VJ山田健人が選ぶ、いま見ておくべきビジュアル作品

一生見ても見きれない、日々アップロードされる大量の動画とイメージ。プレイリストの大波や自動再生地獄(!)に飲み込まれる前に、今チェックすべきビジュアルを教えて!ということで今回は海外でも注目を集めている、映像作家の山田健人さんにインタビュー。

「大量に浴びることで見えてくる気づきもあるので、映画とMVはできるだけ選り好みせず見ています。去年は世界的にVHSやフィルムなどのアナログな質感の流行があり、最近は実写とCGを組み合わせる方向にシフトしているのかなと。AppleのHomePodのCMは『実写?CG?』と見る人を惑わせて引き込む画作りのバランス感が絶妙。過去作へのセルフオマージュも込めつつ2018年版にアップデートされていて、最終的に商品のことを忘れてしまう(笑)ほど圧倒的という。スターディレクターとアーティストがアップルと組んだ新作長編CM、というだけで長年のファンとしてうれしいですよね。4分と長編ですがスパイク・ジョーンズが出てきた90年代と比較すると、web上でたくさんの動画を楽しめるようになり、CMもTVに合わせて15秒である必要がなくなったこともクリエイティブの自由度を広げたと思います」

25歳、デジタルネイティブ世代である山田さんの最初のクリエイティブはどんなものだったのだろう。

「中学生でLinuxプログラミングをするようになり、CG制作から映像に入ったので、実は20歳までカメラを持ったことがなかったんです。高校生の頃には大岡山のピークワンというライブハウスに行くようになり、Suchmosの前身バンドや、yahyelのメンバーともそこで出会い、VJを始める形で映像のキャリアがスタートしました」

もちろん、SNSで海外の写真家や映像監督をフォローしてビジュアル情報を目に入れている。

「前情報もなく、遠く離れた場所で作られた“知らない”絵を見る機会がSNSのおかげで爆発的に増えましたよね。光と構図の美しさで不思議と印象に残ったAna Cubaの作品との出会いもインスタグラムのフィード上でした。どんな表現においても、どうやって作られているんだろう?と好奇心を煽るビジュアルに惹かれます。人の想像力を信じているので、自分の表現でも説明的なのはNG。作品に奥行きを感じてもらえるように意識しています」

[Water, 2018]
Moe Nakase

water 中瀬萌
instagram: @moe0814n

[On Healing Faith]
Ana Cuba

faith anacuba
instagram: @ana__cuba

想像する奥行きを感じさせる2つの平面作品。同世代のアーティスト中瀬萌のアブストラクトなペインティングをまずセレクト。9月には六本木CLEAR EDITION & GALLERYで個展が開催予定。ロンドンをベースに活動するフォトグラファーAna Cubaの作品はLVMHグループが運営するデジタルメディア「NOWNESS」のインスタグラムアカウントで見かけピックアップしたそう。

「If The Car Beside You Moves Ahead」 (Official Video)
James Blake

 

HomePod —Welcome Home by Spike Jonze— Apple

「HomePodのFKA twigsの表現力もすごいですが、James BlakeのMVはまず音楽そのものが完全に次の次元の新しさ。映像もバランス良く撮っているだけのように見えますが、光の線が伸びて音にリンクする仕上げで音と視覚が緩やかにリンクしています。車を使った映像で、この視点は今までになかったので驚きましたね」

山田健人 やまだ・けんと

映像作家、VJ。1992年生まれ。東京都出身。独学で映像を学び、dutch_tokyo名義で2015年より映像作品を制作。VJとして参加するyahyelの最新アルバム『Human』が3月にリリース。

Text: Aguri Kawashima

GINZA2018年5月号掲載