フランス発の現代アートギャラリー、「ペロタン」が六本木にオープンした。場所は森美術館や、小山登美夫ギャラリーなどが入っているcomplex665からも近く、WAKO WORKS OF ARTやオオタファインアーツが軒を連ねるピラミデビル。世界に名をとどろかすあの有力ギャラリーが、あのアートエリアにやってきたということは、アートファンとしてはちょっとうれしいニュースだ。
ペロタンがやってきた!
声に出して読みたくなる「ペロタン」という名を持つ創設者、エマニュエル・ペロタンは、1968年生まれの陽気なフランス人。プライベートの交友関係から17歳でキャリアをスタートしたという。21歳のときにはパリに最初のギャラリーを設立。資金の工面に苦労しながらも優れた勘をはたらかせ(現在最も高値で作品が売れるアーティストとされるダミアン・ハーストや、村上隆も彼らが若手のころに出会い、仕事をしている)、展覧会のオープニングパーティに音楽ライブを行うなど独自の手法をとったのが彼のすごいところ。
そうして当時パリでも社会的に認知されていなかった現代アートのステータスを高め、今やアート界でもっとも影響力のあるギャラリストの一人として知られるようになったペロタンが、パリ、香港、ニューヨーク、ソウルに続く、5か国目・17カ所目の開廊地として選んだのが、東京だった。
エンタメ界では、音楽アーティストの世界ツアーがアジアにおいては他国で行われ、日本はスキップされる「日本飛ばし」なる現象も起こっているが、アート界でもその向きはあった。今やアジアにおけるアートマーケットの中心地は香港で、極東・日本はガラパゴス化しているといわれる。しかし、2014年、原宿にカリフォルニア州サンタモニカ発のBLUM & POEがオープン、そして今回のペロタン。状況は少しずつ変わりつつあるようだ。
なぜ日本で?
「フランスもかつてはそうでしたが、日本で現代アートはそれほど広まっていない。でも東京のアートシーンは発展してきているように見えます。日本人のコレクターも増えている。皆のエネルギーを集結して、日本で現代アートの存在を広めていきたい」とはペロタンの発言。うん、心強い。その一方で、マーケットに可能性を見ていることだけが理由ではなさそうだ。
実はペロタンがはじめて参加したアートフェアは、1993年、横浜の国際コンテンポラリーアートフェア「NICAF」。フェアの中核人物であるスカイ・ザ・バスハウスの白石正美がペロタンの才能を見出し、無料で出展するように誘ったことがきっかけだった。そのフェアでまだ若かった村上隆がペロタンの展示ブースに寄ったことが、現在につながる大きな出会いだったという。
日本にそんなゆかりがあるペロタンは、日本の文化にも非常に魅力を感じている。「山本耀司や川久保玲、三宅一生といったファッションデザイナーの偉業もそうですが、何より、いいものを輸入してよりいいものに改良する力が素晴らしいですよね」。ちなみにペロタンは日本のパン屋・ポンパドウルのバゲットがお気に入りなのだとか。
ペロタンには日本の作家の扱いも増やしていく考えがあるという。そうした文化を血肉としたアーティストがペロタンに見出され、世界に羽ばたいていくこともありそうだ。
ギャラリーのオープニングを飾るのは、現代抽象画の巨匠で97歳のフランス人アーティスト、ピエール・スーラージュ。「黒」を追求した近年の作品を日本で初公開している。どこか禅のような空気を漂わせる作品をチョイスしたのは、ペロタンの粋な計らいかもしれない。以降はパオラ・ピヴィ、トイレットペーパー、エルナン・バスの個展を開催予定。新しい現代アート発信拠点に足を運んでみては。
ペロタン東京
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階
ピエール・スーラージュ展
2017年6月7日〜8月19日