モトーラ世理奈さんと、国内最古の映画館「高田世界館」へ旅に

モトーラ世理奈さんと、国内最古の映画館「高田世界館」へ旅に

モトーラ世理奈、 高田世界館へ。

東京から電車で2時間半。新潟の上越市高田という街に 108年の歴史を重ねる、小さな映画館がある。 明治期のモダンを詰め込んだ2階建ての木造建築が 趣たっぷりな姿もそのままに、小径沿いに立って街を見つめる。 映画好きが「一度は訪れてみたい」と名を挙げることも多い 「高田世界館」を訪ねて、モトーラ世理奈さんが旅をした。


高田世界館 劇場

ここは新潟の上越市高田。北陸新幹線とローカル線を乗り継いで東京から2時間半の場所にある映画館「高田世界館」を、女優・モデルのモトーラ世理奈さんが訪れた。

高田駅でえちごトキめき鉄道を降り、回廊のようにつながるアーケードを歩いて10分ほど。儀明川を渡った先で交わる本町通りに入ると、古い町並みの中、町屋に混じって洋風建築が残されている。ひときわ大きな洋風建築を目にして、「渋くてかっこいい!」とモトーラさん。国内で現存する映画館のなかでは最古とされる「高田世界館」が姿を現した。1911(明治44)年に開館した芝居小屋「高田座」から、5年後には常設映画館へと業態を変えた。大正、昭和、平成の間に「世界館」「高田東宝映画劇場」「高田セントラルシネマ」「高田松竹館」「高田映画劇場」「高田日活」と名前を変えながらも歴史を守り続けて100年以上。2007年の新潟県中越沖地震の影響もあっていったんは閉業の危機に追い込まれるも、笑福亭鶴瓶やピーター・バラカンなどの著名人が保存のために声をあげ、09年にNPO法人「街なか映画館再生委員会」が映画館を譲り受ける形で「高田世界館」として生まれ変わった。

日本最古の映画館は、 旧市街の一角に立つ擬洋風建築

通り沿いにかけられた看板をくぐり、奥へ続く回廊を通って映画館へ。チケットを購入して館内へ足を踏み入れると、ロビーには映画のパンフレットやグッズ、上映予定の告知やチラシが並べられ、貸し出し用のひざ掛けが置かれている。国の登録有形文化財であり、経済産業省の近代化産業遺産としても認定されている〝擬洋風建築〟で、木造日本建築に西洋建築の意匠などを取り入れた、明治の一時期に生まれたスタイルだ。ホールには1階席と2階席があり、2階には桟敷席が残されて、開業当時の芝居小屋としての名残を今に伝えている。細やかな天井の装飾から、階段や手すりが描くアールの曲線から、その優美な姿で「白亜の洋館現る!」と周囲をざわめかせたという、創業当時のざわめきの一端が聴こえてくるような気がしてくる。

朱色が連続する客席に座って、空間を見つめるモトーラさん。天井を見上げ、柱を数え、椅子をさすってはにっこりと笑い、「映画館って私にとっては特別な場所で、実は、私のお父さんとお母さんは映画館で出会ったんです。お母さんがアメリカのノースカロライナにいたときに、映画祭か何かだったのかな、映画館で『渚のシンドバッド』が上映されていて、それを観に行ってみたらたまたま隣に座っていた人が話しかけてきた。それがお父さんだったんですよ」と驚きのエピソードを教えてくれた。映画好きの両親に育てられ、映画好きとして育ったモトーラさん。女優という職業を目指したのも、自然な流れだったのだろうか?

「小学生の頃からずっとお芝居がやりたかった。2年前に初めて映画に出てからは、演技をするなかでも特に映画がやりたいと思うようになってきました。お芝居をやりたいと思ったきっかけは幼稚園のお遊戯会だったと思います。ステージに立つと周りの子たちは恥ずかしがっていたんだけど、私は演じることが楽しいばかりで。普段はあんまり感情をはっきり表に出すことが少なかったからかな、演技をすることで、自分を表現できるのがすごく楽しかったのを覚えています」

モトーラ世理奈 -高田世界館2
ロビーの一角。古い柱時計を囲むように映画のチラシが積まれている。

ロビーから左右に伸びる階段を登ると2階席。その後方には映写室があり、フィルムからの飛び火防止のために一面にブリキ板が貼られた床の上には、 フジセントラル社製の映写機 台が据 え置かれている。

「かつては フィルムをかけるたび に映写技師さんにお願いしていました。 技師さんがだんだんと高齢になられて いることもあって、 年に僕が着任し たときに技師さんに映写機の使い方を 教えてもらい、今では僕が動かしてい ます。この場所で 年以上続いた フィルム上映の技術も、後世に残して いきたいですから」と語るのは、支配 人の上野さんだ。 年前、この映画館 の支配人として生まれ育ったこの街に 戻ってきた。大学時代に映画論を専攻 していた上野さんの仕事は、上映作品 のセレクト、イベントの企画・運営、 広報として情報を発信したり、建物を 管理したり、映画館の見学ツアーを行 ったりと多岐にわたっている。

街の文化拠点に生まれ変わった 新しくて古い、映画の聖地  

モトーラ世理奈 川
映画館の裏手を流れる儀明川。気持ちのいい風が吹き抜ける。

12年には、映画『シグナル〜月曜日のルカ〜』のロケ地となり、17年には漫画『世界は今日もまわってる』の中に描かれる映画館のモデルとして登場。少年ジャンプの新人賞には『高田世界館物語』という作品が応募され、NHKの番組でも特集が組まれるなど、年を追うごとに注目度を増している「高田世界館」。実は、ここから5キロほど離れた場所にはシネコンがあるのだが、「そのジェイマックスシアターも、古くからあった地元の映画館・高田中劇の会社が営んでいるんです。シネコンでは大作映画の上映が多いですから、こちらではミニシアター系の作品を中心に、ちょっと偏ったラインナップを目指しています」と上野さん。1日だけの限定上映もあれば1カ月続く作品もあり、新旧の日本映画、アニメから、ジャン=リュック・ゴダールやフレデリック・ワイズマンなど巨匠の最新作まで、ラインナップの多彩さに驚かされる。「高田世界館」でのここ数年のヒットをきけば、『この世界の片隅に』『人生フルーツ』『万引き家族』の3作品は別格の盛り上がりだったそう。この夏には、黒沢清監督『旅のおわり世界のはじまり』や、塚本晋也監督『野火』などが控えてもいて、ひとつの映画館でこれだけ多くの作品に触れられるという贅沢さに、地元住民のことが羨ましくなってしまう。

モトーラ世理奈-高田世界館
本町通り沿いに掲げられた看板。ここを左に折れて回廊を抜けていく。

「『映画は映画館でみるエンターテイメントだ』と言っていた監督さんがいたんですが、今日この場所に来てみて、その言葉の意味がはっきりわかったような気がします。100年前から、映画を観るためにここを訪れた人たちがいた。その気配を感じながらの映画鑑賞は、特別な体験だったと思います。それに、古い映画のデジタルリマスター版をきれいな映画館や美術館で観るときってちょっと緊張してしまうけど、古くから残るこんな映画館でなら、映画と場所がすんなりとつながっていくというのか、変に構えずに観られるんじゃないかと思うんです。実は私も出演している『おいしい家族』も9月末から上映予定なんです。うれしいな」と、モトーラさん。

映画上映に加えて、監督や出演者が来場したり、コンサートや落語、トークショーなどのイベントも積極的に開催。多くの映画好きをして、「一度は訪れてみたい」と言わせる、新しくて古い映画の聖地は、映画館という枠を超えて、新しい文化拠点として地元に根を張り新しい芽を生み出している。

モトーラ世理奈と店員さんとおいしい家族
ふくだももこ監督作品『おいしい家族』は9月20日から全国公開予定。試写状にサインを。

モトーラ世理奈 もとーら・せりな

モデル、女優。2014年『装苑』でモデルデビュー。『花椿』他、雑誌や広告でも活躍。『少女邂逅』でダブル主演をつとめ映画デビュー。今夏以降、『おいしい家族』『恋恋豆花』『風の電話』など出演映画の公開が続く。

高田世界館

住所:新潟県上越市本町6-4-21
TEL:025-520-7626
休:火

えちごトキめき鉄道・高田駅から徒歩約10分。休館日である火曜日以外は、朝10時から3〜4作品の上映を計5回。劇場もスクリーンもひとつずつだが、同時期にいくつもの作品がかけられている。映画の上映スケジュール、イベント情報などの詳細はHPやSNSで確認を。takadasekaikan.com

Photo: Keisuke Fukamizu Hair&Make-up: Aya Murakami Text: Hikari Torisawa

GINZA2019年8月号掲載

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