音楽を軸にしながら、アート、舞台、広告などで自由自在な活躍を見せる蓮沼執太さんのプレイリスト&コラム連載。毎回、知っているようで知らないちょっぴりコアなテーマを深堀り。蓮沼さんと一緒に、あたらしい音楽の扉を開きましょう。
蓮沼執太のMUSICKING|Playlist vol.1「デトロイト」
こんにちは、蓮沼執太です。2018年末からGINZAMAG.COMで続けてきた、このプレイリスト企画。2月中旬に編集部で、本連載をバージョンアップするための会議をしました。そこで今後は、音楽にまつわるテーマ(時代、地域、ジャンルetc.)を毎回ひとつ決めて、読者のみなさんにとって未知なる扉を開くようなプレイリストを作ろう、ということに。新タイトルも「MUSICKING」に決定し、いわゆるリニューアルと言っても過言ではありません。
「こんな視点で音楽を聴いてみると、また違った響き方をするかもしれない」、そんなふうに思えるテーマを選んでいくつもりです。COVID-19の影響で外出しづらい時期が続きますが、家で過ごす時間に、何より楽しんで、リラックスして、音楽を味わうお手伝いができたらうれしいです。
プレイリスト「デトロイト」を
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心機一転して1回目のテーマは「デトロイト」です。そのきっかけになったのは、先ほどの会議中にふと僕が口にした「デトロイトのアンダーグラウンド・シーンが面白い」という一言でした。
アメリカ中西部のミシガン州にあるデトロイト。自動車産業で栄えたのち、労働者階級の闘争や財政破綻を経て、現在は経済的に明るい兆しがみえてきています。そんな浮き沈みを経験した都市で作られる音楽も、その変化に呼応するかのように変わってきました。
編集部から家に帰って早速レコードを聴き漁ると、Motownからデトロイトテクノまで、どれも外せない曲ばかり。今回だけで全然紹介しきれないほどの名曲揃いで、気が早いですが今後もチャンスがあれば、またこのテーマを取り上げたいくらいです。
プレイリスト1曲目のEdwin Starr「War」は、誰でも一度は聴いたことがあるソウルの超有名曲。ベトナム戦争時の反戦ソングとして、今も音楽史に刻まれているし、現在の状況下でも響きます。
一転、ハードロックへ。Dogleg 「Kawasaki Backflip」はイントロのギターのカッティング、変則ドラムのパターンにハマること間違いなし。歌声も心を打ちます。
今度はデトロイトテクノ。巨匠Terrence DixonがベルリンのThomas Fehlmannとコラボレーションした「Dreaming of Packard」は、まろやかな魅力の1曲。その流れを受けてAnthony Shake Shakir「Anthony Shake Shakir Meets BBC」を。
ソウルに戻り、The Spinners「Could It Be I’m Falling in Love」からAretha Franklin「Rock Steady」へとストレートに繋ぎます。
そこで忘れてはいけないのは、ディーヴァAaliyah。ティンバランドのプロデュースワークも素晴らしい、映画のサントラ曲「Try again」をどうぞ。
続いて1990〜2000年代のデトロイトといえばな、Moodymann「Hold it Down」、J Dilla「Detroit Madness (Instrumental)」、Carl Craig「At Les」を。
Yusef Lateef 「Love Theme from Spartacus」で折り返し。多くのトラックメイカーにサンプリングされてきたこのメロディーの、ジャジーな元ネタをぜひ聴いてもらいたいです。
Marvin Gaye「Got To Give It Up, Pt.1」からTheo Parrish「Cypher Delight」の繋ぎには、ジャンルも時代も違えど、どこか同じようなグルーヴを感じます。
ここからはラストスパートです。Funkadelic「I’ll Bet You (1969 Version)」のファンクを浴びたら、お次はAlice Coltrane「My Favorite Things」を。
最後はHIPHOPで、Danny Brown「Really Doe (feat. Kendrick Lamar, Ab-Soul, Earl Sweatshirt)」という豪華メンバーをフィーチャーした曲を経由して、Sam Austins 「Glam Party」へ。まさに新世代的な、荒いシンセ音のプロダクションでプレイリストの幕を下ろします。そのままループ再生して、頭のEdwin Starrに戻るのもアリ。
01 Edwin Starr / War
02 Dogleg / Kawasaki Backflip
03 Thomas Fehlmann & Terrence Dixon / Dreaming of Packard
04 Anthony Shake Shakir / Anthony Shake Shakir Meets BBC
05 The Spinners / Could It Be I’m Falling in Love
06 Aretha Franklin / Rock Steady
07 Aaliyah / Try again
08 Derrick May / Strings of Life
09 Moodymann / Hold it Down
10 J Dilla / Detroit Madness (Instrumental)
11 Carl Craig / At Les
12 Yusef Lateef / Love Theme from Spartacus
13 Marvin Gaye / Got To Give It Up, Pt.1
14 Theo Parrish / Cypher Delight
15 Funkadelic / I’ll Bet You (1969 Version)
16 Alice Coltrane / My Favorite Things
17 Danny Brown / Really Doe (feat. Kendrick Lamar, Ab-Soul, Earl Sweatshirt)
18 Sam Austins / Glam Party
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蓮沼執太
音楽家・作曲家。1983年生まれ、東京都出身。蓮沼執太フィルを主宰し、国内外でのコンサート公演をはじめ、映画、演劇、ダンス、CM楽曲、音楽プロデュースなどを多数手掛ける。また作曲という手法を応用して、彫刻、映像、インスタレーションを発表し、展覧会やプロジェクトを活発に行う。最新アルバムに、蓮沼執太フィル『FULLPHONY』(2020)。個展『 ~ ing』(東京・資生堂ギャラリー 2018)では、『平成30年度芸術選奨文部科学大臣新人賞』を受賞。
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@shuta_hasunuma