〈ヴェルサーチ〉のフィナーレを飾ったのは、90年代を席巻したスーパーモデルたちだった。体のラインがあらわになるドレスに身を包み、皆アラフィフだというのにゴージャス。若かりし頃はさぞやもっとパワフルだったんでしょうね…そう考えるといてもたってもいられなくなったGINZAでおなじみの自称モード界のご意見番プロフェッサー栗山。90年代からコレクションを取材し続けている『DAZZLE』編集長高際香里さんに当時の様子を語ってもらった。
-ブランド創設者ジャンニ・ヴェルサーチがこの世を去ってから20年を記念し、2018年春夏コレクションは彼に捧げられました。フィナーレでは、彼が愛した光り輝くメタルメッシュのドレスを着たカーラ・ブルーニ(50)、クラウディア・シファー(47)、ナオミ・キャンベル(47)、シンディ・クロフォード(51)、ヘレナ・クリステンセン(49)が登場。今もかなりの迫力ですね!
すごくすてきですよね。もはや歳は関係ない。若いモデルに混ざっていても、見劣りしません。個々のパーソナリティがすごくあるんだな、と思います。
-全盛期の90年代はどうだったのでしょう。
本当に「スーパー」なモデルたちでした。ストリートでカメラを向けるとちゃんとポーズを作ってくれたりして、コレクションを盛り上げようという気概がありましたね。一歩ショー会場から出るとかわいい10代の少女に戻るナジャ・アウアマンのような子もいたのですが、ナオミはランウェイでもプライベートでも堂々としていました。
〈ヴェルサーチ〉2018年春夏キャンペーンに起用されたナオミ・キャンベル
最後にスーパーモデルと呼ばれたのはジゼル・ブンチェンかもしれませんね。胸もちゃんとある、メリハリのある体型でした。
〈ヴェルサーチ〉2018年春夏キャンペーンに起用されたジゼル・ブンチェン(37)
-ショーの雰囲気はいかがでしたか?
〈ヴェルサーチ〉はファーストルックから華やかで、カメラマンもピーピー口笛を鳴らして盛り上がっていました。今みたいにスマホはありませんし、座席で撮影することはNGだったので観客たちはとにかくメモをとるしかない。皆集中して見ていました。会場の熱気を受けて、モデルも高揚した気分でランウェイを闊歩していたと思います。
-見逃したら後で画像を確認すればいいや、と思ってしまう今とは気合いが違いそうです…今はストリートキャスティングがブームで、素人がランウェイを歩くのが珍しくありません。起用するデザイナー側にも変化があったのでしょうか。
かつては洋服をきれいに見せようという気持ちが強かったのではないでしょうか。だからスーパーモデルのような完璧な体型を求めた。でも、今はそれよりもモデルが持つ雰囲気を重視しているような気がします。90年代はスーパーモデルが着たものが爆発的に売れたりして、流行の発信源となっていました。でもそれが一般人とあまりにもかけ離れている、ということでエディターやバイヤー、さらにはインフルエンサーのスナップが紹介されるようになった。そうした時代の流れもあるかもしれませんね。
-かつては選ばれし者しか参加できなかったコレクションですが、今はプロではなくともランウェイを歩くことができ、インターネットで誰でもショーを同時に見られるのですから、ずいぶん開かれましたよね。
それでいろんな人が興味を持ってくれるのはいいことだと思います。でも、勉強をしなくてもいい、という風潮になってしまうのが心配です。デザイナーたちはブランドのDNAを受け継ぎ、必死で表現している。スーパーモデルたちはちゃんとそれを理解し、ブランドごとに見せ方を考えていました。それに、90年代前半は景気が良かったことも大きいですが、着たい、見たい、という欲があって、パワフルだった。今は便利になった分、皆の思いが希薄になっているかもしれませんね。
-プロ意識がなくなってクリエーション全体のレベルが下がってしまう結果にならないよう、スーパーモデルの姿勢を今一度見直す必要がありそうですね…!着たい、見たい欲が深いのが私の唯一の取り柄なので、その胸の火を絶やさずにこれからもコレクションに通い続けたいと思います!