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常田大希のサンクチュアリVol.3 millennium paradeの仲間と映像の作り方

常田大希のサンクチュアリVol.3 millennium paradeの仲間と映像の作り方

2021年2月12日発売のGINZA3月号「いちばん気になる人」特集では、常田大希率いるmillennium paradeを大解剖!特別に過去のGINZA2020年8月号「映像クリエイターズ!」特集から、millennium paradeやKing Gnuを映像面から支えるクリエイティブレーベル「PERIMETRON」に迫った記事をご紹介。

コアな音楽と一体となり、自由な想像を愉しませてくれるmillennium paradeの映像は、どのように生まれてきたのか。PERIMETRONに属しながら、millennium paradeのメンバーでもある4人に話を聞いた。


millennium parade

左から、常田大希、森洸大、佐々木集、神戸雄平。

—milenniumparade(以下mp)として本格始動して1年ですね。

常田大希(以下常田) すげぇヴァージョンアップしてきましたね。着実に。

森洸大(以下森) 俺はいまだに「これから始まる」みたいな感覚があるっすね。始まってはいるんだけど、常に課題がある感じ。

佐々木集(以下佐々木) ずっと怒濤だよね。「Fly with me」を作って、MVもできて、ランキング1位でワーっ!!て喜ぶ気持ちもあり。軽くは飲んだけど、”宴”(メンバーが集まる盛大な飲み会)で大きな区切りもつけていないうちに、また次に向けて走り出してるし。

神戸雄平(以下神戸) 僕はずっと必死だったな。自分に「お前やれんのか」って問い続けてる感じ。無理だとは言いたくないし、仲間と一緒にやってきたいから、一生懸命やるしかない。

—mpの「百鬼夜行」「どんな人間も肯定する」といったコンセプトはいつからあったのでしょうか。

常田 (佐々木)集と渋谷あたりでよくイベントをやってた5年くらい前、いろいろ人で話してて。

佐々木 明け方にタクシー代をケチってぷらぷら歩きながらね。

常田 個性豊かな奴らを一堂に集めてライヴしたらまさに東京らしくていいんじゃないか、とかはその頃から。

—それがユニークな「仲間」たちを得て実現したのですね。

常田 ちょっとずつ仲間が増えていった感じですね。俺は人として信頼できたら、各セクションにブレーンとして配置するっていうことを重要視しています。

佐々木 メンバーはもともと独立してやっていた人と、組織にいたけど一緒に仕事して、この人の力が必要だと思って迎え入れた2パターンかな。

常田 各々がやりたいことは知りたいよね。各々が本当にしたいことを楽しんでするっていうのが最重要。

 そうやって自分以外のみんなのことを気にかけるあたりが、大希の素敵なところだよね。

神戸 信頼してくれてるから信頼してる、大希のことを。

常田 ハジぃな(笑)。

—意見が割れた時は?

神戸 殴り合いですよ。僕の意見は通らないことが多いですけど(笑)。まぁ話し合いはよくします。最近は「Fly with me」の最後、変な生き物の頭が割れるカットについて、僕は引きがいいと思ってたけど、集は寄りがいいと。

佐々木 だいぶ話したね。

神戸 どっちも作って考えた挙句、寄りにして、結果良かったと思います。集が積み上げてきた経験もあるから、むげに否定することはないですね。

—お互い知り尽くしているかもしれませんが、今につながる原体験は

 俺は「白日」のジャケットや「飛行艇」のMVのマスクも作ってますが、中学生の時は、紙粘土を自分の顔に当ててマスク作ってました。スリップノットかっけーって。

神戸 なんかうらやましいな、そういうエピソードあって。家に楽器があふれてて、自然に、みたいな。

常田 それ俺じゃん(笑)。

神戸 そういうのを言いたい。

常田 まぁ映像だと、19歳の時、最初に自分の曲のMVを撮った人と揉めて。相手は30~40代くらいの先輩で、映像のことをわからないやつが口を出すなってスタンスが腑に落ちなくて。それから人とやるのがめんどくさいってなって、自分でやりだしたんだよね。ヨーロッパ旅行中に撮った映像に音楽をつけてアップしたりとか。PERIMETRONのYouTubeチャンネルを作ったのはその辺。

—スタンリー・キューブリックの制作の姿勢を尊敬していると過去におっしゃっていましたが、全体を見たいという意識が強いのでしょうか。

常田 置かれてる環境が違ったらそうならなかったかもしれないけど、最初は信頼できる仲間がいなかったから。そこに集とかOSRINが協力してくれだしたりして、体制が変わってきましたね。

佐々木 俺はめちゃめちゃわがままな子どもだったな。やりたくないことはやりたくない。これにトライしてみようと思ったら、それまでやっていたことをすぐやめられる。その判断はすぐできてた。あと、中学2〜3年の頃、映画を年間400本とか観てたな。

—神戸さんはなぜ今のお仕事を?

神戸 特にこれといった原体験というのはなく、学生時代は教育学部で、優等生ぶってましたね。大学卒業後に広告制作の会社に就職したけど創造的なことをしていたわけではなく。自分にはできないと思って嫌いになる理由を探してた感じで。でもやっぱりクリエイティブに関わりたくて、テレビ番組の編集をしている会社に未経験で入って、フォトショップを覚えたり、映像のことを知ったりして、そこでOSRINと出会うんですけれど。3DCGはPERIMETRONに入った後、ソフトをインストールしてチュートリアルを見るところから、独学でした。

常田 神戸が3DCGやりだしたってことでKing Gnuの「Flash!!!」のMVに入れてみたんだけど、それから2年で3DCGのクォリティがエグいくらい高くなったよね。

神戸 ずっと挑戦してみたいと思ってたし、必死だったね。

—mpの1stシングル「Veil」のMVは3DCGで人型が登場しますよね。

神戸 僕はキャラを作るだけの予定だったのが、急遽3DCGもやることになって。大希がすごいテンション上がって「楽しみだなぁ」「ソワソワ」みたいなメッセージを連投してくるからかわいいなって思いましたね。1年前か、まだ手探り状態でした。

常田 どれも思い出深いけど、mpのMVで客観的に見て感動できるようになったのは「lost and found」かな。そういえばこのMVは2019年の東京公演の後12月6日に公開して、打ち上げ中に神戸っちは…。

神戸 帰ったね。ライヴは僕なりの達成感があったし、「lost and found」はすごい作品だと思ったけれど、みんながこれまでで一番いい作品になったって褒め称え合うなかで、その作品に1ミリも参加してないのがつらくて。

 酒を飲んでる場合じゃないって泣いてて。

神戸 洸大が優しく抱きしめてくれたね。別に無理に僕を使えってことじゃないし、作品にとって一番良い選択をしてるだけだと思うんだけど。

佐々木 あのときはVFX(現実にあるものと架空の映像を合成し、違和感のないように仕上げる効果)をどう使うべきかもわかってなくて、試行錯誤してて。ただ、「lost and found」が良かったのは、時期的に、チームワークがうまくいく流れになっていたんだよね。一緒にやってきて、お互いに任せられるようになって。撮影現場でも腑に落ちて、冷静でいられた。ほかだとその少し前に撮ったTempalayの「そなちね」あたりから。「そなちね」は俺がシナリオを考えて、OSRINが撮ることに集中してた。

常田 それまではけっこうなぁなぁだったもんね。

—mpのMVをはじめ、PERIMETRONによる作品はコンセプチュアルで、群衆や仮面といったモチーフがメタファーとして織り込まれていたりして、ポップとのバランスが絶妙に見えます。YouTubeのコメント欄などにファンの方々がさまざまな解釈を書き込んでいる状況もアートのあり方として豊かだなと。

佐々木 あれは見てて面白いよね。

神戸 鋭いこと書いてて、この人と話したいなって思うこともある。

佐々木 外してるのもあるけど。

神戸 それも込みで楽しいし、考えてもらう幅を持たせるのは好きなんで、こう見て、こう感じてってしなくてもと思う。僕がこっそり忍ばせているものもあったりします。

—「Fly with me」はポップさを増していながら現代の資本主義社会を風刺し、なおかつ見る者を鼓舞するエネルギーを持った作品で、しかも1300万円の制作費をかけたという大作ですが、ここまで作り上げたとなると、次は何を目指しますか?

常田 結構ロス感が強くて、もう終わっちゃおうかくらいの、やりきった感じはありますね。制作費は今回だけ特別ということにはしたくない。金でやりたいことができないとしたら、そこはなんとかしなきゃいけないので。

一同 頑張ってください(マネージャーをチラリ)。

常田 俺はコム・デ・ギャルソンの川久保玲さんをイメージして動いてて。やっぱり多少リスクを負ってでも、最高だと思うものを持っていくべきだと思う。あれほど気合の入った人はなかなかいないですよね。哲学からデザインしているから強い。表現者としてリスペクトしてます。mpは海外に向けてるっていうのが先行してるけど、そこは大した問題じゃない。ちゃんと良い作品を着実に作っていけば3年くらいで、とは思ってますけれど。

佐々木 まぁいけるでしょ。

—「Fly with me」で佐々木さんは(神戸さんとともに)ディレクターを、森さんはタイトルロゴなどのデザインを担当する一方で、2人ともラッパーとして出演し、ライヴでパフォーマンスもされてましたね。

常田 かっこよければ音楽を生業にしてなくてもステージに上がっていいと思ってるので。曲の意味的にも仲間でっていうのはあったし。でもすごい才能だよね。堂々としてて。

佐々木 大希から普通に「YOU上がっちゃいなよ」みたいな感じだったね。俺も俯瞰で見た時に、でかいやつが場を回してんのはおもしれぇなって納得したから、「最大限やります」と。

 King Gnuの「The hole」のMV撮影で、あのカフェの外でお茶してる時、大希に「洸大さ、英語の歌詞とメロディ渡したら歌えるっしょ」って言われて、「あぁ、できるね」って。いずれ自分たちのイベントとか特別な時に賑やかしで入るような感じかと思ってたら、次の作品だった(笑)。

常田 カラオケで練習したんだっけ。

佐々木 河川敷で大声出したりとか。

 エメぇ!

—mpを一言で表すとしたら?

常田 「サンクチュアリ」。King Gnuっていういわゆるバンドは、そこでしか生まれないのもあるけど、クリエイティブ的には制約もあって。最近録ったmpの曲(2021年公開予定)に理を呼んだら、ちょっと景色が抜けた感じがあったんですよ。そもそもこうやってクリエイティブ優先で作ってたよなって。King Gnuじゃんって言われるとかどうでもよくて、理の声が必要だったから呼んだ。それが音楽、アートに対する一番の愛情だと思う。しかもそれが自由な集合体で成り立ってくれればそれに越したことはない。

神戸 サンクチュアリかも。好きなことやらせてもらってますからね。佐々木この感じを保ったまま、ちゃんと算段はつけていきたいね。「目指せ、サンクチュアリ」かな。

 俺も気持ちとしては一緒なんだけど、自分なりの言葉で言うと「極楽」。

常田 ライヴで強引に入れてたよね。

 神戸っちが入れて。

神戸 そう、入れちゃえって。

佐々木 「極楽」は俺も好きだから。極楽キルズってバンドやってたし。

常田 「目指せ、極楽」で!

 

初の東阪ワンマンライヴ
「millennium parade Live 2019」

2019年12月5日、新木場STUDIOCOASTで、「millennium parade Live2019」の東京公演が行われた。millennium paradeのライヴは5月22日のローンチパーティ、12月3日の大阪公演に次ぐ3回目。「Fly with me」にはじまり15曲が披露され、ステージ上の9名が放つ音楽と3D映像がシンクロした迫力ある演出に約2500人の観客は狂喜乱舞。ラストには「極楽」の文字が浮かび上がり、続いて「お気をつけて、おパンクで。愛してるぜ兄弟」のメッセージが映し出された。ライヴ演出における映像について常田さんは「ただMVを映して歌ってもつまらない」、佐々木さんは「ライヴではデフォルメして、演者を観てもらいたい」と語り、さらなるヴァージョンアップを目指している。

 

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Photo: Taro Mizutani Hair: TAKAI Text&Edit: Sayuri Kobayashi

GINZA2020年8月号掲載

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