「音楽と美術のあいだ」の先鋭アートやディープなカルチャーも楽しめる北の祭
ディスカバーbyアートフェス 札幌国際芸術祭2017「音楽と美術のあいだ」の先鋭アートやディープなカルチャーも楽しめる北の祭
芸術祭ブームで今年も芸術祭が目白押し。アート鑑賞はもちろんだけど、その地域ならではのカルチャーもいろいろ知りたい! そんなよくばり女子に、芸術祭とその周辺で発見したおもしろスポットを紹介。
2014年に坂本龍一ディレクションでスタートしたトリエンナーレ、札幌国際芸術祭の第二回目のテーマは「芸術祭ってなんだ?」。え、そこから?という問いを発したのは「あまちゃん」のテーマ曲でも知られる音楽家の大友良英。東日本大震災後は福島で「プロジェクトFUKUSHIMA!」として盆踊りなどの祭をつくってきた彼が旗を振る今回は、「音楽と美術のあいだ」にいるようなアーティストが多く集まり、「芸術と生活のあいだ」にあるような作品が点在する祭を目指しています。まずは作品から見てみましょう。
札幌市立大学 芸術の森キャンパスの空中廊下「スカイウェイ」では、国際的に注目を集める毛利悠子がインスタレーションを展開。長い廊下の端と端に置かれたピアノの自動演奏は0.5秒ズレていて、順路を辿ると音が徐々に合っていく。明治時代の急速な近代化によって生じたズレはなくなりつつあるだろうか。なんてことを思いながら歩いてみたり。
空間の特徴をとらえ、光や日用品を使ったオブジェなどを配して奇跡的に美しい光景をつくり出す梅田哲也は、70年代に建てられたデパート跡に《わからないものたち》をインストール。札幌各地で集めた廃材やその場にあったものを使って未知の体験を提供しています。
梅田はもう一つ、かつてりんご倉庫として使用されていた蔵を建物ごと作品化した《りんご》を夜間限定で公開しているのでこちらにも足をのばしたい。
ディレクターの大友良英は青山泰知、伊藤隆之とのユニットで百台以上もの中古のレコードプレーヤーを使用した作品《without records》の新作を発表。元々ゴミで埋め立てた土地を、イサム・ノグチが「人間が傷つけた土地をアートで再生する」と言って大地を彫刻するようにして設計した「モエレ沼公園」で新たな再生の物語を紡いでいます。
そのほかのおすすめは、ボアダムスの中心人物でヴィジュアルアーティストとしても活躍、今回は点描で驚異的な祈りの空間をつくり出した∈Y∋のインスタレーション(@札幌芸術の森工芸館)。大友が真っ先に声をかけたというクリスチャン・マークレーの視覚と聴覚の関係を追求する作品(@札幌芸術の森美術館)。道内の名作とされる木彫り熊を集めた展示(@札幌市資料館)。「たべるとくらしの研究所」を営む安斎伸也による薪釜を搭載した消防車(!)「モバイルアースオーブン」などなど。
さて、そうした作品も然ることながら、注目すべきはこの地で独自に育まれてきたおもしろスポット。地方都市ならではのカオスが存在しています。
その筆頭は「レトロスペース坂会館」でしょう。ビスケットで知られる坂栄養食品の元社長で館長の坂一敬が長年の蒐集品を展示すべく1996年に設立した私設博物館で、展示物は緊縛人形からこけし、昭和の文房具、雑誌までさまざま。芸術祭の企画メンバーも圧倒され、繁華街のすすきのに芸術祭の会場として坂会館の別館をつくったほど。
お次は、すすきのにある「大漁居酒屋てっちゃん」。店主・阿部鉄男が集めたメンコ、ブロマイド、雑誌の切り抜きやおもちゃなど大量のモノで埋め尽くされ、妙なエネルギーに満ちています。海鮮がおいしい居酒屋として人気なので、予約して行くのがおすすめ。こちらも会期中はすすきのに別館が設けられているほか、9月30日までは店内ツアーも開催。
食では、「シメパフェ」も気になるところ。札幌では女性の間で夕食や飲み会の最後をパフェで締めることが流行っており、夜にパフェを供する店が数十軒あるのだとか。夜パフェ専門店「パフェテリア パル」では「ハスカップとマスカルポーネのパフェ」(ドリンク付きセットで1,500円)などのシャレオツなパフェとお酒を一緒に楽しめます。
芸術祭のクロージングイベントとして、9月30日(土)には「モエレ沼公園 音楽&アート解放区」の開催が決定。また、同日深夜には梅田哲也らによるオールナイトトーク「生きているのに走馬灯」が《りんご》の会場で行われる。「夏休み、旅し足りてない!」「前半期の有休消化しなきゃ…」なんてお嬢さんがた、これから駆け込むなら札幌はいかが?
■札幌国際芸術祭2017
日時:開催中〜10月1日(日)
会場:モエレ沼公園、札幌芸術の森、金市舘ビル、北専プラザ佐野ビル、AGS6・3ビル、北海道教育大学アーツ&スポーツ文化複合施設HUG、札幌大通地下ギャラリー500m美術館、札幌市資料館、SIAF2017オフィシャルバーOYOYOほか
ゲストディレクター:大友良英
主催:札幌国際芸術祭実行委員会/札幌市
Edit&Text: Sayuri Kobayashi