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「どう感じる?」ティルマンスが表すこの世界、人とのつながり。ヴォルフガング・ティルマンス個展

「どう感じる?」ティルマンスが表すこの世界、人とのつながり。ヴォルフガング・ティルマンス個展

Clipped Tulip, 2020
© Wolfgang Tillmans, courtesy WAKO WORKS OF ART


六本木のギャラリー、ワコウ・ワークス・オブ・アートで、ヴォルフガング・ティルマンスによる個展『How does it feel?』が開催されている。最新の写真作品を中心に構成した壁面インスタレーションのほか、映像作品が楽しめる。

90年代、ロンドン、ベルリン、NYを拠点としながら身近な友人たちやカルチャー・シーンをカメラに収め、一世を風靡したヴォルフガング・ティルマンス。ユースカルチャーを体現した若者の日常、まるで自分の部屋のようにプリントをそのまま壁にピンナップするインスタレーションは、その展示手法も含めて、美術や写真界に大きな変化をもたらした。2000年にターナー賞を受賞した後も、写真を主軸としながらサウンドや映像など表現手段を継続的に増やし、近年は社会問題にも積極的に関わっている。

ヴォルフガング・ティルマンス個展 六本木のギャラリー、ワコウ・ワークス・オブ・アート
Walk, 2017年
© Wolfgang Tillmans, courtesy WAKO WORKS OF ART

インスタグラムはもちろん、世界中ほとんどの人が自ら日常を撮影しシェアするようになった今、ティルマンスの写真はそれを先取りしていたともいえる。ただ、その手法は簡単に真似できるようで、やってみるとまったく違うことに気づかされる。彼の作品には、それぞれの写真にある日常的な風景を通して、画面の外側、この広大な世界そのものへと鑑賞者の意識を向かわせる力があるのだ。

ヴォルフガング・ティルマンス個展 六本木のギャラリー、ワコウ・ワークス・オブ・アート
Silver PCR 2, 2009年
© Wolfgang Tillmans, courtesy WAKO WORKS OF ART

今回の展示のメインとなるのは、旧作から最新作までさまざまな時期に制作された写真作品と、雑誌のページが混ざった壁面インスタレーション。写真作品のサイズは多様で、メディウムもCプリントとインクジェットプリントが混在し、額入り、額無しの両方で展開している。モチーフも、ポートレイト、風景、抽象、静物などの多様。それらは、一見ありふれた日常の一場面のようでありながら、すべてが不思議な、言葉では分析しきれない輝きを放っている。

ヴォルフガング・ティルマンス個展 六本木のギャラリー、ワコウ・ワークス・オブ・アート
crossing the international date line, 2020年
© Wolfgang Tillmans, courtesy WAKO WORKS OF ART

小さな作品が散りばめられた壁面の一方で、大型の写真作品も見逃せない。その1点《crossing the international date line》(2020)は、国際線の機上で日付変更線を越える際に撮影された空の写真。縦2.4メートルの額無しのプリントには、最新のデジタルカメラを用いても尚あらわれる認識の境界が写し出されている。現代の高感度センサー技術の限界点を示す無数のドットは、最新テクノロジーゆえに生じるノイズだ。それらが空に浮かぶ星とまじりあうことで、ミクロとマクロが混ざり合う、独特の美しさが生まれている。優しいノイズとも呼びたくなるその表現は、ティルマンスが一貫して対象にそそぐ慈しみともつながるのかもしれない。

ヴォルフガング・ティルマンス個展 六本木のギャラリー、ワコウ・ワークス・オブ・アート
Wellenberg, 2017年
© Wolfgang Tillmans, courtesy WAKO WORKS OF ART

ノスタルジーに興味はないと語り、強い好奇心と冒険心をあらわにしてテクノロジーやメディウムの変化に対峙し続けることをやめないティルマンス。愛する人々とともにイメージの奔流にもまれながら続ける彼の創造活動は、この世界の「いま」を、アクチュアルに表現している。『How does it feel?』(どう感じる?)と、語りかけてくる本展のタイトルは、絶えず人とつながろうとし、他者の存在とその視点を愛おしみ、制作の糧としてきたアーティストの本質=opennessを象徴している。分断が進む社会のなかで、その眼差しは、通奏低音のようにノイズが流れるこの世界の豊かさを、それらへと意識を拓いていくことの大切さを、ゆるやかに伝えてくれる。

Wolfgang Tillmans ヴォルフガング・ティルマンス

1968年ドイツ・レムシャイト生まれ、ベルリン在住。大学でデザインを学んだ後、ロンドン、NY、ベルリンに移り住む。1980年代から雑誌『i-D』等の媒体で作品の発表をおこない、1993年にドイツのギャラリーでの個展を皮切りに現代美術作家としての活動を開始。2000年ターナー賞受賞。各国の主要な美術館で個展を開催しながら活動を続けている。近年の主な個展には、セラルヴェス現代美術館(2016 ポルトガル)、バイエラー財団美術館(2016 スイス)、アイルランド現代美術館(2017 アイルランド)、テート・モダン(2017 英国)、WIELS(2020 ベルギー) などがある。2018年からはアフリカ大陸での初個展『Fragile』がコンゴ、南アフリカ、エチオピアを巡回した。日本では2004年に東京のオペラシティ・ギャラリー、2015年に大阪の国立国際美術館で大規模な個展を開催している。近年はポスターを通じた社会的な活動や音楽活動への参加も盛ん。

【ヴォルフガング・ティルマンス「How does it feel?」】

会場: 「ワコウ・ワークス・オブ・アート」 
住所: 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F
会期: 
開催中~2020年12月19日(土)

時間:  11:00~17:00
休館日: 日、月、祝
*専用サイトからの事前予約制。
*入場直前までサイトからの予約が可能です。メールでの予約は受け付けておりませんのでご注意ください。

公式ホームページ
予約ページ

柴原聡子

建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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