12 Dec 2020
輝くシスターフッドを描いた、石井桃子『幻の朱い実』と真珠に思いを馳せて。松田青子が選書、物語とジュエリーの関係 vol.3

美しい輝きに想いが込められたジュエリー。そこから着想を得て、 女性の生き方について考える本を、作家の松田青子が選び、真意を綴る。#いつもそばに、物語とジュエリーを
清らかに輝くシスターフッド
はやくに亡くなった親友とのかけがえのない友情をこの世に残すため、作者が70代の終わりにさしかかってから書きはじめたこの自伝的小説は、真珠のように純粋で、情熱的。
社会通念に抗い、支え合って生きていく明子と蕗子の日常は、信頼できる友人がいることへの喜びと楽しさに満ちている。
真珠をつけていると彼女たちとともに在るような気持ちになる。
『幻の朱い実』
石井桃子
児童文学の大家が8年をかけて描いた自伝的長編小説。昭和初期、明子は赤い烏瓜のなる家で先輩の蕗子と再会。自由な心を持つ彼女に惹かれ交流を始める。ひたむきに働いて、肺病を患い文筆で身を立てようとする蕗子を支えるが、自分の結婚を機に強い友愛の結びつきは変容していく。(岩波現代文庫/上巻 ¥1,400、下巻 ¥1,220)
Pearl
ドレス ¥68,000(オーラリー)
松田青子 まつだ・あおこ
作家。1979年兵庫県生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業。2013年『スタッキング可能』でデビュー。著書に『持続可能な魂の利用』(中央公論新社)など。訳書も多数。
Photo: Masahiro Sambe Styling: Naomi Shimizu Hair&Make-up: Yoshikazu Miyamoto (BE NATURAL) Model: Yumi Matsumoto Text&Edit: Akane Watanuki Cooperation: diligence parlour
GINZA2020年11月号掲載