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ディスカバーbyアートフェス 奥能登国際芸術祭2017 “さいはて”ゆえに濃度200%!!

ディスカバーbyアートフェス 奥能登国際芸術祭2017  “さいはて”ゆえに濃度200%!!

金沢から車で約2時間半。今回初開催となった奥能登国際芸術祭の舞台は、能登半島の北端に位置する石川県珠洲市。日本海における海上交易の要地だったこの場所には日本文化の要素が集積し、過疎化が進んで“さいはて”の地となった今もなおそれが色濃く残っています。

象徴的なのは、夏から秋にかけて、祭りが毎週、毎日のように行われていること。灯籠が載った縦長の山車を担いで回る「キリコ祭り」や、祭りの日に親戚や友人を御馳走でもてなす「ヨバレ」といった風習は今や特異なものに見えますが、日本人ならそのマインドは理解できるはず。

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キリコの大きいものは、16m(4階建てのビルくらいの高さ)、2トン、100人以上の担ぎ手を必要とするのだとか。

そうした地域の祭りに注目した総合ディレクターの北川フラム(越後妻有の「大地の芸術祭」を立ち上げ、瀬戸内国際芸術祭のディレクションでも知られる、日本における芸術祭の父といえる人物)が開催時期を秋に寄せた“さいはての芸術祭”もいよいよ10/22でフィナーレ。11の国と地域から39組のアーティストが参加した新しい祭りはどんなものになったのでしょうか。

 

日本代表アーティスト2人が扱ったのは「

古くから塩づくりが盛んで、揚げ浜式製塩なる江戸時代から続く製法が残る珠洲。今回の芸術祭にはヴェネチア・ビエンナーレ(アート界のオリンピック的な二年に一度の国際美術展覧会)日本館代表に選ばれた塩田千春(2015年)、岩崎貴宏(2017年)が参加していますが、その二人ともが塩に関係する作品を発表しています。

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塩田千春『時を運ぶ船』

生と死という人間の根源的な問題に向き合う塩田千春は、塩田(えんでん)が多くみられる外浦・大谷地区に、自分のルーツにつながるものを感じたとか。ある男性の戦時中の塩づくりにまつわるエピソードから、人の心と記憶をつなぐインスタレーションを展開しています。

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岩崎貴宏『小海の半島の旧家の大海』

見慣れた日用品を繊細な手つきで変形させ、別の意味を与える岩崎貴宏は、古い民家、その空き家に残されていたものや海岸に流れ着いた漂着物、そして大量の塩を使い、山水画のような風景をつくり出しました。ヴェネチアの作品もそうでしたが、鑑賞位置やスケールの設定によって物理的に、結果思考的にも鑑賞者の視点に働きかける、強度のある作品です。

 

口伝をもとにした物語がぎっしりな「資料館」

東京・吉祥寺のArt Center Ongoingから派生したアーティスト集団Ongoing Collectiveは、旧保育所の建物で「奥能登口伝資料館」を開館。気鋭の作家10人がそれぞれ珠洲に暮らす人々に聞いた話から、奥能登の姿をさまざまなかたちで浮かび上がらせた、密度の高い展示空間となっています。

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和田昌宏『さまよう魂、漂う風景』

たとえば和田昌宏は、原発誘致をめぐる市民同士の衝突や、自然のなかにつくられた近代的な人工物などにまつわる話に触発され、海からの漂流物と陸からの漂流物の出会いの物語を映像作品に。この地域の特異点を拾い上げながら日本の地方に共通する風景をサスペンスドラマのようなタッチで描き出していました。

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柴田祐輔『PANDAWA HOUSE SATELLITE』

また、柴田祐輔は、珠洲で漁業実習生として働くインドネシアの人々に出会い、彼らが暮らす部屋を再現。カタコトの日本語で苦労や夢を語る声が、煎餅布団に腰掛けて耳を傾けていると、徐々にリアルに迫ってきます。

 

旧駅舎や旧芝居小屋、ユニークな場所も舞台に

過疎化の進む地方でおこなわれる芸術祭で廃校や廃屋を展示場所として使うケースは珍しくないけれど、この芸術祭は残っているものの珍しさやその活かし方に特長があるといえます。その最たるものは、2005年に廃線となった「のと鉄道能登線」の旧駅舎や線路。

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トビアス・レーベルガー『Something Else is Possible』

世界的に活躍するドイツの作家、トビアス・レーベルガーは、のと鉄道の線路跡から、終着駅だった旧蛸島駅とその風景の先にある未来を望む作品を制作。線路が道路によって分断されているのが印象的です。

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ラックス・メディア・コレクティブ『うつしみ』 Photo: Nohagi Naka

インドのアーティストユニットRaqs Media Collectiveは、旧上戸駅の駅舎の上に「亡霊」を浮かび上がらせ、場所や物がもつ記憶など、非物質的なものの存在を問いかけます。

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石川直樹『混浴宇宙宝湯』

世界を旅する写真家、石川直樹は、芝居小屋、遊郭、温泉旅館などさまざまな用途で使用され、増改築を重ねてきた迷路のような木造建築「宝湯」全体を使って展示。石川が珠洲の各地で撮影した写真やこの地で入手したファウンドフォトなどさまざまなビジュアルが組み合わさり、奥能登の知られざる歴史が掘り起こされます。

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さわひらき『魚話』

「陸からの視点では珠洲はさいはてであるが、海から見ればまったく異なる」というさわひらきは、戦前に珠洲で暮らしたことのある祖父が、海の交通で一命を取りとめたという事実をもとに、海からの視点で珠洲を見たときの幻影を映像作品に。記憶の断片を地域へのリサーチを通じてひもとき、旧公民館の建物を大胆に使ったインスタレーションで見せています。

 

独特の食文化味わうならここ! 

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典座の「まつり御膳」

さてさて、奥能登といえば楽しみなのが食。先述の「ヨバレ」は、祭りの日に親戚などを家に招待し、御膳料理と酒でもてなす能登独特の習わしで、旅人にひらかれたものではないのですが、奥能登国際芸術祭を機に複数の店で「ヨバレ」をモチーフにしたメニュー「まつり御膳」を提供しています。なかでもおすすめは、古民家レストラン 珠洲織陶苑 典座 。庄屋だった大きな古民家の大広間で、輪島塗の赤御膳に盛りつけた祭り料理がいただけます(要予約)。

芸術祭関連では、食をテーマにした作品を発表しているEAT & ART TAROが《さいはての『キャバレー準備中』》をオープン。廃業した海辺のレストランを建築家の藤村龍至が改装した建物では、EAT & ART TAROによる料理やドリンクが味わえます。

地のものでいえば、禄剛崎温泉 漁師の宿 狼煙館 の「海藻しゃぶしゃぶ」も人気。珠洲では海藻をよく食べる習慣があり、夏はウミゾウメン、冬はカジメ…と一年を通して約30種類もの海藻を採って食べるのだとか。

Ongoing Collectiveを率いる小川希さんもお気に入りだというそば屋やぶ椿 は、手打ちそばもさることながら、春雨が入った餃子がおすすめ。また、飲んだ後でも行ける20〜26時営業のラウンジ シャルマン はごはんものも充実。こうしたちょっぴり変わったメニューや業態も、さいはてならではといえるかもしれません。

【奥能登国際芸術祭2017】
会期:9/3(日)~10/22(日)
会場:石川県珠洲市全域

Text: Sayuri Kobayashi

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