28 Mar 2020
自分の世界を広げる、読みもの案内。〈kotohayokozawa〉デザイナー・横澤琴葉さん「人生のスタイリングに役立つ3冊」

気がつけば、同じジャンルの本ばかり手にとっていませんか?普段、触手を伸ばさないジャンルの知識や考えを深められる読みもの(小説、漫画、WEBサイトetc..)を、その道に詳しい方に伺います。〈kotohayokozawa〉デザイナーの横澤琴葉さんには、ただの「ファッション」という概念を超え、「人生のスタイリング」に役立つ本を教えてもらいました。
横澤琴葉/〈kotohayokozawa〉デザイナー
@kotohayokozawa
〈kotohayokozawa〉 というファッションブランドを運営しています。愛おしい生活感とモードが共存しているようなファッションが大好きです。趣味はテレビとラジオ、リサイクルショップをめぐること、ファミレスで仕事すること。最近は、大好きな〈クレアーズ〉が日本撤退と知り、ピアスコレクターとして大変ショックを受けたところです。
今回、ファッションというくくりで3冊ご紹介させていただきますが、ネットで「ファッション 書籍」などで調べればいくらでも過去の名著に出会うことができるので、何も私が紹介することはないと思い、超個人的な視点からセレクトさせていただきました。ですので最初にお伝えしておきますが、ほぼファッションの本ではないです。なぜなら、ファッションとは外見のことだけを意味する言葉ではありません。むしろ自分の内面の、隠しても隠しきれないものが滲み出ることこそ、ファッションだと感じているからです。
自分の内面や振る舞い、生き方を自分で選択していくことは「人生のスタイリング」です。はちゃめちゃに暴走する女性像や、お金や働くことに対する新しい価値観、さらにその先に菌や微生物さえ人の思考や振る舞いに影響しているかも……といった、ファッションの外側からファッション的な側面へつながる読みものをセレクトしました。人生のスタイリングに役立つ3冊をご紹介いたします。
1.『日本のヤバい女の子』はらだ有紗
(柏書房)
皆さんは、根拠のない強い衝動に駆られたことはありませんか?「何にも不満はないけれど今すぐここから逃げ出したい。」「いいところが一つも見つからないけれどこの人が好き。」とかね。でも、それでいいんだなと思わせてくれる本です。この本は昔話に出てくる女の子たちを、著者のはらださんが現代に生きる女性としての視点から読み解いてくれる本です。世の中には見えないルールや常識が多すぎて本当にしんどいなって思います。それはいまも昔も変わらなくて、一人一人の抵抗や反動のエネルギーが積み重なって現代に私たちが生きているのだなと思えます。
19SSコレクションを準備していた頃、この本が私を支えてくれました。みんなヤバくて、みんないい。日本の、世界中の女の子よ、どうかそのまま命尽きるまで(尽きても)、あなたのその魅力でみんなを惑わせ続けましょう。
2.『バイトやめる学校』山下陽光
(タバブックス)
世間は不安な状況が続いていますね。何に従えばいいかわからないので何にも従わず、自分で動き出さなければ生きていけないんじゃないかとすら思えてきます。じゃあ、あなたは何やるの?何が好きなの?何をして生きていくの?本当に大丈夫かよ?最初の数ページ読むだけで脳天ガツンと叩かれます。超便利でなんでも手に入る世の中、溢れる情報を逆手にとって自分だけの働き方を見つけようではないか。だけど悲しいかな、知恵を絞って考えて(これは割とみんなできる)、体を使って行動した人(これが実は超難しい)だけがバイトをやめられます。
ものすごい早さで過ぎていく現代の流れにめちゃくちゃ逆走しているように見える、リメイクファッションブランド〈途中でやめる〉デザイナ―の山下さんの生き様は、逆から回ってもう少しで現代とぶつかるような気がします。本の中に「新しい経済圏」というワードが登場するのですが、これが本当にこれからの時代を生きていく私たちのキーワードなのではないかと思います。これからのファッションでの生き方について考えさせられる本です。
3.『あなたの体は9割が細菌』アランナコリン
(河出書房新社)
近いうちに必ずや腸内をスタイリングする時代がやってきます!これは自信をもって言えます!これまでの2冊は衝動で自分を突き動かしていく本でしたが、その衝動の源ってのは、腸内細菌も少なからず影響しているのではないか?というようなことが書かれています。友達に突然ファミレスに呼び出されてこんなこと言われたら、次の瞬間には水かサプリメント出てくるんじゃないか、って感じで私だったら逃げます。それくらいとんでもないことを言っているかもしれません。
でも、私たちは何事も自分の脳で考えて自分で選択をしていると思いがちですが、実はそういう訳でもなくて、体の中のとんでもない数の細胞や細菌が導き出した多数決の結果を遂行しているまでです。そう考えたらちょっと楽になりませんか?自分の直感って間違ってないのかもって思えてきませんか?死ななくたって、暮らす環境や食べるものを一新するだけで、軽く生まれ変わることだってできるんじゃないかって思えてきます。もっと先の、未来のファッションにもつながる話じゃないかなと思います。
横澤 琴葉
1991年生まれ。2015年3月より〈kotohayokozawa〉をスタート。「何でもない日々に収まりきれない気持ちを着る」というコンセプトを掲げ、感情と装いの密接な関係を探る。2018年より即興性を重視した一点を中心に展開するライン「todo」を立ち上げ、同年19SSコレクションより再利用品のみを使用したライン「somebody」も展開している。
instagram: @kotohayokozawa Twitter: @kotohayokozawa kotohayokozawa: HP
Edit: Ayumi Kinoshita