渋谷・UPLINKにて公開中。現代美術作家のドキュメンタリー映画『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』

渋谷・UPLINKにて公開中。現代美術作家のドキュメンタリー映画『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』

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現代美術作家・オラファー・エリアソンのドキュメンタリー映画「オラファー・エリアソン 視覚と知覚」が渋谷・UPLINKにて公開している。


オラファー・エリアソンと名前を聞いて「誰だっけ?」と思ったあなたは、おそらく人工的に作られた太陽「The weather project」という作品を見ればパッと思い出すはず。2003年にロンドン・Tate Modernで公開された作品は、彼の手で作られた人工的な太陽。芝生で夕焼けを感じるよりも強く一面が温かいオレンジ色に染まり、Tate Modern入り口に広がるスペースに自然と人々が寝っころがる光景が劇中でも公開されている。

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映画では、2008年に総制作費約17億円をかけ、ニューヨーク・イースト川につくった巨大な滝《The New York City Waterfalls》の制作過程を主軸に、2009年〜10年にかけ金沢21世紀美術館で行われた個展「オラファー・エリアソン – あなたが出会うとき」の出展作品制作過程、ベルリンにあるスタジオなど様々な場面でのオラファーを観ることができる。

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オラファー・エリアソンって?

1967年デンマーク生まれの現代美術家。いま国内で彼の作品を観るとしたら、11月5日まで開催中の「ヨコハマトリエンナーレ2017」へ足を運んでみてほしい。

先ほど例に挙げたように、2003年にロンドン・Tate Modernで展示した巨大な太陽「The weather project」で一躍注目を集めた。彼の作品は一貫して、光や霧、影などを操り、鑑賞者や周りの環境を巻き込むことで作品を完成させる。劇中でも「同じ展示に何回も足を運んだとしても、新しい出会い・気づきを感じてほしい」と語るように、あくまでも自分の作品の向こう側にいる鑑賞者・参加者を主役として考えている。

劇中で「人は昔から空間といえば、“入れ物”を想像する。でも僕は空間をニューヨークのような街に見立てる。そこには様々な物語が積み重なっているんだ」と語るように、《The New York City Waterfalls》では個々人の時間単位を持つニューヨークという都市で「滝」を測定値として捉えている。そうすることで、忙しない街で他者とその落下する時間をもとに空間を共有しあったり、都市の大小を感じとることができる。

作品を1つの測定値として、展示後は鑑賞者・参加者に考えや知覚を委ねてしまうのが彼の作品の特徴と言えるかもしれない。

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映画館で観るべきドキュメンタリー映画

ドキュメンタリー映画の魅力の一つには、普段観ることのできない作家の一面や制作過程が垣間見えることが挙げられると思う。「それなら、オラファーのことよく知らないし観なくてもいいか。DVD出るならそれでいいや。」と思いがちだが、さすがこの映画はオラファーの知覚体験が映画館という場所でも表現されている。

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いままでシリアスな雰囲気で彼を追っていたドキュメンタリー映画は、突如「白い画面」に移り変わる。ナレーションでオラファーがこの白い画面に対しての疑問を投げかける。「これはただの白い画面なのか、もしくは奥行きがある白い空間なのか」と。その問いに「?」を浮かばせている間にオラファーが白い画面に登場し、鑑賞者は途端に後者の回答であることに気がつく。

まるで4コマ漫画を読むような感覚で、ドキュメンタリー映画の間に度々登場してくるオラファー。登場するたびに、映画の鑑賞者へ「いま観ている”スクリーン”と言われているものは果たして何なのか?何を観ているのか?」というような問いを単純な仕掛けで語りかけてくる

例えば、黒い画用紙を持ったオラファーがカメラに画用紙を向けて、いままで白い空間だったものを真っ黒にしてしまう。急に真っ暗になった館内と「いままで観ていた白い空間はただの”照明”だったのかもしれない」という彼のナレーション。確かにスクリーンは「光源」にも成りえていたのかもと思っているうちに、次は黄色の画用紙に移り変わり館内が同色の光で包まれる。スクリーンが「光源」に成りえていた事実を自覚するようになり、人々は顔を見合わせたり会話したり館内が急にインタラクティブな空間になる。

子供から大人まで楽しめるこの茶目っ気は、多額を費やして制作した3D映画よりもよっぽど面白いと思わせてくれるのだった。

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劇中で語る「一部の知識層だけでなく大勢の人々に体感してほしいのです。都市や空間、街と自然のバランスを皆さんに考えてほしい。」に続いて、「鑑賞者に健全な批評の精神を持ちつつ、生きる時代とどう関わるかを考えてほしいと思っている。責任を伴う批評の精神を持ってほしい。」の一言が印象的だった。

ポスト・トゥルースによりフェイクな情報であれ、ネットの速度も加わり人々は感情的な選択をしてしまったり、そういう時代感にオラファー・エリアソンの作品は、人々にふと対人・対作品の時間と空間を感じさせるのかもしれない。ぜひ映画館で彼が作り出す知覚体験を感じてほしい。

映画「オラファー・エリアソン 視覚と知覚」

現代アートシーンの最重要人物が仕掛けた「時間と空間」「観客と映画」のアートエクスペリエンス。アップリンク(渋谷)シネマ・ジャック&ペティ(横浜)  ほかで公開中。

Copyright: Jacob Jørgensen, JJFilm, Denmark

Yoshiko Kurata

1991年生まれ。魚座。プロデューサー/コーディネーターとして百貨店・ファッションブランドと仕事をしているほか、雑誌「QUOTATION」などでライターとしても活動している。学生時代に夢中になったロンドンや東京のファッションから影響を受け、ファッション、カルチャー、フォトグラフィーなどを体系的に考えるのが好き。最近見に行った展示は、小林健太 / Wolfgang Tillmans / BALENCIAGA 展覧会。
http://yoshiko03.tumblr.com/

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