22 Feb 2019
恋愛部長「大人の恋の歩き方」vol.15 不倫はなぜやめたほうがいいのか

不倫のニュース、相変わらず多いですね。終わった人も、継続中の人も。
私は、既婚者との恋愛は、基本、恋愛じゃない、と思ってます。いや、ものすごく恋愛っぽい。むしろ究極の恋愛のような気もする。だからみんなつい迷いこんじゃうんですが、やっぱり、原則として、誰かと共有している関係は、フェアな関係ではない。
だから、恋愛ではない、とあえて申し上げたい。
私の周りでも、不倫しちゃう子はいます。普通の恋愛相談だと思って聞いてたら、「彼には奥さんと子供がいるんですけどー」ってサラッと言われたり。それって、恋愛じゃないし、彼氏じゃないですから!と思わず突っ込み入れちゃいますね。
で、もちろん、仲が良い子だったら、全力で止めます。
何でかって、相手の奥さんやお子さんがかわいそうだから?慰謝料請求されちゃうかもしれないから?いやいや、そんな理由じゃないですよ。
そんなこと言ったら、すべての恋愛が弱肉強食。より愛された人の勝ちなんです。たまたまそれが、相手が結婚という契約を交わしていたから、法律上ちょっと強い立場なだけで、恋愛と言う観点で見れば、どっちが勝ってもおかしくない。それに、相手がかわいそうだからっていう理由で、恋の炎が消せるなら、誰だって苦労しませんよね。
あのね、私が不倫をやめたほうがいいよって言うのは、不倫っていうのが、実に抜けにくい沼だからで、しかも、女性が一方的に苦しむようにできているからなんです。
女って言うのは、恋をすると、それがすべてになってしまいがち。そして、好きであることが何にも増した正義になりがち。そして、一度愛して付き合い出した男の手を、自分から放すことっていうのは、女にとっては、至難の業なんです。
男は、違います。男にとって大事なのは、社会的地位や、名誉。仕事です。恋愛なんか、その下の下。人生を彩るスパイスみたいなもの。女にとって恋愛が時に人生そのものであるのに対して、ずいぶん軽いと思うんです。
女は、不倫だろうがなんだろうが、自分が好きになった男が自分に振り向いてくれて、好きだよって言ってくれたら、燃え上がってしまうし、人生かけて本気になってしまう。
そもそも、不倫の恋愛と言うのは、燃え上がりやすい要素がいっぱいです。分かりやすい敵(=結婚相手)がいますし、逆境だからその分燃えるし、さらに、不倫の場合は、恋愛の純粋に楽しい部分だけが切り取られています。
たとえば、これが普通の恋愛だったら、いずれは結婚するという話になるでしょうし、お互いの責任が、とか、家族がっていう話にもなります。楽しさには面倒な責任や義務が付きまとう。だからこそ、相手の人生を自分が背負っていけるのか、シビアな選択を迫られるし、そこまで本気ではないなら、どこかで別れるという道を選ばなければならない。逆に、本気であれば、結婚に向かって進んでいくわけだから、相手に対して、自分の気持ちを証明することもできるわけです。
これが不倫の場合はどうか。
どこまで行っても、不倫は不倫です。既婚者の側が離婚する以外、たどり着ける先なんかない。だからこそ、不倫は、ふわふわした夢のような、恋愛の楽しい部分だけでできている。先がないからこそ、今だけを楽しめる。お互いに相手に責任を取らなくていいから。
しかも、恋愛を本来阻害する要素である、生活という面も、覆い隠されます。
生活というめんどくさい部分は、家庭に置いてきている。そこは奥さんが整えている。
生活と言う基盤がきちんとしているからこそ、外に出て遊ぶ余裕があるのです。だからこそ、楽しく浮気の恋ができる。
女が不倫の沼にハマってしまうのは、この恋のための恋が、普通の恋よりも、純度が高くて楽しいから。生活などのわずらわしい部分がない分、男もやさしい。純粋に目の前の恋に生きている。それが、「この恋こそ、本物。彼の結婚生活は嘘。」と思い込んでしまう原因なのです。
男の方も、最初からだます気があって、体目当て、というようないかにも悪い態度をしていればいいのですが、大体が、本気で恋をしたくてしているのがまた、たちが悪い。変に恋愛相手に対して純粋なわけです。
外でふわふわとした現実離れした恋をしたい男と、その恋こそ真実の恋だと思いたい女がいっしょにいるから、不倫の沼はなかなか抜けづらくて、厄介なのです。
だけど、考えてみてほしい。そんな楽しいだけの恋のための恋、信じられるのでしょうか。
そもそも、相手の気持ちを、どこまで行っても、本気かどうか判別できない。なぜなら、家族である奥さんにまず重大な嘘をついていている時点で、そんな男の言う言葉には、信ぴょう性がない。信じる基準がまず狂っているから、どこまで行っても信じきれない。
もしも普通の恋愛であれば、家族や友人に紹介してくれて、結婚までの道のりをともに歩こうとしてくれたら、その態度を、行動を信じることができます。
でも、不倫男は、どうやってもそういう風に、相手を安心させることはできません。愛する人を、自分の恋愛を、信じることができない、という不安感は、思いのほか大きいものです。
そういう不安感、不安定感は、女の大事な部分をむしばんでいきます。
女はもともと、安定した立場で、愛され大事にされて、守られて初めて、心に余裕が生まれ、幸せに笑える生き物です。不安定な場所で、つねに疑心暗鬼に駆られていると、本来のその女性が持つ魅力はどんどんそがれて行ってしまいます。
しかも不倫を一度でもすると、不倫臭が付きます。
二番目の女でいいと自分で受け入れてしまった女の、くすんだイメージ。隠れて生きるしかないことに対する、敗北感。自己否定感。どんなに自分で「愛されているのは私だから、私が正義」と信じ込もうとしても、どこかで、「自分は一番には選ばれない女」と自分を卑下してしまう。
そういうネガティブなオーラが、身にまといつくのです。それが、不倫臭です。
私の友人の、不倫を続けている女性にも、そういうネガな空気はありました。
どこかで自分に自信が持てず、いつも既婚者に言い寄られて身を任せてしまう。そんな自分をまた自虐的に見て、「私は、普通の男性には選ばれないから・・」とか言い出してしまう。まさに、負のスパイラル。
しかも、一度でも不倫したことのある女性には、一般的な男性からは拒絶反応が案外あるものなんです。「不倫をしていた女なんて本命には選びづらいな・・」と言っている男性もいました。不倫臭は、実際、普通の男性を遠ざける原因にもなる。
だからね、不倫は、危険なんです。一度でも、ちょっとでも、踏み出さないように気をつけないといけない。
軽い気持ちで、「ちょっとだけ付き合ってみようかな」なんて手を出すと、思いがけないほど深みにはまるし、なかなかやめられないし、やめたあとは、後遺症としてネガティブな発想が身についてるし、不倫臭が残る。そして、何度も繰り返してしまう危険まである。
ちょっとの好奇心で踏み込むには、リスクが高すぎると思うんです。
私の知っている、不倫で身を持ち崩した例としては、20代で不倫を始めて、40過ぎまで同じ人と付き合い続けてしまった人。最後は男の家族にバレて、家族会議に呼ばれたらしいですが、さすがに20年も付き合い続けてしまうと、自分もそう簡単に引き下がることがで
きず、結構な泥沼になって別れたそうです(慰謝料も払ったんじゃないかな)。男のほうは、「子どもが成人したら離婚する」と言ってたそうですが、結局は愛人のほうが切られたというよくある結末です。
始めたころならいざ知らず、40過ぎてから別の恋など考えにくいでしょうし、まさに不倫の末、何もかもを失った例です。
女性には、恋愛できる年齢の賞味期限がある。20代から40代半ばくらいまででしょうか。その間を、何人の男性と付き合って、結婚する相手を決めるか、案外持ち時間は少ないのです。なのに、その大事な期間の一部を不倫に使ってしまうのは、あまりにもったいない!
相手の男にとっては、ただの一時の恋だとしても、こちらにとっては、人生を左右する(悪い意味での)運命の恋になってしまうのです。
不倫の恋は、男にとっては、単なる一時的な刺激でしかありません。
結局、男は自分の身の回りの面倒や子供の世話をしてくれる「おかあさん」みたいな存在が必要な生き物なんです。だから、そっちを面倒見てくれる奥さんは絶対に必要。だけど、この「おかあさん」は時に厳しく、自分を100%は甘やかしてくれないので、外でやさしくふわふわした恋を楽しみたくもなる。そんな時に向かうのが不倫相手です。奥さんがいるからこそ、不倫の彼女がかわいく見える。素敵に見える。夢のような恋に見える。
だけどそれはあくまでも、家を整えてくれる、送り出してくれる家族がいるからこそ。不倫男がかっこよく見えるのは、奥さんが身ぎれいにしてあげているから。奥さんや子供のいる家庭がしっかりあるという安心感が、男に余裕と自信を与えているから、だったりする。
どうしても素敵な男がいて、恋をして、不倫に突っ走りなくなったら、こう考えてみればいいのです。
「この男が素敵なのは、この男が単体で素敵なんではなくて、奥さんや子供がいるからなんだ」って。自分が好きなのは、奥さん込みのその男なんだって。
そして、もしも家庭が崩壊するとわかったら、その男も、恋どころではなくなる可能性が高いのだと。目の前で恋を語る男は、ただ一瞬の夢の世界を生きているだけなのです。
それでも、どうしても、その男がいいですか?何とかして手に入れたいですか?
本当は、誰か他人のものだからこそ、価値があるように思えているだけなんじゃないですか?もしかして、生活の面倒も全部見て、だらしなくてめんどくさい男の素顔を見たら、あっという間に冷める恋だったりするんじゃないですか?
不倫の恋に踏み出すのは、案外簡単です。なぜなら、一時的なものと分かっているから。ただの恋愛のための恋だから。
本当に難しいのは、結婚を目指す真剣恋愛です。そっちのほうが、お互いにハードルは高いもの。だって、最終的に相手の人生を背負って行けるかどうかが、つねに問われているんですから。お互いに、相手に対して、誠実で真剣でないと続きません。ただかわいいだけ、かっこいいだけでは続かない。人間性も重要なファクターになってくる。
真剣恋愛で選ばれるということは、自分のことを誰よりも大切に思い、生涯を共にしようと覚悟を決めてくれる貴重なパートナーを得るという意味でもあるのです。
楽な恋の道に安易に足を踏み入れないで。難しい恋の道に行きましょう。その先には、責任と義務の重さのある、だけど、背負い甲斐のある人生が、待っているのです。忘れないでくださいね。
不倫は、恋愛ではない。かりそめのものなのだってこと。
そして、女の人生にとって、害悪でしかないんだってことを。
恋愛部長 れんあいぶちょう
20代に恋愛で失敗を繰り返したことから、様々な独自の恋愛理論を編み出し、2008年から恋愛ブログ「恋はいばら道」をスタート。過去の失敗談を披露したり、多くの人の恋愛相談に乗ったりしている。私生活では、38歳で留学を機に当時結婚を考えていた彼氏と別れ、40歳で知り合った現在の夫と結婚、出産。現在は、広告代理店で働くかたわら、1男1女を子育て中。著書に、『28歳からの必勝ルール~恋愛部長の恋のムチ』『にっちもさっちもいかない恋がうまくいく本』(大和出版)。
HP: http://renaibucho.com
NOTE(恋愛相談): https://note.mu/renaibucho
カシワイ
装画や挿絵などのイラストレーションや漫画を描く。リイド社より単行本『107号室通信』を刊行。
HP: sankakukeixyz.wixsite.com/kfkx
instagram: @kfkx_
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Text: Renaibucho Cover Illustration: KASHIWAI