FROM EDITORS 2018年秋冬コレクション Vol.9 ジル・サンダーの優しさを作る3つの要素

FROM EDITORS 2018年秋冬コレクション Vol.9 ジル・サンダーの優しさを作る3つの要素

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妻はディオール、ルイヴィトン、夫はシュプリームを経て2018年春夏から手がけているメイヤー夫妻、2回目のコレクション。
個人的に楽しみにしていたショーにも関わらず、夕方の道が混むのは万国共通のようで渋滞にはまってなかなか動かない車、
既にスタート時間が過ぎている。
どうする、コレクション新人!


今回コレクションに参加して初めて分かったこと。
それはショーの間には展示会もあり、それに出席しているとお昼が食べられないということ。
そして常にギリギリで駆け込みそして次の会場へもダッシュしていかねばならないということ。
そう、普段の生活で5分前ゆとり行動を死守して生きている自分にとっては最も苦手なパターン。

ジル・サンダーの会場に向かう途中がそういう意味では最大のピンチでした。
その前のコレクション会場が広い上に人が多く全く前に進めない、
ドライバーさんとやっとの思いで落ち合えても細い道で車が前に進まない、
やっと公道に出ても渋滞で前に進まない。
そう3重の「前に進まない」に阻まれ時計を見ると既に開始時間5分前。

ドライバーさんも急いでくださり、「ここだよ」と言われた場所が普通のアパートの駐車場。
え、絶対違うでしょ。
それらしい人もいないし、いくら初めてだからってここが会場じゃないのは分かる、そんな場所に車は停まったのでした。
この時点で開始時間20分を過ぎています。
呼吸が浅くなり気を失いそうです。

そんな時、少し離れたところに浮かぶ大きな「JIL SANDER」の文字が見えました。…助かった。
深い呼吸活動を再開し、気を取り直しその文字が書かれたバルーンを目指して全力で走りました。
あんなに走ったのは高校のリレーの時以来です。

ジル・サンダー 秋冬

宇宙をイメージした、大きい満月のような球体(隣が普通の大きさのビルなのです)が浮かぶ会場の外。球体の真下にあるのがショー会場で、普段は巨大なショッピングモールの広場に設営された。デザイナーの「空が見えるところでショーをしたい」という意向で決まったスペース。完全に遅刻しているから呑気に写真撮っている場合じゃなかった気もします(今さら!)

会場に入るとそこは静謐で長いランウエイが続く真っ白な世界。
まだ始まってない!よかったー、と思い指定された席に急ぎます。
席に着くと同時にショーが始まりました。
カナダのミュージシャンであり詩人の、レナード・コーエンのどこか懐かしいメロディに、温かく低い歌声が流れる中、
ロングな丈感、白やネイビー、そして時々パステルカラーなルックが次々と軽やかに目の前を通り過ぎて行きます。

メンズも合わせて全51体、
全部を見終わっての感想は、このブランドが当初より持つ引き算によって成立しているミニマルなイメージが根底に流れつつ、
ふんわりしていて優しさを感じる世界でした。
シンプルなだけじゃない、その優しさの理由を少し探ってみたいと思います。

ジル・サンダー 秋冬

その1、カーディガンフィーリング。

ニットの上にチュールがプレスされた生地でできたジャケットのようでジャケットじゃないトップス。
後日、ショールームで触らせてもらったところふわっふわで軽く、そして守られている感がすごい。
今回のコレクションでふたりが見た生地は200種類以上とのこと。

 

ジル・サンダー 秋冬

その2、花柄。

花柄がブランドイメージになかっただけに記憶に残りました。
フォトグラファー、クレイグ・マクディーンが撮影した96年の広告ビジュアルに使われていた壁紙をモチーフに。
おばあちゃんの家を思い出しそうなジャガード生地に、
ラメ糸(ルーレックス)刺繍が施されていてノスタルジーと近未来がミックスされた印象が。

 

ジル・サンダー 秋冬

その3、レイヤード。

シンプル、と思っていたら今回はレイヤードが多用されていました。
色々重ねたり、覆われたりしているけれどやりすぎないこの感じ。
個人的にかわいいな、と思ったのは足元。
レギンスがパンツから少し覗いているのは新しいアイデアではないけれど、”きちんと感“”穏やかさ“が感じられるのが新鮮でした。

ジル・サンダーの今シーズンのテーマは「A HUMAN FUTURE」。

宇宙への旅や遠い惑星、今後来るであろう未来に思いを馳せながら人間性について考えた、
とデザイナーデュオは言っています。
フューチャリスティック、その言葉から安直に頭に浮かぶのはメタリックやシルバーといった冷たい素材のイメージ。
だけどふたりの提案はその逆で普段はあまり使われないフラワーモチーフだったり、
赤という暖色系、また丸みを帯びたフォルムを投入しています。

会場で感じた優しさは、着るひとに向けられた温かい眼差しがそこここに散りばめられていたからかな、と思いました。
ショーの最後に出てきた時に感じた、デザイナーふたりの仲の良さも素敵だなあと。

余談ですが会場へと向かうギリギリ行動の件、
よく考えたらモデルや他のみなさんも一斉に移動する、
ということはモデルが到着しなかったらショーもスタートしない、
つまりはそんなに気が遠くなるまで焦らなくてもいいのか、と気がついたのは最終日。

次回に生かしたいと思います。

※登場するアイテムは参考商品を含みます

Takeshi Kitagawa

コレクション新人。新入社員の時の配属先はPOPEYE編集部。その頃の上司につけられたあだ名は不測の事態にすぐあわあわしていたので「あわわ」。その性格は今も変わっていません。話は飛びますがデュオやコンビで素敵だな、と思うのは普段のやりとりで仲の良さが伝わってくる人たち。ということで最近お笑いコンビで好きなのは、和牛です。テレビ見ながらニヤニヤしています。

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