07 Mar 2023
広瀬すず×永瀬廉『夕暮れに、手をつなぐ』7話。去っていくのは空豆のほうだとばかり…別れの予感に手をつなぐ

広瀬すず×永瀬廉による青春ラブストーリー、『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS火曜よる10時〜)。“ミューズ”を見つけた浅葱空豆(広瀬すず)と海野音(永瀬廉)。順調に思えた二人の関係だが、思わぬ別れが訪れることに…。ドラマを愛するライター釣木文恵と漫画家オカヤイヅミが7話を振り返ります(レビューはネタバレを含みます)。6話のレビューはこちら。
成功がもたらした別れ
浅葱空豆(広瀬すず)と海野音(永瀬廉)、ふたりの共同生活がはじまってからというもの、急速に近づいていったかに思えた距離はある地点からなかなか縮まらなかった。さらには4話で音の「僕たちはやがてやってくる夏も一緒にいると思ってた」というナレーションがあったように、別れの予感がつねに漂っていた。
7話を見て、驚いた。いつかくる別れは、空豆が去っていくことで起こると思っていたからだ。空豆は、冴えない日々を過ごす音のもとにある日突然現れた。九州からやってきた彼女は、婚約者に振られてよりどころをなくし、はっきりとは定まらない日々を過ごし、見つけた夢の先でいきなり非凡な才能を発揮する。だから、この部屋から羽ばたいていくなら彼女のほうだとばかり思っていた。
実際7話でも、空豆は“ミューズ”であるセイラ(田辺桃子)のミュージックビデオ用の衣装を考案して周りの人たち総出で作り上げ、そのドレスが空豆が働くアンダーソニアのコレクションに加えられる。もう今にもパリに行きそうじゃないか、空豆。母親と同じようにたいせつな人を残して去ってしまうのか。
そんなふうに見ていた7話後半で、予想は裏切られた。セイラをミューズとして迎えた音のユニット・BPMのデビュー曲が爆ハネし、音の人生が大きく変わってしまうのだ。若い女性とひとつ屋根の下で暮らしていることが問題視され、事務所の用意したマンションに移ることに。空豆が「どこにも行かん」と信じていた音のほうが去ることで、二人の日々が終わってしまう。空豆はまた、置いていかれる側になってしまった。
「夕暮れに、手を」つないだ二人
音にプレゼントするため、母に置き去りにされたときの思い出であり、別れの象徴である菜の花の絵を描く空豆。もしかしたらこの家で二人だけでゆっくりと過ごすのは最後になるかもしれないその時間に、空豆は母に置いていかれたときの話をする。
「強くなりたい思っとると。なるべく笑おう思っとると。明日いいことあるって思っとっと。そしたら、音みたいな人に会えた」
愛の告白とはちょっと違うけれど、空豆が音をたいせつな人だと思っていることが充分伝わる言葉。音は「離れても 俺たち何も変わんない。俺も、俺たちの関係も」と空豆に言う。たしかにただ家が離れるだけだし、二人がしっかりとお互いの気持ちを確かめたら、ここからはじまるものもあるはずだ。けれど二人は最後まで核心を突かない。ただ未来の約束だけをして、ゆっくりと互いに手をのばして、その手をつなぐ。
「僕らは夕暮れに手をつないだ」「夏の花火を夢見ながら。でも 僕たちに夏は来なかったんだよな。二人の夏は なかったんだ」
音が「変わらない」と言った二人の関係は、どうやら変わってしまうらしい。ひとつの仕事に二人で取り組むのは理想的な関係に思えるけれど、磁石の同じ極が一定の距離から近づけないように、最後までくっつくことはできないのだろうか。
空豆を取り巻く人たちの思い
7話では、公園で音とセイラと待ち合わせした空豆が「何か……お似合い、二人」とつぶやいたときの音の表情が絶妙だった。複雑な思いを表していた。みんなでドレスづくりをしていたとき、空豆は音とセイラが二人だけでいなくなったことにもやもやしていたけれど、7話を見る限り、セイラも空豆に惹かれている、音の同志のように見える。
音が去ってしまうことが判明したけれど、空豆も「空豆ちゃんのスピードだと人生早く終わっちゃいそう」「恋なんかしてる場合じゃないよ」とパタンナーの心(黒羽麻璃央)から言われている。残り数回で空豆がどう変わっていくかも気になる。
脚本:北川悦吏子
演出:金井紘、山内大典、淵上正人
出演:広瀬すず、永瀬廉(King & Prince)、夏木マリ、松本若菜 他
プロデュース:植田博樹、関川友理、橋本芙美、久松大地
主題歌:ヨルシカ『アルジャーノン』
エンディング曲:King & Prince『Life goes on』
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Edit: Yukiko Arai