〜1990 僕はその頃10代で 〜 vol.1「チョベリグの呪文」 文・レイオス
「チョベリグ(*1)」に心惹かれている。だけど使った事がない。だから、風呂でトイレで言ってみたりしてる。
「チョベリグ」一人の空間でこだまするその響きは、とんでもなく虚しい。発音の問題もある。おそらくではあるが正解としては、IKKOさんがいうところの「どんだけー」が近いのではないかと考えている。そこでその風味で口ずさんでみる。
「チョベリグー」すると今度はなんだか落ち込んでくる始末である。子供の運動会の父母リレーで頑張っちゃったお父さん状態。30代半ばの男が一人トイレで「チョベリグー」と言っているところを想像してみて頂きたい。そりゃ、心の一つや二つは捻挫してしまう。なのに、どうしてチョベリグにこだわるのか。と考えているうちに気がついた。言いたいんじゃなくて、言われたいんじゃないのか。そう気付いた途端に言われたくて仕方がなくなってくる。もう誰にも褒められなくなってかなり久しい。
「まあ、お前もさ、よくやってるよ」
最近友人が僕に向けた言葉だが、これは褒めではなく、慰めである。そして、往々にしてこういうのは褒めるところのない人間にかけられる言葉だ。だからといって「あなたって優しいし話しも面白いし、とっても素敵」と言われても、まるで信用できないし、何か美人局的な陰謀めいたものを感じてしまう。それに、そもそも言ってもらえるあてが全くない。
そこでちょうどいいのがチョベリグなんだと思う。小学生の頃一〇〇点をとったテストに描かれた花マル感。
「あなたってチョベリグ」と女性に言われたなら、有頂天になってしまい、鼻唄でも歌うだろう。曲はMK5(*2)広末涼子。だけどそれってどんなシチュエーション? そう考えると大沢誉志幸ばりに途方に暮れてしまう。脳内は完全にピロートーク。卑猥な妄想しかない自分に溜め息を吐いて、結局チョベリバ、いや、チョバチョブ(*3)である。もちろん言われてみたいですけどね。
注釈
*1「チョベリグ」コギャル語、超very goodの略語。
*2「MK5」コギャル語としては、マジでキレる5秒前の略語であるが、本文では、広末涼子の名曲「MajiでKoiする5秒前」の略として使わせていただいている。
*3「チョバチョブ」超バッド超ブルーの略語です。おそらくポップな絶望。
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レイオス
1982年生まれ。さすらいのシングルファザー。