少女漫画研究家・横井周子さんが選ぶ、ひげ&坊主を知る4作品「オロチの恋」「LIMBO THE KING」「金の国 水の国」「ダンス・ダンス・ダンスール」

少女漫画研究家・横井周子さんが選ぶ、ひげ&坊主を知る4作品「オロチの恋」「LIMBO THE KING」「金の国 水の国」「ダンス・ダンス・ダンスール」

物語に奥行きと萌えを授ける、
ひげ&坊主の力

「ひげと坊主は少女マンガの世界では決して王道ではありません。だからこそ、ひげや坊主の男性が活躍する作品には、読者に挑むような熱っぽさが漂うのです」と横井さん。

「ひげは成熟と自由の象徴。大人にならないと生えてこないし、堅い仕事に就いていると伸ばせない。たとえばよしながふみの『西洋骨董洋菓子店』。主人公・橘のトレードマークは無精ひげ。幼い頃のトラウマにどう折り合いをつけ生きていくかというテーマに対し、年齢的には十分大人で解放されていることを示すひげが絶妙なスパイスに。『ひげは男のリボン』とは社会学者・金田淳子さんの名言ですが、『ひげ剃ると俺嫌みなくらい二枚目になるからやりたくねーのよ』という橘の隙や脱力感も、ひげというアイコンひとつで伝わってきます。岩本ナオ『金の国 水の国』はぽっちゃりヒロインが話題の作品ですが、彼女と偽装結婚するナランバヤルのひげにも注目。既存のルールにこだわらない器の大きさが表現されています」

対して坊主といえば野球少年や学生のイメージ。若さやピュアネスを象徴する。 「身体性を強く感じさせるから、逆説的にエロスにもつながる。印象的なのは矢沢あい『NANA』のヤス。僧侶のようなスキンヘッドがミステリアスで、タバコとのギャップにもときめきます。実はマンガの中の坊主はギャップ萌えの宝庫。ジョージ朝倉のバレエ少年マンガ『ダンス・ダンス・ダンスール』や、武骨な坊主男子の初恋BL・雁須磨子『オロチの恋』にもドキっとするシーンがあります」

そしてひげと坊主、両方の魅力がつまった田中相の『LIMBO THE KING』のような作品も。「華奢な天才とゴツイ坊主、対照的な主人公がそろって無精ひげ。一筋縄じゃいかないバディもの」と横井さんも推し。必読!

 

横井周子さんが選ぶ、
ひげ&坊主を知る4作品

『オロチの恋』

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©KARI SUMAKO, GENTOSHA COMICS 2017

坊主男子の無骨な愛情表現にキュン

中学生の時に偶然見かけた田之崎のことがずっと気になっているオロチ。こわもてイケメンな外見とは裏腹に、地道に相手に好意を伝えるオロチの初恋のゆくえは? 「笑えて泣けてキュンとする傑作ボーイズラブ。“全身全霊傾けてまっすぐ一直線な気持ち”と坊主頭が呼応していく終盤は涙なくして読めません。シメにひげ描写もあって、思春期から大人への経年変化を示す“毛表現”が秀逸」(雁須磨子/幻冬舎コミックス ¥630)

 

『LIMBO THE KING』

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©田中相/講談社 ITAN

ひげと坊主をコンボで堪能

人類を襲う謎の奇病・眠り病の治療と撲滅のため、軍人アダムは伝説の英雄“キング”とコンビを組んで患者の記憶の中に「ダイブ」することに。2086年のアメリカを舞台にした近未来ミステリーアクション。「笑わないプラチナブロンド・キングと、明るい短髪ネイビーのアダム。2人の無精ひげは、彼らが積み重ねてきたハードな経験と食えない男っぷりを予感させます。コンビの体格差も見どころのひとつ」(田中相/講談社 ¥581)

 

『金の国 水の国』

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©岩本ナオ/小学館

マイペースで誠実なひげ男子に癒される

敵対するA国とB国。A国の姫君サーラは、両国の平和を守るためにB国の青年ナランバヤルと夫婦を演じることに。「美男美女の恋愛とは一味違う素敵なラブストーリー。少女マンガ的には異色のひげボーボー、なのにときめく出会いの1コマ。飾らないナランバヤルさんの人柄が無精ひげから伝わってくるんです。作中ではA国の風習にあわせた付けひげにも挑戦していて、お茶目♡」(岩本ナオ/小学館 ¥593)

 

『ダンス・ダンス・ダンスール』

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©ジョージ朝倉/小学館

バレエと坊主、異色の組み合わせ

ヤンチャな中学生男子・潤平は転校生の美少女との出会いをきっかけにバレエを始める。少年の衝動が爆発するドラマチック・バレエ・ロマン。「『バレエをやる!』と決意して頭を丸めた後のこの(写真中央)セリフ。若さゆえの強さやひたむきさを、坊主頭が際立たせます。坊主で『ジゼル』のアルブレヒトを演じ衝撃を与えた実在の天才バレエダンサー、セルゲイ・ポルーニンを彷彿とさせる名シーン」(ジョージ朝倉/小学館 ¥552)

横井周子

少女マンガ研究家。『デビュー50周年記念展 池田理代子 ―「ベルばら」とともに― オフィシャルブック』『マンガのDNA』(共に朝日新聞出版)などに寄稿。

 

Text&Edit: Hiroko Yabuki

GINZA2017年8月号掲載

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