恋と人生の話をしに、ユーミンに会いに行く 前編

恋と人生の話をしに、ユーミンに会いに行く 前編

ユーミンの愛称で親しまれ、同世代のリスナーだけでなく、リアルタイムで曲を聴いたことのない世代までをも広く魅了する国民的シンガーソングライターの松任谷由実さんがデビュー45周年を記念したベストアルバム 『ユーミンからの、恋のうた。』とともに登場。〝Pure Eyes〟、〝Urban Cowgirl〟、〝Mystic Journey〟と名付けられた3枚組、1枚各15曲、計45曲からなる構成で紡がれたコンセプチュアルな作品だ。「45周年だから45曲ね」そう語るユーミンに、それぞれのアルバムに込めた想いから、公私ともにパートナーである松任谷正隆さんとの出会い、曲作り、日常生活、そして大好きなファッションのことまで、たっぷりインタビューした。本誌では、 歌の世界観をGINZAの視点で撮り下ろしたヴィジュアルとともにお届け。

Key Word  “出会い”

夫と出会ったこと。それこそが私の人生 ―yuming

語らいは、雨降るなか秘密のレストランで

ユーミンに会ったのは、新作発表の1カ月ほど前。毎年行っている苗場でのコンサートを終えたばかりの、雨がパラつく午後だった。
撮影場所に選んでくれたのは「偶然通りかかって見つけたの。いい店でしょ
う?ナポリにいるみたいな気分になれる」と語るお気に入りのレストラン。細く長く降り続ける雨ですら心地よいと思わせる、ユーミンの不思議な魔法にかかった2時間だった。
まずは〝恋〟という甘酸っぱいタイトルを選んだ理由について尋ねてみることにした。

 

恋は刺さってくるもの、そして儚い

「新しいアルバムは、2012年のベストアルバム『日本の恋と、ユーミンと。』の2部完結編として、前回は収めきれなかった曲を候補に編纂していきました。前作と何かしらタイトルにつながりを持たせたかったというのもあるけれど、〝恋〟という表現は、その対象が何でもいいという理由で選んだの。男女に限らず、風景、ペット、それこそ靴にだって恋はできるでしょう?愛だと範囲が広すぎるし、恋愛だと関係項が求められる。包み込むようなものではなくて、広範囲だけど鋭角的に心に刺さってくるものだから、しっくりきたんですよ。私はいつでもいろんなものに恋していますよ」
そうさらりと言ってのけるユーミンの瞳はまっすぐで、物事を貪欲に探求しようとする強い気持ちを秘めている。
「好奇心は子どもの頃から強いですね。商家の生まれというのもあるのかな。いつもいろんな人と接して、いろんなものを見て。年を重ねれば感動は少なくなるものだけど、私はフットワークを軽くする心がけを欠かさないようにしています。旅に出かけるのもいいし、映画を見たり、人との会話で得られるものもある。行動を起こせば、必ず何かに出会えるんです。そうやって気になったものを頭の中にしまっておいて、曲を作るときに引き出しを開けては情報をサンプリングしていくんです」

 

さまざまな出会いが彼女のキャリアを導く

ニューアルバムのオープニングを飾るのはさかのぼること1974年、弱冠20歳で産み落とされた名曲「瞳を閉じて」。ラジオの深夜放送に届いた「校歌を作ってほしい」という手紙に応えたもので、その送り主である奈留島の女子高生との出会いがなければ生まれなかった1曲だ。6曲目に収録された「セシルの週末」では、放蕩娘がひとりの男性と出会い変わっていくみずみずしい心の成長が描かれる。3曲目の「スラバヤ通りの妹へ」は、貧しい離島から出てきて2人の子を育てる15歳の少女との出会いに触発されて生まれた作品だ。彼女の音楽活動を支えるひとつのファクターに、出会いは切っても切り離せないのである。
ではユーミンの人生にとって、一世一代の出会いとは?
「今にして思えば、夫の松任谷正隆との出会いですね。初めて知りあったのは、アルバム『ひこうき雲』(荒井由実としてのファーストアルバム。1973年発売)のレコーディングのとき。新宿西口にあった貸しスタジオで、参加してくれたほかのメンバーは10代から知り合いだったけど、彼だけは初対面だったの。実はね、初対面でお互いあまり良い印象をもっていなかった。でも不思議なもので、音楽っていうのは人間そのものが表れるんです。何万回会話をするよりも、一度一緒にプレイするだけで相性がわかる。初めは全然運命だって気づかなかったけど、そこから2人で歩んで高め合ってきた濃密な時間が、『ああ、これは運命なんだ』って気づかせてくれましたね」
長い時間の中で、関係を解消したいと思ったことはなかったのだろうか?
「お互いいろいろあっても、どんな試練がやってきても、そこに留まろうとするエネルギーが働き離れられませんでしたね。留まる努力のしがいがなければ、人と人って別れてしまうもんじゃないかな」

信頼できるパートナーを持つということは、どんなに時代が変わっても誰しも憧れる生き方のひとつだろう。正隆さんとのエピソードにこちらがうっとりしていると、すかさず毒を吐いて笑いをとる気取らない人柄も魅力だ。
「私ね、夫と出会っていなかったら、詐欺師になっていたと思うんです。だってプレゼン上手だから(笑)。クリエイションに関して彼はいつも妥協がなくて、時に腹が立つこともあるけど、夫婦の芸風みたいなものですね。プライベートで私も彼に厳しくすることもあるし、お互いさまかな」
良い出会いが自分のもとを訪れたことに気づけなければ、濃密な関係性を育んでいくことは難しいだろう。ユーミンのように素敵な出会いをつかむには、どうしたらいいのだろうか。
「3枚組のうちの2枚目のアルバム『Urban Cowgirl』のテーマにもつながりますが、自分らしくいることが大切なんじゃないかな。いつも以上に強気だったり、弱り目に祟り目みたいなときに、悪い男に引っかかるんですよね。無理せず楽せずという姿勢が大切。そうすれば、きっと良い出会いを手に入れることができるはずです」

 

DISC 1 | Pure Eyes

ユーミン 松任谷由実 荒井由実 ユーミンからの、恋のうた。

1  瞳を閉じて 1974
2  ジャコビニ彗星の日 1979
3  スラバヤ通りの妹へ 1981
4  雨の街を 1973
5  緑の町に舞い降りて 1979
6  セシルの週末 1980
7   September Blue Moon 1988
8  まずはどこへ行こう 2009
9   ただわけもなく 2002
10    海に来て 2006
11     Summer Junction 2001
12    きっと言える 1973
13    Midnight Scarecrow 1995
14    Autumn Park 1986
15    雪だより 1980

松任谷由実 まつとうや・ゆみ

1954年生まれ。1972年に「返事はいらない」で荒井由実としてデビュー。結婚後は松任谷由実として活動し、これまで世に送り出したアルバムは全38作品。4月11日に、3枚のアルバムからなるベスト盤『ユーミンからの、恋のうた。』をリリースしたばかり。9月からは全国アリーナツアーが予定されている。

 

Photo: Mai Kise Hair&Make-up: Naoki Toyama Text: Ayana Takeuchi  Special thanks: Quale

GINZA2018年5月号掲載

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