【TOP画像】グレゴール・シュナイダー《美術館の終焉―12の道行き》第3留:旧兵庫県立健康生活科学研究所《消えた現実》内部
あまり知らない街で何かを体験すると、その記憶は、その街のイメージとして残ってしまう。まるでその街がその記憶と同じものであるかのように。そんな体験を、神戸で開催されているアート・プロジェクトKOBE 2019: TRANS- のグレゴール・シュナイダーによる大規模な展示で体験した。
グレゴール・シュナイダーは、実際に人が入れる空間を作り(あるいは既存の空間を利用して)、時空がねじれたような非現実な体験を促す(それは往々にして恐怖を呼び覚ます…)、稀有なアーティストだ。これまでも、ヴェネチア・ビエンナーレや、ミュンスター彫刻プロジェクトなどで発表した、鑑賞者自身が空間をめぐっていく作品が高い評価をうけてきた。
グレゴール・シュナイダー《美術館の終焉―12の道行き》第8留:神戸市立兵庫荘《住居の暗部》写真:表恒匡
そのシュナイダーの大規模な展示が、神戸で開催されている。《美術館の終焉―12の道行き》と題されたこの作品で、鑑賞者は、神戸の街に点在する場所(第1留~第12留)をめぐっていく。全部で12ある会場は、地下鉄やレンタサイクルで回れる。とはいえ一度にめぐろうとすると、半日~1日がかりとなる。全貌は見てのお楽しみということで、ここでは印象的だった部分についてのみレポートしようと思う。
グレゴール・シュナイダー《美術館の終焉―12の道行き》第2留:デュオドーム《ドッペルゲンガー》写真:表恒匡
スタート地点はJR神戸駅近くの広場だ。人が行き交う中、舞台装置にも見える設えの中にスクリーンがあり、人が映っている。手を振ると振りかえしてくれたりして、どうやらリアルタイムでつながっていることがわかる。このシーンに、その後不思議な歪みをもって再開することになるとは。この時点ではつゆ知らず、である。