虎屋に菓子の資料室「虎屋文庫」があることをご存じだろうか?1年前にリニューアルオープンした虎屋赤坂店内にある虎屋赤坂ギャラリーで企画展が4年ぶりに開催されている。
虎屋がおくる、ぜんぶ羊羹の展示!再開御礼!「虎屋文庫の羊羹・YOKAN」展
展示風景
テーマは羊羹。虎屋といえば羊羹といわれるほどのこのお菓子に注目し、その起源や歴史、現在のパッケージから新たなアレンジ方法まで、さまざまな羊羹の魅力を紹介している。
羊肉の汁物(再現)。こんなふうに、もともとは料理だった。
そもそも、羊羹とは中国から伝わったもの。中国の料理、羊肉の汁物だった。鎌倉~室町時代に中国に留学した禅僧らによって日本にもたらされ、小豆や小麦粉などを使って羊肉に見立てた精進料理の汁物となり、やがて甘い菓子に。そこからさらに、蒸羊羹、水羊羹、煉羊羹、と菓子としての種類が増えていった。まさか、羊羹の羊がそのまま「ひつじ」の意味だったとは…。展示では、各時代の羊羹を再現展示し、変化の歴史をわかりやすく紹介している。
300年以上前の羊羹の絵図(元禄8 年(1695)「御菓子之畫圖(おかしのえず)」)も展示。右から4番目が羊羹。四角くないことに驚く。ポップな色使いやグラフィカルな表現がとてもおしゃれ。
「瞑想的」な羊羹と題されたコーナーには、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に登場した羊羹のシーンが再現されている。谷崎は、羊羹を「玉(ぎょく)のように半透明に曇った肌が、奥の方まで日の光を吸い取って夢みる如きほの明るさを啣(ふく)んでいる感じ、(中略)あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる」と評している。暗闇の中に鈍く光を反射する羊羹の妖艶さ?とでもいうような魅力に注目だ。
パッケージの展示風景。
虎屋の歴代パッケージが集合したコーナーも圧巻。おなじみの竹皮包の羊羹をはじめ 、 昭和5年(1930)誕生の小形羊羹、 戦後、輸出用として作られた缶詰羊羹、昭和40年代当時、最先端の素材だったプラスチックのケースなど 、時代の文化、流行を映す鏡ともいえるパッケージが並ぶ。最近の小さなサイズの小形羊羹の絵柄も勢ぞろいでかわいい。
また、海外に向けての取り組みが紹介されているのも面白い。かつてニューヨークにあった虎屋の喫茶の人気メニュー、羊羹サンドイッチの作り方ビデオも楽しい。食パンに、クリームチーズを塗り、ピーラーで薄くスライスした羊羹を挟むというもの。あまじょっぱいでおいしいに決まってる…と想像してしまった。
展示風景
最後のコーナーには、羊羹にまつわるさまざまな情報が満載。羊羹のキャラクター(江戸時代からあった)や、「羊羹パン」といった羊羹を使ったローカルフードなど、見ているだけで楽しい。
羊羹愛にあふれたこの展示、見た後は2階のショップで羊羹を買いたくなること必至。赤坂店では期間中、和菓子にまつわる書籍などもセレクトされていたり、オリジナルグッズがあったりと、こちらも充実しているのでぜひチェックを。