BD新時代を象徴する実力派作家、『塩素の味』のバスティアン・ヴィヴェスがバレリーナを目指す少女の成長を描く『ポリーナ』。日本のバレエ漫画とはまったく異なるアプローチで描かれた本作を読んだとき、1冊完結の物語では到底味わえない、上質な映画を観たあとのような読後感にじわわわんとなったものだ。このフランス発のモノクロ漫画が『ポリーナ、私を踊る』として母国で映画化された。
監督を務めるのは、ドキュメンタリーや長編映画を手がけてきた女性監督ヴァレリー・ミュラー。そしてバレエダンサーでありコンテンポラリーダンスの振付家として知られるアンジュラン・プレルジョカージュの2人。映画は原作のストーリーラインをなぞりながらもオリジナルの要素を多く含むが、ポリーナという強い眼差しを持った女性が与える印象は変わらない。原作でも直接触れられることはなかった葛藤する彼女の内面は、生身のダンスとして表現されている。ポリーナを演じるのは、バレエカンパニー・マリインスキー劇場に所属するダンサーのアナスタシア・シェフツォワ。厳格な師のもと鍛えられた少女が、今生きる自分を体現する踊りをつかみ取るまでの、逞しく美しい旅の物語だ。
『ポリーナ、私を踊る』(16)
ロシア人の少女ポリーナは、両親の金銭問題に悩まされつつも、憧れのボリショイ・バレエ団のオーディションに合格。ところが、コンテンポラリーダンスと出会い運命が大きく変わり始める。ジュリエット・ビノシュが振付家役で登場。10/28公開。
映画『ポリーナ、私を踊る』公式サイト
©2016 Everybody on Deck – TF1 Droits Audiovisuels – UCG Images – France 2 Cinema © Carole Bethuel – Everybody on Deck
『ポリーナ』
バスティアン・ヴィヴェス著/原正人訳/ShoPro Books/¥1,800
6歳の頃に出会った恩師ボジンスキーとの交流、友人、恋人との関係を通して、バレエダンサーとして成長していく様を描く。
©2011 Casterman