ショーの最中にロックバンドのライブも楽しめる!  パリコレ生演奏増殖の謎 2018年春夏コレクションレポート Paris04

ショーの最中にロックバンドのライブも楽しめる! パリコレ生演奏増殖の謎 2018年春夏コレクションレポート Paris04

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事前にいくつもの曲をつなぎ合わせた音源を流すショーが多いなか、2018年春夏、〈イーチ × アザー〉、〈アン ドゥムルメステール〉、〈ラコステ〉など、パリでのショーはなんだか生演奏が目立った。一体なぜなのか?!四六時中ファッションのことしか考えていないGINZAでおなじみの自称モード界のご意見番プロフェッサー栗山には手に余る難題。音楽ライター/DJの荏開津広さんに解説してもらった。

 

〈イーチ × アザー〉

歌手・女優のマリアンヌ・フェイスフルの孫が率いるロンドンベースの新人ロックバンド「KHARTOUM」が演奏。

〈イーチ × アザー〉はモダン(近代)な美しさに軸足を置くブランドではないでしょうか。ブランドと関係の深いアーティスト、ロバート・モンゴメリーは1968年、消費社会の興隆に対して大学生や労働者が抗議行動を起こしたパリ・五月革命の思想に共感しているアーティスト。ショーでは詩の朗読もあり、そのころを彷彿とさせるムードが感じられます。

 

〈アン ドゥムルメステール〉

ベルギー出身のアーティスト「ウォーハウス」によるライブパフォーマンスが行なわれた。

今季はロックの「良心」、パティ・スミスがインスピレーション源だそうですが、ブランドの世界観もまさにそう。ショー全体を通してそれを表現しています。ロックバンドは「みんなで一緒にやるんだ」という共同作業。60年代の産物で、リベラルなユートピア思想と結びついている。当時のアメリカやヨーロッパの美大生の理想なんです。ですから、〈イーチ × アザー〉と〈アン ドゥムルメステール〉はそんなロックを通してのモダンを懐古していると言えるでしょう。

モダニズムの根底にあるのは、みんなで少しずつ世の中を良くしていけるんだという考え方。その後に「みんな」を取りまとめるような確たる根拠は何もないという、各々の趣味嗜好に拡散していくポストモダンという考え方が広まります。でも、モダニズムの精神というのはヨーロッパでやっぱり生きているんですよね。

 

〈ラコステ〉

多くのファッションショーを手がけるミシェル・ゴベールとコラボ。フランスの作曲家/ピアニストのシャソルらが演奏した。

〈ラコステ〉は会場が「セット」然としています。バンドが真ん中に配置されて、まるで「今ショーをやっていますよ、現実ではないんですよ」と言っているかのよう。そして60〜70年代のリベラルな美大生が好みそうなわりとソフトな音楽を選んでいます。

もしかすると、ミシェル・ゴベールは「あえて」このようなスタイルをとったのでは。ここまでくると、「メタモダン」な美しさと呼ぶべきかもしれません。モダニズムがなくなってしまったように、ポスト・モダニズムも古くなって、なくなってしまった。ポスト・ポストモダンですよね。

モード界ではロシアの不良のスタイルや、日常の何でもないアイテムを取り入れる〈ヴェトモン〉のような超ポストモダン美学が注目を浴びているようですね。「メタモダニズム 」のような傾向は、そのバックラッシュなのかもしれません。ファッション業界より遅い音楽業界でも、〈ヴェトモン〉と同様の姿勢の超個人主義的ともいえる、超ポストモダンなラップはもういい、というムードが戻ってくると思います。僕はラップを推しているんですけどね…!

荏開津広 Hiroshi Egaitsu

執筆/DJ/京都精華大学、立教大学非常勤講師。ポンピドゥー・センター発の映像祭オールピスト京都プログラム・ディレクター。共訳書に『サウンド・アート』(フィルムアート社、2010年)。カルチャーサイト『リアルサウンド』で日本語のラップについて連載中。

プロフェッサー栗山 Professor Kuriyama

GINZAで独断と偏見による論を自由気ままに披露している自称モード界のご意見番。その自らの好みを貫き通すファッションは周囲に「怖い」と恐れられがちで、「怖い女」の異名もとる。

Text&Edit: Itoi Kuriyama

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