知っておきたい日本の言葉、季節のあれこれ。
ギンザ淑女のニッポン教養 12月は「霜ばしら」を食べて季節に浸る
昔、戦場で防衛のために張り巡らされた竹で組んだ柵のことを「もがり」と言い、この仮設の柵を冬の木枯らしが吹きぬけてピューピューと笛のような音を立てることを「もがり笛」と呼びました。「虎落」の漢字の意味はよくわかっていません。貴人を埋葬する前に死体を仮置く場所も「もがり」と言いました。そう聞くとなんだか余計に、冬の烈風の寒々しさがつのってきます。
カグツチ
今月の神様
イザナミはカグツチを産んだ際に大やけどを負って死にました。激怒したイザナギはカグツチを斬り殺し、その血から多数の神々が生まれました。のちに火伏せの神として全国の秋葉神社に祀られたカグツチ。現在の東京・秋葉原は、火事が多発した江戸〜明治時代に延焼を防ぐために設けられた火除け地(空き地)で、ここに造営した鎮火神社(のち秋葉神社)に由来して、地名が残っています。
霜ばしらしもばしら
今月の和菓子
口に含んだ瞬間にサクッと崩れ、またたく間に溶けてなくなってしまうさらし飴の銘菓。その食感が、冬の早朝に霜柱をザクザクと踏みしめる感覚を思い出させます。大変壊れやすく、また湿気や熱に弱いので、餅米を原料としたらくがん粉の中にうずめられています。見た目も舌ざわりも、名前がこれほどしっくりくる和菓子は他にないでしょう。
霜ばしら 40g入缶 ¥2,000*販売期間は10月〜翌4月ごろまで(九重本舗玉澤)
宝船の千代紙たからぶねのちよがみ
今月の縁起物
正月元日から二日にかけての夜に、七福神が乗り合わせた宝船の絵を枕の下に敷いて寝ると、良い初夢が見られると言われました。江戸時代にはこの千代紙が流行し、多くの画家によって描かれました。長寿の象徴である鶴や松葉、財福を表す米俵などの他、回文(逆から読んでも同じ文章)の歌「長き夜の とを(遠)のねふり(眠り)のみな目覚め 波のり舟の音のよきかな」が添えられることもあります。
木版刷りの江戸千代紙 北尾重政作画「七福神宝船」¥2,500(いせ辰)
Photo: Chihiro Oshima, Kazuharu Igarashi Illustration: Hisae Maeda Text&Edit: Mari Matsubara