「わたし」を写す「レンズのような詩」。忙しなく日々を生きるたくさんの人たちの穴に向けて放たれた鍵のように刺さる言葉を綴る、詩人・最果タヒ。彼女の全43篇の詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が映画化されると聞いて、「はて、詩を映画にするとはどういうことなの?」と首をかしげた人も多いのではないだろうか。本作の脚本・監督を手がけるのは、これまで『川の底からこんにちは』(09)や『舟を編む』(13)、『ぼくたちの家族』(14)などを手がけてきた気鋭の石井裕也。彼は、最果タヒの詩に現代の若者を写し、オリジナルの物語として再構築させた。詩集という枠から抜け出した言葉の数々を、登場人物たちの生きた感情や東京の喧騒の中、そこかしこに散らばせていく。
息苦しい東京で共鳴する2人、美香と慎二を演じるのは、石橋凌を父に、原田美枝子を母に持ち、本作が主演デビューとなる石橋静河と若手実力派俳優・池松壮亮。ヒリヒリするほど純粋で不器用な彼らの姿はまさに、「どんなに因数分解したって理解を得られないだろうそんな感情が、その人をその人だけの存在にしている」(『夜空はいつでも最高密度の青色だ』より)という一文を体現しているように思えた。
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17)
看護師をしながらガールズバーでバイトをする美香(石橋静河)と、建設現場で日雇いとして働く慎二(池松壮亮)。漠然とした不安と孤独を抱える2人が偶然出会う。5月13日より新宿ピカデリーほか先行公開。5月27日より全国公開。
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