大人になる前に知っておきたい日本の言葉、季節のあれこれ。
ギンザ淑女のニッポン教養 誰かにさらっと言ってみたい「秋の日は釣瓶落とし」
まだ夕方だと思っていたのに、外に出てみればいつの間にかとっぷりと日が暮れて、辺りが闇に包まれていた—そんな経験、ありますよね。秋が深まるとなんだか急に日が短くなったように感じます。そんな状況を「秋の日は釣瓶落とし」と表現してきました。水を汲み上げるために縄の先につけた桶(釣瓶)が、滑車につるされてするすると井戸の底へと落ちていく様子が、あっという間に夕方から夜になってしまう秋の暮れの速さを表しています。
恵比寿えびす
今月の神様
手に釣竿を持った恵比寿神は、もともと民間信仰における漁業の神様でした。古事記ではイザナギとイザナミの間に生まれた最初の子「ヒルコ」と同一視され、また日本書紀に登場する漁をする神コトシロヌシとも結びついています。ヒルのような異形ゆえに海に流されたヒルコは、兵庫県の西宮神社で祀られ、宿場町としてたくさんの市が立つこの地で、いつしか商売繁盛の神様になりました。恵比寿を祀る「えびす講」が全国で盛んとなり、関東では主に10月20日に「二十日えびす」が行われますが、一番有名なのは西宮神社で毎年1月10日に行う「十日えびす」でしょう。
ふきよせ
今月の和菓子
秋風に吹き寄せられて一カ所に集まった落ち葉や木の実の情景を表した「ふきよせ」。生砂糖や和三盆、有平糖(飴)などの干菓子が、色づく木々の葉や、散り松葉などを的確に捉えて表現しています。盆や皿に盛る時は整列させずに、あたかも自然の風情で、さまざまな落ち葉や秋の実りが折り重なったかのようにして盛るのが基本です。
生砂糖製の紅葉・銀杏〔葉〕・松葉 各8個 ¥380、和三盆の銀杏〔実〕6個 ¥350、落雁製松笠 6個 ¥350、有平糖の照葉 3個 ¥400、干錦玉の松茸 6個 ¥350(以上甘春堂)
花名刺はなめいし
今月のたしなみ文具
舞妓さんや芸妓さんがお客様に配る「花名刺」。今ではシールタイプが多くなってしまいましたが、和紙に季節の柄やはんなりとした色のぼかしを手刷りする方がまだいらっしゃいます。自分の名前の版を作ってもらい、好きな絵柄を選んでオリジナルを作ることもできるのです。日本の古典デザインの妙には惚れ惚れします。これからもずっと残ってほしいカワイイ小物です。
花名刺*10枚×5柄 ¥5,000〜。名前や住所の版を作る場合、片面 ¥1,800。刷り代 ¥1,300〜。使用する色数や柄によって価格は変わる。(幾岡屋工房政)
Photo: Chihiro Oshima Illustration: Hisae Maeda Text&Edit: Mari Matsubara