樹を見上げ、描き続ける画家、日高理恵子。静岡のヴァンジ彫刻庭園美術館で開催中の個展「日高理恵子 空と樹と」

樹を見上げ、描き続ける画家、日高理恵子。静岡のヴァンジ彫刻庭園美術館で開催中の個展「日高理恵子 空と樹と」

秋が近づいてきた今日この頃、気持ちの良い季節を満喫したい。緑あふれる通りや公園を散歩したり、ピクニックで芝生にごろんとしたり、木陰のテラスで読書したり。そんなとき、大きな樹を見上げることも多いはず。木漏れ日に包まれる感覚は至福の時だ。

そんな光景を絵にしているのがアーティスト・日高理恵子。彼女の絵には、大きな麻の紙に、樹の幹や枝葉、花芽が画面いっぱいに描かれている。モノクロなのは、陽を浴びて逆光となり、黒黒とした樹の姿を思い出させる。大学の卒業制作で描いてから30年以上にわたり、樹の絵画を描き続けている日高。その絵画がぞんぶんに楽しめる展覧会が、静岡にあるヴァンジ彫刻庭園美術館で開催されている。

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《空との距離XIII(ドローイング)》2017年 © Rieko Hidaka Courtesy of Tomio Koyama Gallery

展示は、樹を真下から見上げる視点で描かれる「空との距離」シリーズの最新作で構成。何層にも重なった樹々の枝葉を丁寧に描いたレイヤーが、樹と空の間に広がる距離や奥行を感じさせる。そして、近年彼女が関心を寄せているのが、絵の内と外に生まれる空間。本展では、大きな画面をいかして、絵とその周りに生まれる空間に鑑賞者自身が包み込まれるような体験ができるのも、みどころのひとつ。

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「日高理恵子 空と樹と」展 展示風景 Photo:Kenji Takahashi

実はこの絵画には、日本画材が用いられている。野外で行われる入念な観察とデッサンをもとに、岩絵具を何層も重ねて麻の紙に定着させる描き方が、モノクロームの画面に繊細で豊かな色調を生んでいる。伝統にとらわれない大胆さの一方で、日本画の素材がもつ繊細さが漂うところも魅力だと思う。

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《空との距離XⅣ(ドローイング)》2017年 © Rieko Hidaka Courtesy of Tomio Koyama Gallery

樹越しに空を見上げたときの体の感覚を、絵として表現する日高。実際の絵を前にすると、樹の枝葉が画面からはみ出して、どんどん広がるように感じるから不思議。それは、はるか昔から絵画表現が追い求める、絵の中に広がる空間という大命題を、絵の外へと押し広げる清々しい一歩なのかもしれない。

本展は11月30日まで開催中。秋の行楽シーズンに合わせて、静岡まで小旅行はいかが?

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日高理恵子「空と樹と」展 展示風景 Photo:Kenji Takahashi

日高理恵子(ひだか・りえこ)

1958年東京都生まれ。1985年、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻修了。現在、東京を拠点に制作活動を行う。主な個展に、国立国際美術館(大阪、1998 年)、アートカイトミュージアム(デットモルト、ドイツ、2003 年)など。主なグループ展に、「CHIKAKU ‒Time and Memory in Japan」(クンストハウス・グラーツ、オーストリア、他巡回、2005-06 年)、「開館10 周年記念展『庭をめぐれば』」(ヴァンジ彫刻庭園美術館、静岡、2012 年)など。

 

 

「日高理恵子 空と樹と」
会場:ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)
開館時間: 9–10月 10:00–17:00 / 11月 10:00–16:30(入館は閉館の30分前まで)
休館日:水曜日
入館料:10月まで:大人1,200円/高・大学生800円/中学生以下無料
11月から:大人1,000円/高・大学生500円/中学生以下無料
URL:https://www.clematis-no-oka.co.jp/vangi-museum/exhibitions/832/
同時開催:「開館15 周年記念展「生命の樹」を同時開催中
アクセス:詳細はこちらから

柴原聡子

建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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