詩人は当然ながら言葉を使って表現をする。その言葉から広がる豊な世界に触れると、この人たちにはどうやって世の中が見えているのだろうと不思議に思うことがある。たとえ同じもの、場所、ことを体験しても、きっと全然違って見えているんじゃないかと。
国際的ベストセラー小説『猫の客』で知られる詩人、平出隆(1950-)と、彼にまつわる美術作品で構成された一風変わった展覧会が、DIC川村記念美術館で開催されている。
加納光於、河原温、中西夏之、奈良原一高、岡崎和郎、若林奮……。平出はこれまで、さまざまなアーティストたちと対話を重ねてきた。この展覧会は、平出と彼らとの長い歳月を軸に、美術作品に固有の思考や言語に光を当てている。
Photo: Tomoki Imai
まず、驚くのがその会場構成。間仕切り壁で区切るのではなく、部屋の中央に巨大で、しかも透明の梁がどーんと貫いている。緩やかに分けられた空間に、作家の作品が、中央には平出の作品や出版物にかかわる資料などが展示されている。これは、言葉が造形性を伴いながら拡散してゆく平出独自の概念「空中の本」を建築家の青木淳が表現したものだそう。たしかに、それは空中に言葉がひらひらと浮いているようにも見え、とても繊細な印象だ。