スチャダラパーの90年代を余談で振り返る。すべては90年代からはじまった!

1990年代半ばの「世界同時渋谷化」現象。それは、エディター/ライターの故川勝正幸さんが「発見」したフレーズです。当時「渋谷系」と呼ばれた音楽を軸に盛り上がったカルチャームーブメントは、世界同時多発的に起こっていた現象で、世界中のクリエイターやおしゃれ感度の高い若者たちが「渋谷系的概念」を共有し、「好き!」「わかる!」と共感していたということなのです。「いいね!」ボタンもない、インターネット前夜の奇跡。アナログ時代最後のディケイドだったからこその 「渋谷化」だったのかもしれません。


スチャダラパーの余談
90年代

GINZA2014年6月号別冊付録掲載

ということで。スチャダラパーの登場です。渋谷系アンセムといわれた、小沢健二さんとのコラボレーション曲「今夜はブギー・バック」も今年でリリース20周年(雑誌発売当時)。スチャダラの1990年代を〝余談〟で振り返りました。
 スチャダラパー

Bose いよいよ90年代ブーム到来らしいよ、ギンザ的には。

SHINCO え、きてんの?

ANI 満を持しての?

Bose てか、10年ぐらい前にもなかった?「よし、90年代ふりかえるぞ!」的気運が。僕らなーんも変わってないのに周りだけがぐるぐるぐるぐる回ってる気がするんだよなあ。

SHINCO そのたんびに思い出してもらえるボクちんたち♡

Bose ま、僕らは花の90年デビュー組ですからね。

ANI 90年代の申し子的な?

SHINCO 渋谷系の申し子的な?

ANI 「今夜はブギー・バック」(94年)でコラボレーションビジネスの先鞭をつけた的な?

SDP ガハハハハ!

Bose てかさ、アレはヒットを狙って作ったわけじゃないし。そもそも売れると思ってなかったし。当時、小沢(健二)君と僕らが同じマンションに住んでて遊びで作っただけのことで。

ANI しかしその後の悪しきコラボビジネスのモデルとなり。

SHINCO とりあえずフィーチャリングやっとけ的な慣例が業界に。

Bose そもそも、フリッパーズ(・ギター)と僕らは同世代で、匂いが一緒っていうか。やってる音楽は違うけど発想が似てたからすぐ友だちになって。でも、自分たちが渋谷系っていわれると、そういう自覚はまったくないんだよなあ。なんか他人事だよ。

ANI オレは渋谷系っていうとオリジナル・ラヴ(現オリジナル・ラブ)だな。「月の裏で会いましょう」。

SHINCO やっぱ世間的にはフリッパーズじゃない?ピチカート・ファイヴとか、小山田(圭吾)君のトラットリア・レーベルとか。

Bose 結局、信藤(三雄)さんがデザインすれば渋谷系っていう。おおざっぱにはソコだよ。

SHINCO うちらは安齋(肇)さん&湯村(輝彦)さんだもんね。

ANI ソラミミ系。

SDP ガハハハハ!

Bose でもだからといって、「じゃ、渋谷系を表現してください」っていわれて、「ダーバダダバダバッ♪」って歌えばいいのかっていったらそれは全然違うじゃん。そんなペラッとしたものではないじゃん。

ANI 結局、90年代初頭にバンドブームっていうのがあって、そのレールじゃないところから出てきた「アンチバンドブーム組」が渋谷系ってことなんじゃない? HMV渋谷の1階に並んでたCDを思い浮かべると。

Bose もっといえば、電気グルーヴもボアダムスも暴力温泉芸者の中原昌也も、それも全部渋谷系だったわけで。てか、あの時代は混沌としてた。ギターポップからノイズまで全部がごちゃごちゃに存在してたもん。

SHINCO それを体系的に整理してくれたのがエディターの川勝(正幸)さんだったんだよ。「渋谷系はこう見る」みたいなことをうまく説明してくれたんだよね。

Bose 「世界同時渋谷化」という言葉を使ってね。

ANI あれじゃない、川勝さんとつながっているのが渋谷系。

SHINCO 「ポップ中毒者」が夢中になったのが渋谷系。

ANI 『TVブロス』のコラムにフックアップしたのが渋谷系。

Bose てことは、川勝さんが「渋谷系」じゃん。「渋谷系」じゃなくて「川勝系」。

SDP だ〜よ〜ね〜。

Bose じゃあさ、90年代で思いつくキーワードをそれぞれいくつか挙げてみようか。

SHINCO フジテレビの深夜ドラマ『バナナチップス・ラヴ』。

Bose スパイク・リー。

ANI きんさん・ぎんさん。

SHINCO 岡崎京子のマンガ。『リバーズ・エッジ』。

Bose 小沢君の『オリーブ』の連載「ドゥワッチャライク」。

SHINCO からの英米文学ブーム。

Bose ポール・オースター&柴田元幸先生。

ANI 風船おじさん。

Bose 六本木WAVE。

SHINCO シネ・ヴィヴァン・六本木。

ANI 菅直人とカイワレ大根。

SHINCO アニエスベー。

Bose セントジェームス。

ANI プレステとセガサターンが同時発売。

SHINCO セルジュ・ゲンスブールの娘のシャルロット。

Bose ヴァネッサ・パラディ。

ANI 激やせりえちゃん。

SHINCO シュプリーム。

Bose エアマックス。

ANI からのエアマックス狩り。

SHINCO ガングロ。

ANI スーパールーズ。

SHINCO からの援助交際。

ANI からの郷ひろみのゲリラライヴ・イン・渋谷。

Bose ちょっとそこの兄弟!これはギンザなの!もっとおしゃれなものを思い出してよ。ソフィア・コッポラ的なのを。

SHINCO あれだろ? キム・ゴードン。よく知らないけど。

ANI 『女子高生ゴリコ』しまおまほ。90年代の生き証人。

SDP ガハハハハ!

ANI でもまあ、ヒロミックスとか女の子カメラマンが日本でも出てきたのは90年代的だね。

SHINCO 長島有里枝とかね。

Bose 90年代は元気な女子が増えた時代かもしれないね。そういう女の子たちが渋谷系を支えてたわけだし。とにかく、どんなライヴも女の子でいっぱいだったじゃん。女の子たちがライヴに一生懸命通うっていうのは、90年代に顕著になっていったことかもしれないね。

SHINCO HMV渋谷でレコード買ってぇ、青山ブックセンターでアート本買ってぇ、シネ・ヴィヴァン・六本木でリバイバル映画を観た後はぁ、DJバー・インクスティック行ってぇ。

ANI アニエスベーのボーダー着てベレー帽かぶってんでしょ。

SDP ガハハハハ!

Bose 面白いのは、渋谷系があの時代にスポットライトを浴びたことなんだよ。小沢君はお茶の間に出ていって紅白まで出たわけだし。思うに、日本語の詞で面白いことを歌える人がたくさん出てきた、歌詞が進化した時代だったんじゃないかなって。

SHINCO はっぴいえんどから続く日本語ロックの系譜で。

Bose だけど、90年代の若者がみんなそれに共感したかというとそうではなく。小沢君が紅白に出ても「渋谷系」は反主流のままなわけだし。

SHINCO ま、メインストリームは小室サウンズだったからね。

ANI シノラーよりもアムラー。

Bose そうなんだよ。当時の若者の多くはMA-1着てtrf(96年まで。その後TRF)を聴いてたわけじゃん。

ANI あ、たまごっちブーム!

Bose な〜に突然そんなの思い出してんのよ!

ANI いや、な〜んか90年代で重大なことを忘れてたなと。

SDP ガハハハハ!

スチャダラパー

ANI、Bose、SHINCOの3人からなるラップグループ。1990年にデビューし、94年『今夜はブギー・バック』がヒット。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。2017年にはのんがPVに登場した『ミクロボーイとマクロガール/スチャダラパーとEGO-WRAPPIN’』が話題に。18年4月8日(日)に日比谷野外大音楽堂で『スチャダラパー・シングス』を開催。

Art Direction & Design: Toshimasa kimura Text&Edit: Izumi Karashima

GINZA2014年6月号別冊付録