大人になる前に 知っておきたい 日本の言葉、 季節のあれこれ。
ギンザ淑女のニッポン教養 4月は「蛙の目借りどき」
今月のことば
春の暖かな陽気にあたると瞼も重く、昼間なのにウトウトしてしまうことってありますよね。そんな季節を表すことばに「蛙の目借りどき」があります。カエルが人の目を借りていってしまうからなのだとか。田んぼや川でオタマジャクシが一斉に孵り、ゲコゲコと単調な大合唱が聞こえると段々眠くなってくる。半開きのカエルの目も眠気を誘います。
佐保姫 さほひめ
今月の神様
中国の陰陽五行説では四季を方角になぞらえ、春は東の方角にあたると考えられました。奈良時代、平城京の東にあった佐保山は桜の名所で、満開の桜にたなびく霞の景色を眺めて、人々は春の訪れを感じたのでしょう。佐保山にはきっと女神が住んでいる、佐保姫こそ春の象徴と考えられたのです。春霞が身にまとう衣を想像させたことから、佐保姫は機織りと染色の名手であるとも言われました。ちなみに秋の女神は竜田姫、西の方角・竜田山に住んでいると考えられています。春には、佐保姫という名前の和菓子を見かけることもあります。
花衣 はなごろも
今月の和菓子
昭和22年から粋な花街・赤坂に構える、東京で屈指の和菓子店「塩野」を代表する上生菓子。花びらの切れ込みを表す抜き型で抜いたういろう製のピンク色の皮に黄身餡を置き、折りたたんで包んでいます。花衣とは花見に行く時の装いを指す場合もありますが、この菓子では、桜の花が折り重なるようにしてたくさん咲いている様子を表現したそうです。
花衣 ¥370*4月20日頃まで販売(塩野)
文香 ふみこう
今月のたしなみ文具
平安時代、男女が恋文を交わすとき巻き紙に香を焚きしめました。紙に残る香りに、遠く離れた手紙の主を想ったのです。手紙を書くことも少ない現代だからこそ、一筆に「文香」を添えれば、心の安寧までも送り届ける効果あり。さまざまなモチーフをかたどった和紙の中に白檀、丁子、桂皮、竜脳などの天然香料が調合され封じ込められています。
文乃香*さくら、うさぎ、ふくろう、めで鯛、花桜 各5個入り ¥900
(嵩山堂はし本)
Photo: Chihiro Oshima Illustration: Hisae Maeda Text&Edit: Mari Matsubara