11 Apr 2017
ティファニーが協賛する現代アートの祭典 “ホイットニー・ビエンナーレ2017”が開幕! アートライター工藤キキのレポート

工藤キキ(くどう・きき)
アーティスト/ライター。NY在。日本の雑誌への執筆の傍ら、アートフードプロジェクト @chisonycとしても活動している。
“Downtown America”という新しい潮流
ニュー ヨークは人種の坩堝(るつぼ)と言われているけど、アップタウン、ミッドタウン、ダウンタウンとエリア別にまったく違ったカルチャーが根付いているだけ に、2015年にアッパーイーストサイドからダウンタウン/ミートパッキンディストリクトへと大胆にロケーションを移したWhitney Museum of American Artがポップで挑戦的なダウンタウン・メンタリティへとトランスフォームするのは当然のこと。“現在”のアメリカンアートを2年おきに紹介している Whitney Biennialが、新天地ダウンタウンへ移転後の初開催となる2017年。今回からティファニーがメインスポンサーとして向こう3回、2021年のビエンナーレまでサポートすることを発表。メインキュレーターとしてMoMA PS1のシニアキュレーターだったMia LocksとChristopher Y. Lewという新進気鋭のふたりが抜擢され、構想約1年半とはいえタイムリーでフレッシュなダウンタウンアートのニューリアリティを体感する絶好の機会を 作った。
フリーダムであるはずのニューヨークシティでさえ政権交代後のアメリカの鬱屈したムードに圧されているけど、一方でダウン タウンのアーティストを中心としたアートプロテストのグループ“Dear Ivanka”が発足したり、政権交代後にたびたび起きているプロテスト行動に多くのアーティストが参加したのを目にした。63のプロジェクトからなる今回の Whitney Biennialも、Occupy Wall Street(懐かしい!)から派生したOccupy Museumsや人種やクラス、ジェンダーそして国境、「ヒューマニティとは?」を問いかけるポリティカルな作品が多い。そしてダウンタウンアートにさま ざまなアングルから着目し、モード界でも大きな存在感を放っているNYのストリートブランド〈Hood By Air〉のCEOでもあるLeilah WeinraubがHBA以前から制作していたレズビアンのダンスドキュメンタリーフィルム“SHAKEDOWN”なども選出するなど、まさに近年のダウ ンタウンの流れもビシビシ感じさせるセレクション。キュレーションアドバイザーとしてLAのインディペンデント・アートストアのOoga BoogaのディレクターであるWendy Yaoが名を連ねることでウエストコーストのダウンタウンアートもおさえている。今回の見所のひとつが、ハドソン川を見下ろすSamara Goldenによるインスタレーション。万華鏡のように映る鏡のリフレクションを操り、アッパーイーストサイドあたりのファンシーなリビングルームからプ リズン、ハイエンドな病院にホームレスといったデストピアなアメリカの今を“逆さまの世界”で映しだした。
イマジナリーワールドとリアルワールドが交差する新しいポリティカルアートのニューチャプターともいえる、“Downtown America”という新しいアートのプラットホームを作り上げた刺激的な展覧会になっている。
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Featured Artists
Susan Cianciolo
ファッションデザイナーとしておなじみのスーザン・チャンチオロのアートプロジェクトも再び熱い。“RUN RESTAURANT UNTITLED”と題し、4/18, 19に館内のレストランUNTITLEDとコラボレーションをする。
Susan Cianciolo, Untitled, 2000. Watercolor on paper, 24 x 18 in. (61 x 45.7 cm). Courtesy the artist and Bridget Donahue, New York
Samara Golden
もっとも設営に時間がかかった作品と言われる、鏡の反射と逆さま展示で6次元の世界を作り出す、サマラ・ゴールデン。直しがきかない中、綿密なプランでさまざまなシチュエーションの“逆さまの世界”を作り上げた。
Installation view of Samara Golden, The Meat Grinder’s Iron Clothes, 2017. Whitney Biennial 2017, Whitney Museum of American Art, New York, March 13-June 11, 2017. Photograph by Matthew Carasella.
Jessi Reaves
Gavin Brown’s Enterpriseの看板ディレクターだったBridget Donahueによるチャイナタウンの新ギャラリーでデビューした若手のジェシー・リーブスが生み出す彫刻のようであり実用性もあるフェティッシュなファニチャーは要注目。
Jessi Reaves, Idol of the Hares, 2014. Oak, polyurethane foam, silk, cotton, aluminum, and ink, 38 × 28 x 48 in. (96.5 × 71.1 × 121.9 cm). Courtesy the artist and Bridget Donahue, New York
Anicka Yi
昨年、革新的なアーティストに与えられるヒューゴ・ボス賞を受賞したアニカ・イ。バイオテクノロジーを使い五感を刺激するユニークな作品を手がけている。メディカルプランツのリサーチにアマゾンへと行く3Dフィルムは必見。
Anicka Yi, still from The Flavor Genome, 2016. 3D high-definition video, color, sound; 22 min. Collection of the artist; courtesy the artist and 47 Canal, New York
Leilah Weinraub レイラ・ウェインラウブがHBAスタート以前の2010年から取り組んでいる、LAのブラックレズビアンストリッパーズのドキュメンタリーフルムがホイットニー・ビエンナーレで公開! まさにダウンタウンを体現している作品のひとつ。
Leilah Weinraub, still from SHAKEDOWN, 2017. Digital video, color, sound; runtime unknown. Courtesy the artist
ティファニーと出展アーティストが
コラボ作品を発表。
2017年よりホイットニー・ビエンナーレのスポンサーとなったティファニー。今回のスペシャルプロジェクトとして、5名のビエンナーレアーティストがティファニーの職人たちとのコラボレーション作品を発表。NY本店とホイットニー美術館で限定発売中。ティファニーが誇る熟練の技術とアーティストたちによる大胆不敵な発想が交差する。
Ajay Kurian
屋内階段に展示されたミュータントキッズの彫刻が話題のアジェイ・クリアンはティファニーの職人による立体蛍光表示という特殊な技法で、スターリングシルバー名刺ケースに“PSYCHO”の文字を浮かびあがらせた。
Carrie Moyer
カラフルな切り絵のコラージュやポップなフォルムのペインティングで知られるキャリー・モイヤー。コラボレーターの中で唯一“ティファニーといえば”のシルバーアクセサリー〈スターリングシルバーペンダント〉を制作。
Harold Mendez
コロンブス以前のデスマスクにヒントを得て、スターリングシルバーでマスク的なベッセルを制作したハロルド・メンデス。ティファニーのホローウェア工房で特殊な溶接をし、顔の形を浮き彫りにしたスペシャルな作品。
Raúl de Nieves
神々しくもポップなステンドグラスの作品が話題のメキシコ出身のラウール・デ・ニエベスとのコラボ作品は、彼のペインティングをティファニーの刻印職人が熟練の技で精巧に手彫りした〈スターリングシルバーボックス〉。
Installation view of Raúl De Nieves, beginning & the end neither & the otherwise betwixt & between the end is the beginning & the end, 2016. Whitney Biennial 2017, Whitney Museum of American Art, New York, March 13-June 11, 2017. Collection of the artist; courtesy Company Gallery, New York. Photograph by Matthew Carasella.
Shara Hughes
色鮮やかで伸びやかなペインティングを描く若手ペインターのシャラ・ヒューズは、ティファニーの陶器部門とコラボレーション。美しい白磁のボーンチャイナピッチャーに大胆にカラフルにハンドペイント。
Text:Kiki kudo
特設インスタ @tiffany_art_ginzamag でもGI
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