江本祐介が東京の恋を描く『QUIET TOWN OF TOKYO Vol.6』――いつものコンビニで…

江本祐介が東京の恋を描く『QUIET TOWN OF TOKYO Vol.6』――いつものコンビニで…

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東京の街を舞台に、人が恋に落ちる瞬間をスクラップしたショートストーリー。


#6 DANCE TO YOU

定時に仕事が終わり、小田急線に乗り込むと自宅のある下北沢で降りてまっすぐ家に帰る。着ていた服を洗濯機に放り込み、パッとシャワーを浴び、Tシャツと短パンに着替えてテレビの電源をつけた。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、溜まった録画からゴッドタンを選び、再生した。

どうにか就職して決まったOL仕事も始めてもう6年経った。楽しい仕事ってわけじゃないけど同僚ともまあまあ仲良くやってるし悪くはない。休日には家事をしてダラダラ録り溜めたテレビを観たり、Netflixで海外ドラマを観たりしている。最近は同僚に猛烈におすすめされて見始めたテラスハウスに夢中だ。最初は人の色恋沙汰なんて見て何が面白いんだ?と思っていたが気付けば最新話が更新される火曜日が楽しみになっていた。

外に出る日もあるが大体は友達とカフェの新規開拓か雑誌で気になっている服屋や雑貨屋に行くぐらい。後は好きなバンドのライブにたまに行ったりした。音楽は10代の頃から好きで数少ないずっと続いてる趣味だったが同僚で同じような音楽を聴く人もいないし昔一緒にライブに通ってた友人らも仕事が忙しくなったり、結婚したりで最近は1人で行くようになった。ライブに行く度に買うバンドTシャツはさすがに会社に来て行くには少し恥ずかしいのでほとんど家着と化している。今日着てるのもこないだ行ったライブで買ったサニーデイ・サービスのTシャツだ。

19時に仕事が終わりしばらくはこうして家でダラダラ過ごし、23時を過ぎた辺りでいつも近くのコンビニに散歩がてらお酒とお菓子を買いに行くのが日課だった。

この日もいつも通り溜まった録画をざっと消化するとsuicaだけを持ってコンビニに向かった。深夜のコンビニに行くときはなるべく身軽なのがいい。家からすぐのコンビニにはほとんど毎日行っているので絶対店員にあだ名をつけられているに違いない。

店内に入るといつも通りビール2本とポテトチップスを手に取りレジに向かった。深夜にいつも見るおじさんの店員と最近入ったであろう男の子の店員2人。今日のレジは男の子の方だ。きっと見た感じ大学生ぐらいだろう。私がsuicaで、と伝えると操作が分からないのかぎこちない様子でレジを操作している姿が少し可愛かった。

無事会計も終わり店内から出るとちょっと前まで蒸し暑かったのも少し肌寒い。帰ってNetflixでも徘徊するかぁとコンビニを出て道路を渡ったところで突然

「お客さん!これ落としてました!」

さっきの店員が必死の表情で私のsuicaが入った定期入れを持ってこちらに向かって来た。コンビニの外で見る店員の制服はなんだかシュールだ。

「あ、私の。ありがとうございます」

「間に合ってよかったです。あの、全然関係ないんですけど、えーっとそのTシャツってサニーデイ・サービスのですよね?」

突然過ぎてびっくりしたが少し照れた様子の彼を見てすぐに我に返り、

「そうですよ。こないだライブ行って買いました。お兄さんも好き?」

「めっちゃ好きです!昔からファンで!こないだはceroの着てましたよね?……って急にすいません!店長に怒られるんで戻ります!」

ぺこりとこちらに頭を下げるとくるりと振り返り、走ってコンビニへ走る彼を見送った後、あのおじさん店長だったのかぁと思いひとりクスクス笑ってしまった。家までの短い道のりをサニーデイ・サービスの鼻歌で満たしながら私は家路を辿った。


Inspired song

江本祐介 Yusuke Emoto

1988年生まれ。作曲家。ENJOY MUSIC CLUBでトラックと歌とラップを担当。emotoyusuke.com

Text: Yusuke Emoto Illustration: Naoya Sanuki

2018年11月号掲載

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