東横線・学芸大学駅から歩いて5分程、住宅地にある小さな本屋をはじめてもうすぐ4年が経ちます。毎週のように顔を出してくれている小学3年生(当時)の近所の女の子もこの春から中学生です。親心とまではいきませんが妹や姪っ子をみているような気持ちになってきて(どちらもいませんが)、制服姿をみるのが今から楽しみです。
そこで今月の一冊はあたたかな視点で妹を見守り、写真という記憶に家族の姿を残した写真集『JANE&SERGE : A FAMILY ALBUM』。女優・歌手、60-70年代のファッションアイコンとして知られるジェーン・バーキンと当時のパートナーであるセルジュ・ゲンスブールとの幸せな日々がつまった一冊です。これらはジェーンの実の兄であるアンドリュー・バーキンが1963-79年の間に撮影したもので、頁を開いてすぐにあらわれる16歳の誕生日の朝に撮られた美しきジェーンの表情に誰もが心奪われるにちがいありません。
本書表紙。モノクロで印象的な二人の写真が目に飛び込んできます。ビニールケースから出すとこちらはポスターになります。
ジェーンが16歳になった朝に撮られた一枚
10代で映画女優としてロンドンで活動していたジェーンは、作品を通して知り合った音楽家のジョン・バリーとの間に娘ケイト・バリーを授かります。間もなくして離別し、20歳のときにパリでセルジュと運命の出会いをはたし、惹かれあった二人は私生活、仕事でもパートナーとなり新しい生活をスタートさせました。本作ではそんな二人の姿を中心に、ケイトや二人の間に生まれたシャルロットとの微笑ましい日々がうつしだされています。
今回のアートワークで松田さんが切り取ってくれたシーン①
今回のアートワークで松田さんが切り取ってくれたシーン②
シャルロット出産直前の一枚
なかでも何枚にも渡りおさめられている表情豊かなセルジュの写真がとても印象的で、まわりにいる子どもたちやジェーンもそれにつられてか、多くは穏やかな笑顔に包まれていて楽しそうな雰囲気がよく伝わってきます。しかしページをめくるほどにそれ以上の何か、二人だけの深い「絆」なようなものを強く感じるようになっていきます。それはジェーンの連れ子だったケイトに対してセルジュが確かな愛を注いでいたこと、事実婚という形を貫いた二人にしかわからない関わりのこと、のちに二人が別れてしまうこと、セルジュが病で亡くなるまでずっと交流が続いたこと――未来の二人をしっているからこそ感じる、当時の“今”をこえても失われることのなかった形なきものなのかもしれません。
豪華すぎる特典がすごいです。こちらは5枚のフォトプリント。
続いてこちらはワッペンとステッカーシート。その他にも薄手のブックレットが2冊ついています。
そしてこれらの写真は兄と妹という枠ではおさまらない、アンドリューとセルジュの友愛があってこそ撮られたのだと思います。事実、1973年に発表された「手切れ」(邦題)を作曲するセルジュの一枚がおさめられているなどジェーンの存在ぬきにしてもその関係の深さがうかがえます。アンドリューが妹家族に向けた眼差しの広さと暖かさに包まれた“アルバム”と呼ぶにふさわしい一冊は、思い出の日々を残す喜びを私たちに伝えてくれています。