トコロ
愛知県名古屋を拠点とするTakashi OgawaとKynan Tokoroによる宅録ユニット。Instagram(Ogawa)、Instagram(Tokoro)
Photo: Wataru Kitao Text: Ryohei Matsunaga
GINZA2022年12月号掲載