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Lutz Huelleとの親密な対話 – スタイリスト谷崎彩の超私的ファッション愛 #12

Lutz Huelleとの親密な対話 – スタイリスト谷崎彩の超私的ファッション愛 #12

スタイリスト谷崎彩さんが愛するファッションの話。


個人的なことで恐縮ですが、今までの人生をファッション大好き!でやってきて、ルッツ(Lutz Huelle)の服が一番、私にとって長い付き合いなんだなぁとクローゼットの整理をしていて気づきました。

ランウェイ写真によってはわりと地味に見えちゃうこともあるけど、ふとしたところにエッジが効いてるモードなデザイン。デイリーユースであわせやすいし、生地も縫製もこなれていて飽きずに着られる。かつ数年経って急に古いデザインに感じることもないし…。なんだか、私の人生にイイ感じの距離感で寄り添ってくれている服。それなのに「えー!まだルッツってやってるんだ!」なんてコメントを頂くこともあり(泣)…。

2000年、マルタン・マルジェラから独立した彼のデビューコレクションはその時の一番の話題で、有名ショップのバイヤーたちが争奪戦のように買い付け、そのブームが過ぎると、ちょっと忘れ去られて、またここ数年、人気がでて…。とまるで人の運命の周期みたいに上がり下がりはありますが、でも彼は変わらず淡々と自分の信念に基づいた服作りを続けているんです。そして、私はずーっと彼の服を買い続けています。

今回は、そのLutz Huelleとの対話の記録です(2019年10月パリのルッツのアトリエにて)。デザイナーさんたち、ファッション好きな人、これから目指す人、みなさんに願いをこめて。

 

Lutz Huelle×Aya Tanizaki
90年代から今までを振り返って

谷崎彩(以下A): 90年代はマルタン・マルジェラで働いてたんだよね?私はその頃、食費を削ってもマルジェラ買う!って生活してたなー。

ルッツ(以下L): インターン時代も含めると足掛け6年いたよ。1992年、まだ学生の時にマルタンのショールームを手伝って、次の年にペンキを塗ったジーンズの製作のアシスタントをした。うちに働きにおいでと誘ってもらったんだけど、学校は卒業しなきゃと思って。ずっとアトリエにインターンとして通って、1995年にセント・マーチンズを卒業してから正式に入社したんだ。最初はマルタンのジュニアアシスタントから始めて、その後はアーティザナルとニットのコレクションを任されるようになった。

マルタンのようにすごい人のそばで働いてとても影響をうけたよ。彼の人や物に対する視点、それを服のデザインに落とし込んでいくプロセス。一緒に働かせてもらっているうちに、自分のデザイナーとしての指針を掴んだような気がする。

A: それで2000年に自分のブランドを始めたのよね?もちろん強烈に覚えてるけど!私はもうお店を始めていたんだけど、あなたのコレクションはお店同士の争奪戦で、当時の私は力がなかったから買い付けできなかったんだよねー。その後、エレン(当時のPurple Fashion 編集長)の力を借りて(笑)、2004年あたりから無事に仕入れできるようになりました(笑)。

L: でも今ではアヤが一番長く続けてくれているクライアント(笑)。

A: ね(笑)。ホットで話題がある時期が終わると、マスコミに報道されなくなって世間からは忘れられていくのよね。えっルッツまだやってんだ!って。いやいや、彼はずっと良い服を作り続けてますよ!話題に上らなくなったからといって人生が終わってるわけじゃないですよって、世間ってこういう感覚か~と心の中で歯がゆい思いしてた。

L: ちょっと大変だなって思っていた頃、皆がSNSをやり始めたから、最新コレクションを上げるときに昔の自分のコレクションを少しずつポストし始めたら、若い世代のスタイリストたちから『服を貸して欲しい』と連絡が来るようになって。そしたらコレクションの方もまた徐々に、あれ?お客さんが増えてきてる?ってなって…。

A/W 2016年 雑誌POP(英)Issue35 約60pに及ぶヴォルフガング・ティルマンスによるLUTZ HUELLEのファッションストーリー

A: 最近はショー会場も人がいっぱいだもんね。でも私が好きなのはルッツのショー会場には、なんというか昔ながらのファッションショーの良い雰囲気が流れてるとこ。いわゆるセレブも来てないからパパラッチもいないし。集まった人は純粋にファッションショーとその高揚感を楽しんでる。本番前に舞台裏に遊びにいっても、誰もピリピリしてないし、モデルはのんびりメイクしてるし、デザイナーはリラックスしきってブラブラしてるしね(笑)。ご両親をいつも招待してるよね?そう、写真家のヴォルフガング・ティルマンスもよく見に来てくれてるよね。

L: 両親もヴォルフガングも、ほぼ必ず来てくれるよ。彼とは14、5歳の時からの友人で、あと*アレックスとも学生時代からずーっと親友。アレックスは度々モデルになってくれているし、ヴォルフガングもデビューコレクションやら、折々にコレクションの写真を撮影してくれている。この二人との出会いは僕にとって運命で、人生において最も重要なことだと思っている。
*アレックス(アーティストのAlexandra Bircken)

ティーンエージャーの頃の3人とヴォルフガング・ティルマンス撮影のLUTZの1stコレクション

A/W 2019年 雑誌POP(英) Issue 41(ヴォルフガング・ティルマンスによる限定のカバー)約70pに及ぶティルマンスによるLUTZHULLEのコレクションを中心としたティーンネージャーの頃からの3人のフォトストーリー。“ AS IT WAS WHEN IT WAS “

 

インディペンデントであり続けること

A: ある時、あなたはSNSでこういうことを書いてたよね?それがとても心に残っているんだけど。

『もし、主要なメディアが、駆け出しでインディペンデントなハウスブランドにもっと寄り添う姿勢をとっていれば、多くのブランドが存在し続けることが可能だったはずだ。短絡的かも知れないけど、そこは考えてみる価値はあると思う。

僕はまだこういった媒体に取り上げてもらうことがなかった頃から今まで一貫して、僕のデザインした服に価値を見出し、ブランドを大切にしてくれているお客様にしか、僕の作ったものを売らないことにしている。

それは、僕の服を愛してくれる彼らのために服を作り続け、それと同時に、彼らにとって素晴らしいデザイナーであるよう努力する以外、何もできることがなかった下積み時代があったからこそたどり着いた答えで、結果としてブランドが長続きするための秘訣なんだと思ってる』

それで、インディペンデントであり続けることについてはどう考えてるの?

L: 僕がブランドをスタートした時は、インディペンデントなんて言葉なんかでてこないくらい、それは普通のことだったんだ。大きなファッショングループはまだそんなに存在してなかったから今はインディペンデントでいることがますます複雑になってきているよね。でもデザイナーはインディペンデントであるか否かに関わらず、クリエイティブにおいてデザイナーとしての本能に従わなければならないと思ってるよ。それがデザイナーにとっての真実だから。

S/S 2020 collection

A: 新しいコレクションの話を聞かせてくれる?私は大きなスリーブのシャツが大好きなんだけど。

L: 最近はストリート系が全盛で、その流れは僕も嫌いじゃないけど、でも、キレイな服を作りたいという欲求もあって。オートクチュール全盛の頃の服を見つめ直して、それをどうやってデイリーに着やすい服に落とし込もうかと、今はそちらへ興味が向かってる。あの、ランタンスリーブはとても苦労して、何度も試作を繰り返し、縫製もフランスの腕の良い職人がいる工房へ出しているんだ。

A: でも、ちょっと頑張ったら買える値段!私はジーンズとあのシャツあわせたいな。

L: そこがとても大事。プライスにもスタイリングにもストレスがないこと。自由に着てくれていいんだ。毎日着てくれると、なお嬉しいな。そう思って作ってるから。デザイナーは着ている人の気分が良くなるようなことをする責任を負っているとも言える。ファッションってとてもパーソナルなことだし、着ている服って、社会とのコミュニケーションにおいてとても重要な要素だと考えているよ。だから街で僕がデザインした服を着てくれている人を見つけると、あっ仲間がいる!と、とても愛しい気持ちになるんだ。ありがとう!!ってね。

LUTZ HUELLE

Instagram: @lutz_huelle_official
お問い合わせ先 (株)アントラクト 03-5774-0733

谷崎彩 Aya Tanizaki

スタイリスト。1998年から代官山の隅っこで小さな輸入洋品店を開業。2000年〜2004年くらいまでフランスのインディペンデントマガジン「Purple fashion 」のスタイリスト兼ファッションエディターを務める。

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