5月20日はジーンズの誕生日 – スタイリスト谷崎彩の超私的ファッション愛 #09

5月20日はジーンズの誕生日 – スタイリスト谷崎彩の超私的ファッション愛 #09

スタイリスト谷崎彩さんが愛するファッションの話。


5月20日がジーンズのお誕生日ってご存知でしたか?10代の頃からジーンズのお世話になっているのに知らなかった!!
そしてジーンズといえばリーバイス®な私。この機会にちゃんとお話しを伺ってみることにしました。

ジーンズの歴史、それはリーバイス®の歴史

時代は遡り1847年。ババリア地方出身のドイツ系ユダヤ人、後にリーバイス®の創業者となるリップマン・シュトラウス青年(当時18歳)は母親と二人の姉と共にアメリカへ渡り、先にアメリカで織物類の卸売業を営んでいた2人の異母兄の仕事を手伝い始めました。1853年、念願のアメリカ市民と認められた時にリーバイ・ストラウスと改名。

リーバイ・ストラウス
リーバイ・ストラウス(1829-1902)

24歳になった彼はゴールドラッシュにわくサンフランシスコで金鉱労働者にむけて、衣料品や雑貨を販売する商店を開業します。(リーバイ・ストラウス&カンパニーの前身)そこで労働者たちからのリクエストをもとに、キャンバス地を使った丈夫なワークパンツを商品化。さらに素材をデニムに変更し、蛇よけのためにインディゴブルーで染色した私たちが良く知るジーンズの原型が出来上がってきます。

リーバイス

丁度そんな時、リーバイ・ストラウス&カンパニーが生地を卸していた仕立屋のヤコブ・デイビスから「お客さんたちからもっと丈夫なパンツを作って欲しいという声があったので、ポケットの補強にリベットを使用する方法を思いついたのだけど、自分には資金がないので、特許を取る手助けをしてもらえないか?」と連絡がきます。
当時、採掘者たちは重い道具や掘り出した金をポケットに入れて作業していたので破れない丈夫な物が必要だったのです。
さすがに金をポケットに入れたまま持ち帰られては困るので、採掘場の出口で見張りの監督から作業着は脱いで置いて帰るようにと指示されていたというエピソードもあるんだとか。今でも封鎖された採掘場の跡地から、そのまま取り残されたジーンズが発見されると、それはポケットに残っている金よりも高値がつくんだそうですよ~。

リーバイス

つい、話が逸れてしまいました。特許取得の話に戻ります。ヤコブ・デイビスから話しを持ちかけられたのと同じ頃、リーバイス®社でもパンツの耐久性を高めるための工夫を重ねていたところだったので、それは良いアイディアだと双方が合意、協力して1873年5月20日にリベットによる衣服補強方法の特許をアメリカ政府から取得しました。

リーバイスの特許
1873年5月20日に取得された「衣料品のポケットの補強に金属リベットを使用する方法」の特許取得

そう、この日こそが現在認定されているジーンズの誕生日!

実はバックパッチにこの日は記載されているんですよ。英語を理解できない人々でも一目でリーバイス®社の製品だとわかるように考案したツーホース(二頭の馬で引っ張っても破れない丈夫なパンツ)の下にPATENTED MAY 20 1873(1873年5月20日 特許取得済み)とあります。うわー、今まで全く気づいてなかった!!

バックパッチ
バックパッチに記載されてる特許取得「MAY201873」

アメリカ労働者の心と精神を体現する
リーバイス®の社訓

ところでリーバイス®の社訓には“ Giving back never goes out of Style ”という言葉があります。リーバイス青年は、利益を得たら社会に還元しようという信念から、最初に自分に出た給料を地元の孤児院に寄付したんだそうです。その精神は現在でも続いていて、リーバイス®社では社会奉仕活動なども義務付けられているんだとか。その他の取り組みとしても1950年代から「人種差別を続ける町には新工場を設立しない」というメッセージを発信したり、1992年というまだLGBT差別についてアメリカ国内でも意識が低かった時期に、早くから「法的に認められなくても、生計を共にするパートナーであれば、全面的に医療給付を行う」という社内制度も設けました。


501®︎
501®が誕生した1890年当時、実際のデニム。

ドイツ出身のユダヤ人家族としてアメリカへ渡ったリーバイ・ストラウスさんには、移民であるがためにきっと様々な困難や問題があったのでしょう。だからこそ現在に至るまでリーバイス®社は社会的マイノリティーな人々の傍に寄り添うことを社訓にしているのです。

そして今回もう一つ教えてもらったのが1991年に定められた「世界中どこであっても、私たちの商品の製造に携わる人は、安全で健康な労働環境のもとで、人としての尊厳を侵されることなく、敬意を持って処遇されるべきである」というリーバイス社独自の「グローバル・ソーシング&オペレーション・ガイドライン」。この基準が厳しいので世界中でリーバイス®製品を作れる工場の数はそれほど多くないのです。

でも考えてみて!
今となってはファッションアイテムとして身に着けることも多いジーンズですが、本来は労働者たちが快適に作業するためのもの。そしてそれは常に彼らのニーズへ耳を傾け、機能をアップデートしていったリーバイス®社の歴史。だからこそ、厳格とも思える働く人々への配慮も頷けますよね。

「人生の殆どを一緒に過ごした大好きなリーバイス®ジーンズお誕生日おめでとう!!」という気持ちで始めた今回ですが、真面目なところに行き着いてしまいました。ですが、形から始まって物事の深層にたどり着くのはファッションを愛する者としてはこれ神髄。惜しむらくは一人暮らしを始めたばかりの10代後半に、偶然迷い込んだある街の古着屋の元締めみたいなディーラーさんの倉庫で、何の知識もないまま欲しいジーンズを山の中から引っ張りだして値段を尋ねたら「ジブン、なんぼやったら払えるん?」「今3000円ならある!」と無邪気に答え、手に入れたリーバイス®のこと。当時はヴィンテージブームが始まっていて古着の値段が高騰しつつある時代。調べるとそれはビッグE・紙パッチの通称66。それを毎日さんざん穿き倒してボロボロに破れたから、最後は手を合わせて捨ててしまいました。ちゃんとリペアして大切にすれば良かった~。リーバイス®社のもう一つの社訓“Quality never goes out of style”を見るにつけそのことは今でも後悔しています。これからは今、履いているリーバイス®はせっかくだから自分より長生きしてもらうように大事にしようと思います。

谷崎彩 Aya Tanizaki

スタイリスト。1998年から代官山の隅っこで小さな輸入洋品店を開業。2000年〜2004年くらいまでフランスのインディペンデントマガジン「Purple fashion 」のスタイリスト兼ファッションエディターを務める。

Edit: Karin Ohira

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