10年代音楽シーンをリードするロックバンドとして注目を集めるYogee New Waves。彼らの暮らしと音楽とは。フロントマン・角舘健悟の住む街を訪ねた。
Yogee New Waves 角舘健悟の暮らす街 彼らの暮らしと音楽とは
2013年6月結成。現在のメンバーは角舘健悟(Gt&Vo)、粕谷哲司(Dr)、竹村郁哉(Gt)、上野恒星(Ba)の4名。
Yogee New Waves角舘健悟が、この閑静な住宅街に越してきたのは昨年12月のこと。2ndアルバム『WAVES』のレコーディングを前に、音楽に集中できる環境に身を置きたかったのだという。
「最近は外に出てないですね(笑)。スタジオと家の往復。あとは喫茶店に行ったりするぐらい。大体、漫画読んだり、曲作ったりしてます」
14年に1stアルバム『PARAISO』をリリースし、新世代シティポップシーンの旗手として喧伝され、注目を集めた彼ら。15年には『SUNSET TOWN e.p.』を発表。しかしメンバーの脱退・加入もあり、アルバム制作に取り掛かるまでにはさらに2年の歳月を要した。
「自分たちはライフスタイルを大事にしているから、焦って作品を作ることはしたくなかったんです」
昨年末、新作の準備のため「トイレの時しか1人の時間がなかった」というほど禁欲的な合宿を決行。その甲斐もあり結束は高まったそうだ。
かくして完成した『WAVES』は、ロックンロールの初期衝動とロマンティシズムにあふれた傑作だ。ポップでありながら、大切な恋人や友達からの手紙のようにどこまでも親密で優しい。
「ライヴで『Fantasic Show』って曲の時に演奏なんか気にせず、フロアの真ん中で見つめあってるカップルがいたんです。〝美しいなぁ、これが音楽だよな〟って思って」
そう、彼らの音楽は現実を変容させる。そこは花びらが舞い散り、求めるものには与えられる世界だ―日々の暮らしに保証のない今という時代だからこそ、余計に『WAVES』は聴く人の心に響く。
「僕は人のエモーションを動かしたいだけなんです。愛を信じているって歌いたい。剣も盾も持たずに感情をさらけ出すことこそが今、世界と戦うための一番有効な手段だと思うから」
ニヒルに構えざるを得ない毎日の中にあっても、本当は誰もが生きることは美しいと信じたい。Yogee New Wavesは冷笑に慣れた僕らの頬を緩ませ、愛を歌う勇気と微笑みを与えてくれる。
最近はシカゴの女性ラッパー・NO NAMEを好んで聴いているという角舘。「ひとりぼっちで歌ってる感じがいい」とのこと。
Yogee New Waves 『WAVES』
Roman Label / BAYON PRODUCTION
5月17日に発売されたばかりのニューアルバム。約2年半振りのリリースだけあり、角舘曰く「怨念と愛情」が詰まっているとのこと。
Photo: Ryo Hanabusa
Text: Jin Otabe
Edit: Shun Sato, Akira Takamiya
Artwork: Tondabayashi Ran