〜1990 僕はその頃10代で 〜  vol.3「プリクラの呪縛」 文・レイオス

〜1990  僕はその頃10代で 〜  vol.3「プリクラの呪縛」 文・レイオス

本とお酒が大好きなレイオス、35歳(♂)。90年代に流行った言葉、事象をモチーフにした連載です。


「ずっと一緒にいようって言ってくれたじゃない」

高1の夏、渡り廊下。僕は生まれて初めて女の子にビンタをされた。走り去る彼女の背中を呆然と眺めながら、僕は守れない約束なんてするもんじゃないと、思ったとか、思わなかったとか。っていうか、ああいうのって約束なの?だってさ、高1だよ。

女の子にかける甘い言葉ほぼ、ドラマから丸パクリだもん。気分はキムタクだもん。大人の恋愛ドラマの台詞を高校生が言っちゃうんだから、そりゃ荷が重い。重いから余計に軽くなるという恋のカオス。キスする時、とりあえず女の子のあごクイって持っちゃうし、そのくせ唇に力入りすぎて、多分見た目、干し梅みたいになっちゃってる。だけど、とにかく何もかも押し付けまくる。引いてみたほうがいいのは知識としては知ってます。知ってるからって、やれる訳じゃない。だって、たまらなかったんです。あれやこれやが体内脳内ほとばしりまくってるんです。出ちゃったんです。その出ちゃったやつ、大人になってから見てごらんなさい。すごい声出ますよ。
じゃーんプリクラ。

地元に帰ると、気のきかない友達が後生大事に持ってたりするやつ。「ねえ、俺あげたっけ?」「いや、お前の元カノにもらったよ」マジで勘弁してください。アナコンダみたいなマフラーを二人で1つ巻いたりしちゃって、それ、自転車の車輪に巻き込まれて危ないらしいですよ。しかも、なんかモコモコした丸文字で「ずーっといっしょ」とか書いちゃって。いや、まあ撮っちゃったんだからしょうがない。だけど、交換するじゃん。そうすると、二人きりの気分で書いたことが、宣言になっちゃう訳です。訴えられたら負けるかもしれません。プリクラ裁判開廷です。「この大竹伸朗さんのスクラップみたいなパカパカ鏡のここに写ってるの、あなたですよね?」「はい」「ここに、ずっと一緒って書いてますよね?」「いや、僕が書いたんじゃなくて…」「だけど、あなたはそれを容認したんですよね?」「そうですけど、高1だったんです」「若かったら何言ってもいいわけじゃありませんよ」はい、負けー。

しかも、その鏡の中の誰かが、アイドルにでもなった途端、BUBKA載りますよ。ましてやキスなんかしちゃってたもんなら、たかが、シール1枚でアイドル生命の危機ですよ。唇と唇の所にハートマークのスタンプ押しちゃって、1ヶ月記念日とか書いちゃって、眉毛細すぎたり、元ヤンだったのばれたりで、SNS大荒れですよ。怖っ。

まあ、僕らの時代のプリクラはまだいい。今のバージョンはもう、訳わかめ意味とろろ。いくら格好つけてみたところで、目でっかくなっちゃうし、ほっぺの辺りうっすらピンクになっちゃうし。アイドルになる予定のある人と、ダンディになる予定のある人は、絶対に撮っちゃ駄目ですよ。それでも、どうしても撮りたかったら、親と撮りなさい。そして、僕の昔のプリクラ持ってる人、捨てなさい。いや、捨ててください。

Profile

レイオス れいおす

1982年生まれ。さすらいのシングルファザー。

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