“世界一有名なクマ”が愛され続ける理由はどこに?イギリスV&Aから「クマのプーさん展」が渋谷にやってきた!

“世界一有名なクマ”が愛され続ける理由はどこに?イギリスV&Aから「クマのプーさん展」が渋谷にやってきた!

“世界一有名なクマ”といわれる「クマのプーさん」。まるいおしりやおなかを見るだけで、顔がほころんでしまう。これだけ長い間、子どもから大人まで世代を超えて魅了し続けているのはなぜだろう。

クマのプーさん展 渋谷
「枝には、ハチミツのつぼが10ならんでいて、そのまんなかに、プーが…」、『クマのプーさん』第9章、E.H.シェパード、ラインブロックプリント・手彩色、1970年 英国エグモント社所蔵 © E.H. Shepard colouring 1970 and 1973 © Ernest H. Shepard and Egmont UK Limited

昨年はディズニーによるプーさんの映画も公開されたり、何かとプーさんが話題の今日この頃。今回の展覧会では、『クマのプーさん』の挿絵を手がけたアーネスト・ハワード・シェパードによる原画や資料を世界最大規模で所蔵するイギリスのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館のコレクションを中心に、200点を超える展示品によって“オリジナル”がたっぷり堪能できる構成となっている。

クマのプーさん展 渋谷
「ながいあいだ、三人はだまって、下を流れてゆく川をながめていました」、『プー横丁にたった家』第6章、E.H.シェパード、鉛筆画、1928年、 ジェームス・デュボース・コレクション © The Shepard Trust

『クマのプーさん』に登場する男の子、クリストファー・ロビンは、作者であるアラン・アレクサンダー・ミルンの一人息子がモデル。彼のお気に入りがクマのぬいぐるみで、これがプーさんのモデルとなった。イーヨーやコブタ、トラーなど他に出てくるキャラクターも、同じく彼のおもちゃがモデルとなっている。それを魅力的に描き出したのが、挿絵画家のアーネスト・ハワード・シェパードだ。

クマのプーさん展 渋谷
百町森の地図、『クマのプーさん』見返し用のスケッチ、E.H.シェパード、鉛筆画、 1926 年、V&A 所蔵  © The Shepard Trust. Image courtesy of the Victoria and Albert Museum, London

そして、クリストファー・ロビンが夢中になったのが、物語の舞台となる「百町森」。実際は「アッシュダウンの森」という週末を過ごしていた家の近くにある森だった。そこを来る日も来る日も探検し、家族に話す息子の姿から、物語は膨らんでいった。物語の中で、この探検は「てんけん」と訳されている。原文はexposition。これは探検を意味するexpeditionの間違い。 それを翻訳者の石井桃子は、探検→てんけんと訳した。なんとチャーミングな訳し方!
ちなみに、本作にはこういう言葉遊びが各所に散りばめられている。

クマのプーさん展 渋谷
『クマのプーさん』初版本、1926年; メシュエン社によりロンドンにて出版; ジャロルド&サンズ社印刷、V&A内ナショナル・アート図書館所蔵 © Image courtesy of the Victoria and Albert Museum, London

プーさんはやさしくて礼儀正しく、とにかく食いしん坊。そのせいで意図せずトラブルに見舞われることもしばしば。おっとりしてるし、実物のクマとは程遠い性格。他のキャラクターたちも個性豊かで、それがバランスの良いチーム感を生み出している。

クマのプーさん展 渋谷
「プーとコブタが、狩りに出て…」、『クマのプーさん』第3章、E.H.シェパード、ペン画、1926年、クライブ&アリソン・ビーチャム・コレクション © The Shepard Trust

森で一番のしっかり者が「なにもしないでいることが好き」な、子どものクリストファー・ロビンなのだから、現実的にはなかなか頼りないチームかもしれない。けれど、何よりこの児童書の魅力はそういった余白にあるように思う。誰でも子ども時代に過ごすような、なんてことのない日常の延長にあるストーリー。噛み合ってるのか噛み合っていないのかわからない絶妙な会話。そこからにじみ出るのは、プーさんの言葉がどんなふうにでも読み取れるということだ。ときに思慮深いプーさんの言葉は、去年の映画でも「哲学的だ」と話題になっていたくらい。実は、原画も描き込みのない余白が多いことが特徴なんだそう。少ない線でも、それぞれの太さが違ったり、いろいろな表情を見せる線を置くことで、読者の想像力はどんどん広がっていく。

クマのプーさん展 渋谷
「プーを穴からひっぱり出す」、『クマのプーさん』第2章、E.H.シェパード、鉛筆画、1926年、V&A所蔵 © The Shepard Trust. Image courtesy of the Victoria and Albert Museum, London

せかせか目先のミッションをこなす日々、実は見えていないものや聞こえていない音もすごく多い。深呼吸して日常を見直せば、おもしろい発見があったり、気分も簡単にリセットできたりする。プーさんの絶妙な余白は、そういう想像力を促してくれる入口。その先に思い浮かべる景色は人それぞれだろう。展覧会に行って、あなたなりの100エーカーの森へと出かけてほしい。

 

クマのプーさん展
会期: 4月14日(日)まで開催中
会場: Bunkamura ザ・ミュージアム
住所: 〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂 2-24-1 Bunkamura B1F

休館日: 2019年3月12日(火)
開館時間: 10時 ~18時 毎週金・土曜日は21時まで(入館は各閉館時間の30分前まで)
*東京での開催後、大阪に巡回。こちらは2019年4月27日(土)~6月30日(日)あべのハルカス美術館で開催。

柴原聡子

建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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