FROM EDITORS 2018年秋冬コレクション vol.1 バレンシアガを楽しむ4つのポイント

FROM EDITORS 2018年秋冬コレクション vol.1 バレンシアガを楽しむ4つのポイント

既成概念やそれまでのセルフイメージを覆すことで、〈バレンシアガ〉は今季も驚きを与えてくれた。幸運にもそのショーを目の当たりにした自称モード界のご意見番プロフェッサー栗山が、本コレクションをよりいっそう楽しむために注目すべき4つのポイントをご紹介する。


1.モードな防寒

まず驚かされたのが、広い会場の中央にそびえたつグラフィティだらけの山。

バレンシアガ 秋冬

足元には人工雪が敷き詰められていて、ああ、これは雪山なんだとわかる。聞けば、今回イメージしたのはスノーボーディングパラダイス。ストリートと関連が深いゆえ、山がグラフィティづくしというわけなのだろう。

ともかく寒い中でのスポーツ。顔周りを覆うバラクラバ(目出し帽)的なフード付きニットがあった。

バレンシアガ 秋冬

寒さをしのいでくれるのはもちろんだが、他ブランドでもこういうスタイルがいくつか見られているし、モードバカなら秋冬必須のアイテムである。目だけしか出さないのはさすがに不審に思われそうだが、これならいけそうかも!

そして防寒スタイルは徐々に加速してゆき、ショー後半には、こんな感じのルックが続々と。

バレンシアガ 秋冬

暖かくしておかなきゃね、って、ここまで重ね着する必要あるだろうか?!そして、よく見ると各アウターがのぞくバランスがばっちりだ。後日サンプルを手にとってみたところ、エッジ部分のみ生地を重ねて縫い付けてある。ウィメンズでは最大7枚だとか。これさえ着れば、バレンシアガ流計算され尽くしたレイヤードスタイルを完成させることが可能なのだ。

いやー、いつもながらパンチがあるわーとモデルたちの後ろ姿を見送っていると、なんだかボリューム満点のシルエットにブランド創設者クリストバル・バレンシアガを彷彿とさせるエレガンスを感じさせられる。

バレンシアガ 秋冬

重ね着でそれを実現させるとは。恐るべし。

 

2.ハイテク技術でヘリテージを継承

長い歴史を持つメゾンにおいては、そのヘリテージを継承するというのも重要な仕事だ。各々アトリエの職人技を駆使してそれを遂行しているわけだが、今回の〈バレンシアガ〉にはクリストバル氏発案の構築的な「バスク」ジャケットが登場していた。

バレンシアガ 秋冬

驚くべきはその製法だ。3-Dボディスキャンニングやデジタルフィッティングで体格を精密に測定して型を作製。それに伝統的な素材を接合している。「進化し続けるハイテク技術を活用しない手はない。その方がより正確だし、効率的でしょ?」とでも言わんとしているかのよう。慣習にとらわれない軽やかな姿勢が垣間見えるようで、爽快な気分にもなる。

 

3.ロゴブームの一歩先へ

アーティスティック・ディレクター、デムナ・ヴァザリアが牽引してきたとも言える昨今のロゴブームだが、今回〈バレンシアガ〉はうって変わって「WFP(The World Food Programme)」の公式ロゴを採用した。

バレンシアガ 秋冬

〈バレンシアガ〉はすでにこの世界的な飢饉と闘う食糧支援機関に25万ドル(約2,800万円)を寄付している。そしてこのロゴやスローガンが用いられたアイテムを購入すると売り上げの一部がさらにWFPに送られる。

おなじみのロゴのパロディがデムナの代名詞の1つであったが、これまでただ面白がってやっていたようなことに、大きな社会的意味を持たせたのだった。ロゴの配し方はこれまでのようにクール。

バレンシアガ 秋冬

ファンがこぞって買い求めそうだが、多くの人たちが身につけることでWFPのPRにもなる。成功したからといって同じ方法をずっと繰り返すのではなく、つねに違う切り口を探っているであろうことがわかる。

 

4.ユーモアも健在

とは言ってもデムナ流のユーモアは依然そこここに散りばめられている。いつものように日常の風景をラグジュアリーの世界へ持ち込んでいて、ボトルのキャップを思わせるイヤリングや自転車のヘルメットの構造を元にしたパンプスなどが登場している。

バレンシアガ 秋冬 バレンシアガ 秋冬

今回初めてメンズと合同ショーだったことも特筆すべき点だが、メンズには、フランスの電話番号が大きく掲げられたシャツがあった。

バレンシアガ 秋冬

実際にかけると自動音声で質問を投げかけられるらしい。2017年春夏の服に、プリントしてあるURLをPCに入力するとフォーチューンクッキーのように格言的なものが画面に表示される、というしかけがあったが、それと同様の発想なのだろう。

あとは、「speed hunters」プリント。

バレンシアガ 秋冬

架空のグループらしいが、皆ライダース着用で若い。アイドルだけどロック演奏します、みたいな感じなんだろうか。

こうした、深い意味はないが、くすっと笑えるようなネタも相変わらず仕込まれている。

ブランドのヘリテージを継承する独自の方法をあみ出し、面白がるだけだったロゴブームを社会的な問題にリンクさせ、いつものようにユーモアたっぷりにラグジュアリーの世界に見慣れた日常を持ち込む。とにかく〈バレンシアガ〉は一つところにとどまっていない。いつもアイデアを練りながら様子を伺っていて、私たちの予想を裏切り驚かせてくれるのだ。今季も実際に着て見て触ってその世界を存分に楽しみたい。

プロフェッサー栗山 Professor Kuriyama

独断と偏見による論を自由気ままに披露している自称モード界のご意見番。その自らの好みを貫き通すファッションは周囲に「怖い」と恐れられがち。

Text&Edit: Itoi Kuriyama

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