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蓮沼執太のMUSICKING|Playlist vol.4「アライヴ」

蓮沼執太のMUSICKING|Playlist vol.4「アライヴ」

音楽を軸にしながら、アート、舞台、広告などで自由自在な活躍を見せる蓮沼執太さんのプレイリスト&コラム連載。毎回、知っているようで知らないちょっぴりコアなテーマを深堀り。蓮沼さんと一緒に、あたらしい音楽の扉を開きましょう。


蓮沼執太 プレイリスト MUSICKING

プレイリスト「アライヴ」を
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蓮沼執太 プレイリスト MUSICKING

「2018年11月からスタートした、このプレイリスト連載も今回が最終回です。いろいろな視点から音楽を捉え直すことで、聴き慣れた楽曲も新しく響いてくるはず……そんな想いを込めて、これまで12のテーマで選曲してきました。連載を支えてくださったGINZAのスタッフの方々、毎回素敵なアートワークを手がけてくれた、やまもとまなさんとフクナガコウジくん、どうもありがとう!そして、毎回楽しみにしてくれていた読者のみなさん、ありがとうございます。
最終回のテーマは”ALIVE(生きている)”です。音楽を聴くことは、たとえば呼吸や食事ほど大切ではないかもしれません。でも昔から現代に至るまで人間が絶やさずに続けてきた行為として、そこには生きる上で必要な何かがあるのだと思います。聴けば、まっすぐに人生を歩めそうな楽曲をセレクトしました」

 

蓮沼執太 プレイリスト MUSICKING

#1 Van Dyke Parks /
Big Rock Candy Mountain

「アメリカの作曲家、ヴァン・ダイク・パークス。日本でも、はっぴいえんどのアルバムをプロデュースしたことで知られています。数々の名盤を残していますが、今回はコーエン兄弟の映画『オー・ブラザー!』のサントラに収録された『Big Rock Candy Mountain』を。この映画では往年のカントリー歌手、ハリー・マクリントックによる同曲のオリジナルも使われています。無骨さが魅力のオリジナル版と比べ、ヴァン・ダイクのピアノの響きとハーモニーは叙情的で、不思議と懐かしい気がします」

#2 José González / Stay Alive

「スウェーデンのシンガー、ホセ・ゴンザレスの楽曲は映画『LIFE!』のサントラより。ピアノからスタートするイントロは緊張感のあるムード。サウンドが描き出していくひたむきさもさることながら、歌詞の”We’ll do whatever just to stay alive=ぼくたちは生きるためになんだってするよ”という、人生への肯定をストレートに伝える表現にもグッときます。子どもが生まれてからしばらく音楽活動を休んでいましたが、今年、2021年にカムバックしました。新曲『El Invento』も落ち着いた雰囲気の名曲です」

#3 Laurel Halo / Nahbarkeit

「ベルリン在住の電子音楽家、ローレル・ヘイロー。タイトルの意味は”親密さ”という訳が近いと思います。シンセサイザーの淡い重なりと、遠くのほうで鳴るドラムのリズム。それぞれの音は繰り返されているようでいて、即興的にも聴こえてきます。雑味のない音空間を作り上げている壮大な楽曲」

#4 Harold Budd /
The Room of Ancillary Dream

「アメリカの作曲家、ハロルド・バッド。2020年12月、新型コロナウイルスの合併症により84歳で亡くなりました。ブライアン・イーノとのコラボレーションでも知られる彼。この楽曲の魅力はシンプルなピアノの旋律が重なるハーモニーです。聴いていると、追憶に浸っているかのような切ない気分になったりします」

#5 Nicholas Britell / Agape

「アメリカの映画音楽作曲家、ニコラス・ブリテル。バリー・ジェンキンス監督作『ムーンライト』の音楽でも有名ですが、ここでは同監督の『ビール・ストリートの恋人たち』のサントラから1曲を。ぼく自身、あまり情緒たっぷりな楽曲を好んで聴く方ではないんですが、これは楽器の使い方がとにかく秀逸。だから音楽的な構造はシンプルながら、感情がしっかりと届いてくるんだなと思い、セレクトしました」

#6 Toru Takemitsu & Shuntaro Tanikawa /
MI・YO・TA

「武満徹さんによる合唱曲。タイトルは彼が作曲活動の拠点にしていた、長野県北佐久郡の御代田町(みよたまち)に由来します。シンガーの石川セリさんも歌った楽曲ですが、美しいメロディーはもともと武満さんが、同じく作曲家の黛敏郎さんと一緒にした仕事で不採用になったものだそうです。1996年に亡くなった武満さんの葬儀で黛さんが口ずさんだのをきっかけに、詩人の谷川俊太郎さんが詞をつけました。”残されたメロディー ひとり歌えば よみがえる語らい 今もあたたかい”と、哀悼を思わせる言葉が並びます」

#7 Miles Davis Quintet /
It Never Entered My Mind

「1956年に録音されたアルバム『ワーキン』の1曲目。切ないピアノの上にマイルス・デイヴィスが奏でる、ミュートされたトランペットの旋律には感情を掻き立てられます。どこか哀愁がありながら、何ごとかを訴えかけてくるようでもあります。映画的な楽曲で、聴き終わるとワンシーンを堪能したかのような気分になること間違いなしです」

#8 Ursula K. Le Guin & Todd Barton /
Heron Dance

「『ゲド戦記』の原作者でもあるアメリカのSF・ファンタジー作家、アーシュラ・K・ル=グウィン。1985年に発売された彼女の著書『オールウェイズ・カミングホーム』の、原書の付属カセットテープに収録されていた楽曲です。オレゴンの電子音楽家、トッド・バートンが手掛けた架空の民族音楽。”ブックラ”というアメリカ製シンセサイザーが瞑想的に響き、神秘性を感じます」

#9 DJ Rels / Universal Peace

「DJでプロデューサーのマッドリブ。先日フォー・テットのアレンジでリリースしたアルバムも面白かったですが、ダンス・ミュージックに特化したこのプロジェクト”DJレルズ”も秀逸。ダンスって生きることの象徴なのではないかと思います。身体を揺さぶり、心に近づいていく行為というか。スモーキーなビートに身を任せていると、気持ちが高揚します」

#10 A Certain Ratio / Lucinda

「ガラッと空気を変え、イギリスのポストパンク・バンド、ア・サートゥン・レイシオによる1982年リリースの楽曲を。とにかく変なファンク・ミュージック。80年代はアーティストたちがあらゆるジャンルを取り込み、新しい音楽を模索した時代でした。そんな切り拓いていく姿勢を感じる1曲です。また余談ですが、彼らが去年リリースした楽曲『Yo Yo Gi』には東京でフィールド・レコーディングした音が利用され、MVにも街の映像が並んでいます。実際の東京を知っている人なら笑ってしまう素材の使われ方ですが、気になったらチェックしてみてください」

#11 Daft Punk / Alive

「”ALIVE”といったら、先日解散を発表したダフト・パンクは外せません。彼らは活動を続ける中でずっと、それまでの音楽史を高いクオリティで組み直し続けてきたように思います。最新作でついに、頂点に達してしまったのでしょうか。この2007年リリースの楽曲を聴き直してみたら、ダンス・ミュージックとしてはとてもシンプルな構造。でも太い四つ打ちのリズムはキャッチーで、いつしか、のっしのっしと力強く前進していく足音にも聴こえてきます」

#12 RYUTist / ALIVE

「ぼくが作詞・作曲・プロデュースし、蓮沼執太フィルが演奏した新潟のアイドル、RYUTistの楽曲です。手前味噌でごめんなさい。タイトルどおり、”地球に存在するものすべてが生きていて、それらが循環し、ぼくら人間の生がある”という大きなテーマのもとで歌詞を書きました。現代人はどうしても頭で考えてばかりになりがちです。自分を取り巻く環境の声に耳を澄ますことの大切さが、歌詞を通して伝わればいいなと思っています」

#13 Spooky Black / Idle

「アメリカのバンド、スプーキー・ブラックの楽曲。サウンド・アプローチはジェームズ・ブレイクっぽいと思います。数年前アメリカのポートランドで、カフェにいたときにBGMとして流れてきて、Shazamしました。ぼくは旅先でよく作品制作のためのフィールド・レコーディングをしています。だからか街中で耳に入ってくる音楽にも敏感なんです。きっとこの楽曲のサウンドが、カフェで一息ついていた自分にスッと溶け込んできたんですね」

#14 Jóhann Jóhannsson with Hildur Guðnadóttir & Robert Aiki Aubrey Lowe /
End of Summer Part 2

「最後はぼくの好きな作曲家による、テクスチャーが美しい楽曲を。静かで一見何も起きていないようでいて、実は小さな生が無数に息づいている、そんな情景が浮かぶ音楽です。人生には必ず、始まりと終わりがありますよね。でもそういう時間の区切り以上に大切なのは、”瞬間瞬間をどう生きるのか”ということだと感じます。ゆったりとしたリズムのこの楽曲を聴いていると、”今”を大切にしようという気持ちになります」

Profile

蓮沼執太 Shuta Hasunuma

音楽家・作曲家。1983年生まれ、東京都出身。蓮沼執太フィルを主宰し、国内外でのコンサート公演をはじめ、映画、演劇、ダンス、CM楽曲、音楽プロデュースなどを多数手掛ける。また作曲という手法を応用して、彫刻、映像、インスタレーションを発表し、展覧会やプロジェクトを活発に行う。最新アルバムに、蓮沼執太フィル『FULLPHONY』(2020)。個展『 ~ ing』(東京・資生堂ギャラリー 2018)では、『平成30年度芸術選奨文部科学大臣新人賞』を受賞。
shutahasunuma.com
@shuta_hasunuma

Design & Illustration: Kohji Fukunaga, Mana Yamamoto Edit: Milli Kawaguchi

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