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PERIMETRON、飛躍の2021-22年【前編】
King Gnuやmillennium paradeを中心とするアーティストのMV、ヴィジュアルを手がけてきたクリエイター集団PERIMETRON。より活躍の場を広げ、飛躍し続ける彼らのこの一年にかけての濃密な作品群に触れてみよう。
King Gnu
曲とともにCGから実写まで幅広い表現を操る
「泡」MV 2021.3.5
服を着たまま浴槽でうなだれる男性。ぶくぶく泡を立てながら湯の中へと沈んだ先には深い海が広がる。潮流に身を任せて海底へと落ちていく途中で、元恋人もいたような気がしたが。主演は俳優・森山未來。失った愛の尊さに悶えて踊る姿は痛々しくもセクシー。終盤、念願の彼女と対峙するシーンでは陸上を軽やかに泳ぐ魚群や空を飛ぶクジラのCGが2人を囲む。絶対にありえない光景だと念を押されているようで、いっそう胸が締めつけられる。
「BOY」MV 2021.10.15
メンバーを子どもに当てはめた本作。井口理は黄仮面の少女たちにいじめられた帰り道に、ピンクの生物を拾う。お世話をしていると、勢喜遊、新井和輝、常田大希も加わって暮らすように。でも、不思議な生き物だけが瞬く間に成長していき…。「あのころはおもちゃや小さい生き物だとか、今よりも友達が多くて毎日が愉快で光っていました。大人になっても変わらずなんてことないけど、昔遊んだ仲間を思い出せる映像であってほしい」(OSRIN)
「逆夢」MV 2022.1.5
「2021年は色んな角度からこのバンドを見る機会があって、この4人の芯が洗練されて、ただ美しく思うことがあった。その姿は羨ましくも愛おしく自分が思うこの綺麗さをひたすらに、フィルムにおさめたいと作った」(OSRIN)。King Gnuにとって初の全編アナログで撮影。演奏シーンの合間に愛する者を火葬する人々の様子を差し込み、“夢と現実” “生と死”といった二律背反的な歌の世界を浮き彫りにした。
millennium parade
着々と仲間を増やし練り歩く百鬼夜行
「U」MV 2021.7.15
テーブルに置いたスマホに映し出される「U」の文字と少女の顔。画面へとフォーカスが当たるにつれて仮想空間「U」へと落ちていく。アニメ映画『竜とそばかすの姫』のメインテーマでもある本作は、物語を象徴するシーンで構成されている。新星の歌姫「ベル」の前に突然現れた竜の行方が気になって、頭から離れない。曲が終わると静寂とともに冒頭のシーンへと戻る。夢の余韻を残しながらもしっかりと現実へと引き返す。
「Bon Dance」MV 2021.8.15
狐の嫁入り、宝船、托鉢僧の行進、盆踊り…。常田大希が「大密」と表現するように、怪異や風習が目白押し。渋谷を舞台に繰り広げられる百鬼夜行。日本ならではの部隊に紛れて、ヒップホップダンサーの姿も。millennium paradeらしい混沌をフルCGで見事に表現。デビューアルバム『THE MILLENNIUM PARADE』の収録曲。耐え忍ぶ日が続くなかで、元通りの世の中に早く戻れることを祈って、リリースからおよそ半年後のお盆に公開。
『THE MILLENNIUM PARADE』millennium parade LIVE 2021
前回のライブから約10カ月、millennium parade4回目のライヴを、東京と大阪で開催。火野正平演じる琵琶法師の語りが流れる驚きのオープニング。ステージ中央には巨大で立体な鬼の頭が置かれ、そこへ映像が投影されるこれまでとは違う演出が繰り広げられた。PERIMETRONメンバーでもある、アジテーターの佐々木集と森洸大はより縦横無尽に駆け回り、「U」や井口理が歌う「FAMILIA」もセットリストに組み込まれ、新たな一面を切り拓いた。
Tempalay
Margtの拠点がNYにあった頃からクリエイションをともにする盟友
「あびばのんのん」MV 2021.08.11
山と同じくらいの大きさをしたでいだらぼっちが、人間の出す煙にむせてくしゃみをした衝撃で、体の奥底で千切れてしまう。分裂した彼は、そばを通りかかったおじいと屋台に襲いかかる。慌てたおじいから差し出されたスープによって、恨み辛みが浄化。種の枠を超えた2人の友情が芽生えた矢先にまた環境が壊されて…。Tempalayにとって初の全編アニメーション。作画はEテレ『シャキーン!』なども手がけた土屋萌児と水江未来が制作。
「GHOST WORLD」MV 2021.10.29
ゴム手袋が血で染まった男が戻った家では、母親がTVゲームに熱中していた。いい赤ちゃんを育てるために、昼夜を問わず画面に向かう彼女の身のまわりの世話を献身的に行う息子。その甲斐もあって“NICE MOTHER”の称号を得たのも束の間、“BAD MOTHER”に陥落。落ち込む母を救うため罪を犯した息子は逮捕される。“業”をテーマにした実写×CGのMV。OSRINがディレクションを手がけた。
「続・ゴーストツアー」ライヴ演出 2021.11.6、8〜9、29〜30
東名阪のZeppツアーにMargtと神戸雄平らが帯同。冒頭の挨拶で小原綾斗(Vo・Gt)、藤本夏樹(Dr)、AAAMYYY(Cho・Syn)に変わって、生存権を得た人口知能のロボットが登場。2曲目「人造インゲン」では、アンドロイドが思うがままに振る舞う映像とライティングを駆使して、中毒性に満ちたサウンドスケープへと誘った。2021年3月にアルバムを発売。5月のツアーと9月に迎えた初のシングルリリースを経ての集大成である。
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PERIMETRON
2013年YouTubeチャンネル開設、16年にプロデューサー佐々木集、映像作家OSRINが参加。デザイナーやグラフィックアーティストなど気鋭クリエイターを擁する、GINZAが気になり続けている万華鏡のような集団。
www.perimetron.jp